第十四話 異世界での初仕事
「話というのはこの町の近くにあるモンスターの群生地のことでな。そこにいるモンスターどもが、近頃特に増えてきている。増えているのはお前さんが倒したラダと、もう一種類はアカオオジシだ」
ラダとは二回既に戦っているので三つ目の妖犬ということはわかっているが、アカオオジシというのは俊也には初めて聞くモンスターの名だ。
「アカオオジシを知らないんです。特徴を教えてくれませんか?」
俊也がそう訊いてくるのに、ギルドの親父は「どういうことだ?」とつぶやいている。それというのもアカオオジシは、この世界ではとても有名なモンスターで、老若男女誰でもその姿形を知っているくらいだからだ。だが、この世界から見て異世界から来た俊也がそれを知っているわけはない。
「まあいい、知らないなら教えてやろう。大きさが大人になると熊まではいかないが、それに近いくらいの大きさになるイノシシで、鮮やかな赤色の体毛を持っている。そんなに凶暴なモンスターではなかったんだが、数年前からなぜかよく人を襲うようになってな、中には襲われて命を落とす人間もいる」
そこまで説明し一息つくために、ギルドの親父はキセルでタバコを軽くふかせた。味がある親父の顔に、そのキセルはよく似合っている。
「で、お前さんに頼みたいのはモンスター退治だ。群生地のモンスターはかなりの数だから、もちろんお前さん一人だけに頼んでるわけじゃねえ。他で腕に覚えがあるやつら5人にも頼んでいる。そして急で悪いんだが、明日が決行日でこのギルドに集まって群生地へ行くようになっている」
興味深く俊也は聞いている。自分の今の力を測るのにうってつけの場じゃないかと既に乗り気である。
「どうだ? あんたもやってみるか? 成功報酬は5000ソルだ」
「やってみます。明日ここに来ればいいんですね?」
ほとんど即答で俊也は参加することに決めたが、ギルドの親父は彼の得物にかなり気がかりがあるようだ。
「やってもらうのはいいとして、あんたは得物をどうにかした方がいい。その木剣じゃ、強かろうが命がいくつあっても足らねえぞ」
忠告した後、親父は町の地図を出し、ある場所を指し示してまた話し始めた。
「地図でいえばこの場所に、べっぴんさんだがかなり変わった魔術師の姉ちゃんが店を出している。その木剣を持ってそこに行ってみな。ひょっとするとひょっとするかも知れねえ」
ギルドの親父が言っている場所に行くと何が起きるのか、濁した言い方をするのでやや気味が悪いが、俊也達は紹介された魔術師の店へ向かうことにした。