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ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
第五章 異世界救済生活・探求(後編1)
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第百四十九話 意外な才能

 身体の治療が加羅藤姉妹のキュアヒールによりすっかり済んだ俊也は、瘴気の源泉に来た本題に移ろうとしている。まず準備として転写の紙5枚を魔法のリュックから取り出し、ひとまずサキにそれを持ってもらい、どこから写真を撮るかを考えていた。


「まず全体像を撮りたいな。瘴気の源泉の柱と、瘴気がないこの広い空間が分かるようにしたい」

「それだとかなり黒い柱から引いて撮らないといけませんね。うまく撮って下さい」

「うーん、レンズがないから難しそうだな。まあやってみます」


 そうなのだ。セイラの言う通り全体像は引いて撮ることになるが、タナストラスにはカメラの概念がないのか、写真を撮りやすくするためのレンズが転写の紙に付いていない。レオン法王が俊也たちの集合写真を撮った時ある程度引けば、転写の紙に写る前方の景色などが広くなっていたので、撮り方自体は大まかだが分かっている。


「これはある程度勘になるなあ」

「しっかり俊也さん! 頑張って下さい!」

「いや、頑張れと言われても……ここら辺りかなあ」


 サキが応援してくれているが、多少とんちんかんなやり取りである。それでも俊也は瘴気の柱からおおよその見当をつけて引き、「ええいやってみるか!」と、転写の紙の右端にある赤い印を引きちぎり写真を撮ってみた。運が良いのか俊也のセンスが良いのか、転写の紙にはくっきりと、瘴気の源泉の柱と周りの広い空間が写っている。一番難しい全体像を捉える写真がうまく撮れた。


「すごーい! やるじゃない俊也兄ちゃん!」

「自分でもびっくりするくらいうまく撮れたよ。こんな状況だけど楽しいな……」


 リズが褒めているように、意外にも、俊也には写真家としてのセンスがあるようだ。残りの転写の紙4枚の内3枚は、瘴気の柱を左右後ろ三方向から一枚ずつ写すのに使い、最後の1枚には、氷山の麓から瘴気の柱辺りまで続く氷結した大地を写した。現場の調査写真としてベストな5枚を手に入れることができている。


 これでほぼ、レオン法王からの依頼は達成できている。後は所感を伝えるため、瘴気の柱の特徴を入念に肉眼で調べ、頭に入れておいたり、瘴気の迷路の内部構造と倒したモンスターのことなどを忘れない内にメモし、調査は終了した。




 聖浄のトーチを使い、瘴気の迷路を通ってテレミラ村への帰還を一行は急いだ。帰りはモンスターに遭遇することもなく順調であったようだ。誰も瘴気に囲まれて長居したいとは思わない。歩を速めることで俊也たちは、その日の夕方にテレミラへ戻ることができた。


 夕日を受けた辺境の村は、あちこちの家から立ち昇る炊煙も合わせて、とてもノスタルジックである。危地から帰還した俊也たちは、それを見ただけで緊張がほぐれ、ホッと一息できていた。

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