第百五十九話 正しいことに
銀髪が特徴的で、ジェシカには変わらず無機的な美しさがある。彼女は整った顔の表情を変えるわけでもなく、
「どうぞ、これらをお納め下さい」
淡々と宝を載せた台を、俊也の前に差し出している。彼はレオン法王とジェシカに一礼し、5000ソルと聖騎士の証である神竜ネフィラスの装飾が施されたブレスレットを受け取った。
「新たな聖騎士矢崎俊也の誕生じゃ!」
ブレスレットを俊也が受け取るとすぐに、レオン法王は彼が武勇と人格に優れた称号を得たことを周囲に宣言した。法王の側近と近衛兵、それに神竜の巫女ジェシカは一同に跪き、聖騎士となった俊也に最敬礼を示している。そして、
「皆のもの直れ! 新たなる聖騎士に拍手を!」
法王の指示と音頭により跪いていた者たちは立ち上がり、俊也に向けて惜しみない拍手を贈った。サキとセイラも想い人が出世したようでとても嬉しい気持ちであり、笑顔で拍手を贈っている。剣道の様々な大会で称賛されたことはある俊也だが、ここまでの達成感と共に褒め称えられたことはなく、非常な嬉しさと少しの面映さが彼の表情にあった。
「俊也さん。この聖騎士の称号と君の力は、正しいことに使うんじゃよ」
俊也にゆっくりと近づいて、彼のブレスレットを付けた右手をしっかりと両手で握り、レオン法王が優しく柔らかく伝えた言葉に、俊也はハッとした。彼の亡くなった祖父と法王が完全に重なって見えたのだ。
『俊ちゃん。この竹刀は正しいことに使うんだよ』
俊也は、幼い頃の祖父との思い出が記憶の内から再び呼び起こされたような感覚を覚え、
「はい。必ずそうします」
そして、レオン法王と固い約束を交わした。
依頼の報告を済ませ事を成し遂げた後だが、俊也たちはまだ一息ついていない。彼らは今、表現によってはセイクリッドランド大聖堂より神聖な場所にいる。俊也たち三人が今いる場所は、大聖堂の東に建てられたネフィラス神殿である。
「この場所は……何と言えばいいかわからないけど、とてつもなく大きな力を感じます。それも、俺たちをずっと守ってくれているような……」
「私にも同じ力が感じられますね。暖かく優しい力……」
「私も……。何なんだろう……この優しさは」
ジェシカの案内で、大理石で作られた神殿の祭壇がある中心部に俊也たちは来ているのだが、三人には、はっきりとした感覚で大きく優しい守護の力がここで感じられているようだ。
その様子を見ていたジェシカは、滅多に変えない表情を驚きのものに変え、俊也たちにこう語り始めた。