第百六十八話 懐かしい我が家
懐かしい教会内のステンドグラスと十字架が載る台座を見て、サキとセイラのみならず、俊也も我が家に帰ってきた大きな安心感を覚え、表情もホッとしたように緩んでいる。
今の時刻はまだ朝である。教会内をこまめに掃除している彼らの母マリアの姿がそこにあり、サキとセイラの姿を見つけると、
「まあ! 帰ってきたのね!? 無事で良かった……」
突然の娘たちの帰宅にとてもびっくりしていたが、一目散に駆け寄り、最愛の娘たちを優しく抱擁した。
(一回戻ってきて正解だったな)
涙を浮かべながらの母娘の再会を見て、俊也は心底からこれで良かったと感じ、自身がずっと感じていた彼女たちに対する責任も、幾ばくか降ろせたように思えている。
新しい仲間である、修羅とジェシカを簡単にマリアに紹介した後、俊也たちはこれもまた懐かしい教会の住居部分に入っていった。サキとセイラにとっては生家なので言うまでもないが、俊也においても第二の故郷の我が家である。勝手知ったる住居部分に入っただけで、今までの旅の疲れがどっと出ていくように感じ、とてもくつろげている。
「いい家だね。静かだし落ち着く」
「そうだろ? それに、ソウジさんとマリアさんはとてもいい人なんだ。色々話してみるといいよ」
修羅は、このカラムの教会がこの上なく気に入ったようだ。彼は俊也と物事を捉える感覚が近く、好みも似たところがあるのかもしれない。マリアにしても、もう一人の救世主である修羅のことをとても気に入ったようだ。俊也と同じく誠実さが窺えるからだろう。ただ、修羅からは、俊也を一回り大人にしたような冷静さが印象としてある。
「救世主様がもう一人いらっしゃるとは思わなかったわ。しかも、俊也さんの友達だなんて……不思議な御縁よね~」
「はい。ジェシカさんがタナストラスに連れてきてくれましたが、本当に俊也がこちらにいたので仰天しました。全く不思議な縁です」
冷静に経緯を考えながら、修羅が話をしていることがなんだか可笑しく、周りの皆に笑いが起こった。普段無表情なジェシカまで笑っている。可笑しいことを言ったつもりがない本人だけが、怪訝な顔をしていた。
「ああ可笑しい! 修羅さんと言ったわね。あなたも可愛い救世主様ね。この教会を自分の家と思ってゆっくりしてね」
「ありがとうございます。僕もこの教会が好きです。そう言って頂いてとても嬉しいです」
素直な修羅の返事である。そのように場が良く和んでいた中、これもまた懐かしいソウジが仕事から丁度帰ってきた。