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ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
第五章 異世界救済生活・探求(後編1)
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第百七十九話 剣の邂逅

「気持ちはわかるつもりだが、俊也君。彼に対してそれは失礼だったな」

「イットウサイ先生……申し訳ありません、反省しています」

「うむ。まあ過ぎたことはいい。もう一度、修羅君と立ち合ってみなさい」

「はい!」


 修羅を気遣っての手加減なのだが、それは、彼にとって極めて無用な気遣いであった。親友である修羅のことを知り抜いているだけに、自分が取った行動を、俊也は心底悔いている。その様子を察し、取り成しも含めて俊也を咎めた剣師イットウサイに、俊也は仏を見たような救われた感じがした。


 すべてが分かっている責任者が間に入ってくれたことにより、ユリを含め混乱していた門人たちも、事の次第の整理がついたようである。錬成場内はまた静まり返り、俊也と修羅はその静寂の中で防具をつけ直した後、再び試合しようと互いに礼を交わしていた。


 正眼に再び構えて対峙し、修羅はすぐに悟っている。


(分かる……これが今の俊也か! どれだけの鍛錬を積んできたんだ!)


 先程と発する剣圧がまるで違う。別人というより、燃え広がる大火に一人で挑むような感覚を、修羅は眼の前にいる俊也に対しイメージした。どうあっても巨大な炎に飲み込まれる自分の姿しか浮かばない。


「面!」


 一瞬で決着がついた。一瞬以外に形容することができない。俊也の炎の剣圧に飲まれた修羅は、手も足も出ず何もできないまま、渾身の面を打たれて弾き飛ばされた。あるいは、修羅だから弾き飛ばされた程度で済んでいるのかもしれない。それだけ数々の危地、死線をくぐり抜けて来た俊也の剣は凄まじく、イットウサイによる稽古をこなした頃より、さらに無駄のない動きと気の読み方を身につけていた。


「それまで!」


 修羅が面を打たれた瞬間、イットウサイは即座に手を上げ決着を告げている。ユリと門人たちは、あまりのことに唖然としているが、一人、修羅の身を案じ、すぐに駆け寄ってきたのはジェシカであった。弾き飛ばされ身体を打った修羅の防具を外すと、聖なる魔力を手に集中させ、キュアヒールの魔法で彼の治療を始めている。


「修羅、まずここまで追いついてくれ。そこからだ」

「わかった……必ずすぐ追いついてみせる」


 優しくも強い回復の光を受け、修羅は転がっていた自分の体勢を整えることができた。そして、真っ直ぐ信じ抜く目で自分を見る俊也に、力強く決意を返している。


(俊也君はここまでの段階まで来たか。修羅君も、問題なく追いつくはずだ)


 タナストラスの救い主になるであろう二人の剣における邂逅であった。イットウサイは師として、できる限りその才を伸ばすことを、一人、胸に誓っている。

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