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ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
第五章 異世界救済生活・探求(後編1)
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第百五十一話 それは直せるよ

 食材の滋味が生かされたシチューの匂いが火にかけた鍋から漂ってきている。サキとセイラのことを考え込んでいた俊也の心をリラックスさせるのに、その旨味をよく含んだ匂いは充分な効き目があるものであった。


「そんなに難しく考えることでもないよ。腹が減ってるだろう。まず、これを食べて温まりなさい」

「はい。頂きます」


 瘴気濃き迷路の探索中は軽くでも食べる余裕などなく、俊也の腹は空ききっている。オオクマデの肉を煮込んでミハエルが作ってくれたシチューの滋養は素晴らしく、俊也がよく滋味を味わい肉が彼の喉を通ると、体のすみずみまでエネルギーが行き渡り、じんわりと体温が上がり、心身の疲労が取れていくのを感じられた。


「とても美味しいです。元気が出ます」

「なによりだ。元気がないと始まらないからな。それと、サキさんとセイラさんのことは、さっき言ったように俊也君が気にしすぎることはないよ。なぜ私がこう言っているか分からないかもしれないが、旅を進める内に悟れてくるさ」

「分かりました。俺もここまでの旅で彼女たちのことをよく考えていたんですが、ミハエルさんと話せて楽になりました。実を言うと、誰かに相談したかったんです」


 真面目に自分と向き合いすぎている俊也に、ミハエルは可愛らしさを感じると共に、可哀想だとも思っている。その感情が400年の長い年月を生きてきた彼の顔に、いくらかの苦笑の表情として現れていた。


「生きているとな、答えがないことに妥協するのも必要になってくるよ。ちょっと話を変えよう。リズを2度も助けてくれて、俊也君にはとても大きな借りができた。聖浄のトーチをあげたくらいじゃ釣り合わない。私ができることで何かあれば言って欲しい」

「いえいえ、さっきも言いましたが助かったのはこっちなんですが……あっ! そうだ!」


 ミハエルの絶大な魔力と、俊也が所持している、ある非常に重要なアイテムのことが、線でつながったように閃いた。魔法のリュックから急ぐように彼が取り出した物は、カラムから出発する時にソウジから託された小さな転移の魔法陣である。


「ミハエルさん、これは転移の魔法陣という物なのですが……」

「これは久しぶりに驚いたよ。私がかなり昔に作ったものだ。どこでこれを?」

「サキとセイラさんのお父さんから貰ったものです。カラムの町から持ってきました」

「なるほどなあ。いや、面白い縁が君とはあったんだな。それで、魔力を失っているこの魔法陣を直して欲しいわけだね? できるよ」


 頼もしく、小さな転移の魔法陣の修理をミハエルは快諾してくれた。俊也はそれを聞き、やや鬱屈としていた顔を晴れやかな笑顔に変えることができている。

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