第百七十一話 カラム最強の三人
「久しぶりに俊也に会ったと思ったら、友達を連れて帰ったって言うんだからな~。魂消たぜ。修羅って言ったな、よろしく頼む」
「はい。よろしくお願いします」
俊也と修羅が誰と話しているかといえば、これもまた久しぶりのカラムの傭兵長テッサイである。ディーネの店で修羅の刀を手に入れた後、彼ら二人はギルドへ向かい、そこの親父からラダ討伐の依頼を即日で受けた。俊也を久しぶりに見たギルドの親父の喜びようは、飛び上がらんばかりのものだった。
テッサイはその時ギルドで食事を軽く取っていたのだが、偶然、久しぶりに出会えた俊也を見て、彼も驚きながら喜び、その場の勢いで、俊也と修羅が受けようとしていたラダ討伐に、一枚噛むことにしたようだ。ちなみに報酬は一人あたり1500ソルである。
「俊也はもう手練だ。ラダの十や二十、どうってことないだろうが、お前さんはモンスターを斬るの自体が初めてらしいな? 俺もカラムでは一端の傭兵長だ。修羅、お前さんも只者じゃないのは見ればわかるが、最初は戸惑うだろう。俺と組んで動いたらいい」
「ありがとうございます。大変心強いです」
「はははっ! 俺が最初に仕事を受けた時も、テッサイさんが一緒に組んでくれましたよね? 思い出しますよ」
「そうだな。そんなに前の話じゃねえが、俊也はえらい強くなったよなあ」
修羅は「強くなった」と言ったテッサイの言葉に、敏感に反応している。俊也は日本で、十年に一人の剣の逸材と称されていたが、実は修羅も同じ評価を周囲から受けている。不世出とも言えるくらいの剣才の青少年が、同じ年にライバルとして親友として二人現れたと、剣道界ではちょっとした話題になっていたほどだ。それだけに、修羅は俊也とタナストラスで再会したとき、俊也がこの異世界で到達していった剣における悟りの段階を即座に感じ、驚愕すると共に大きく水を開けられた気を持ち、焦りも覚えた。
やや深まってきた秋風を身体に受けながら三人が歩いていると、どうやら目的地の平原に到着したようだ。群れの数が多いとはいえラダである。今の俊也はもちろん、テッサイにとっても手抜かりがなければ造作もない相手だが、修羅にとっては真剣を用いた初めての実戦だ。三つ目の妖犬ラダとも初めて対峙するわけで、彼の緊張は隠せない。
「まあ構えすぎるな。なーに、お前さんならすぐ勘所を掴むさ。じゃあ行くぞ!」
「はい!」
「よし! 久しぶりの仕事だ!」
カラムにおいて最強の三人は、それぞれの得物をスラリと抜くと、二十以上はいると見られるラダの群れへ一直線に駆け入った!