表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヘルモードの異世界をもう一度  作者: チャラン
第五章 異世界救済生活・探求(後編1)
130/279

第百三十話 妖犬と平常心

 俊也たちが歩いている北方に続く道は細い。港町ライネルからセイクリッドランドの都まで、馬で進んだ道は往来が賑やかなのだが、今は行く人もまばらな道において歩を少しずつ伸ばしている。


 さっぱりした薄地で、上下とも七分袖の服を俊也は着ている。ミスリルのプロテクターもしっかり装備し、オリジナルウェポンである刀を腰に帯びていた。何があってもよいような、完全装備に近い。サキとセイラは女性らしく日焼けが気になるようで、小さなリボンをあしらったストローハットをかぶり、修道服ではなく、薄緑色の袖がしっかり腕と脚を覆う上下を着ている。三人の履いている靴は、通気性が良く軽く丈夫な素材であり、足拵えも長旅に最適な物を用意していた。


「北へ行く人は、ほとんどいないんだな」

「北方ほどモンスターが強くなって危険が多いらしいからでしょうね。大きな町もないって聞きましたね」

「私たちのように特別な用がなければ、向かう場所ではないのでしょう」


 ちらほらと、心もとない道を行く旅人はいないことはないのだが、その旅人も、一人、また一人と、道中で見かける村落などへ入っていく。朝早く聖都を出発したのだが、歩を昼下がりまで進めて行ったところ、道中で人と出会うことは、本当に稀になっていた。


「だんだん寂しくなってきましたね」

「そうだね。分かっていたといえばそうだけど、こうなるんだな」

「道も少し荒れてきましたが……俊也さん、向こうを見てください」


 寂しいながらも両手に花で進んでいる俊也だが、彼は左手にいるセイラに教えられ、前方に数匹の妖犬が、腹をすかせてこちらを窺っているのに気づいた。ラダである。


「東の大陸にもラダがいるんだなあ」

「ちょっと俊也さん! 最近、ほんとに緊張感がないんですけど大丈夫ですか!?」

「うん、まあいつも通りやってみるよ」


 俊也にとってラダ数匹は、モンスターとしてもはや物の数ではないのは確かなのだが、特に慢心があって緊張感がないのではない。歴戦の手練になってきたのと、イットウサイにつけてもらった激しい修行により、彼の中で平常心の悟りができつつあるのだ。


「刀を抜くよ。サキ、セイラさん、下がってて」

「分かりました、お気をつけて」

「油断しないでくださいね」


 加羅藤姉妹を後ろに下げ、彼女たちを守るように俊也は身を運んでいる。だが、その必要もなく、ラダたちの狙いは俊也一人であるようだ。三匹のラダは、自分たちの攻撃範囲に俊也が入ったのを妖犬の勘で察知すると、牙を剥け、一斉に飛びかかってきた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ