第十三話 根は悪くないギルドの親父
ギルドが入っている建物はサキの教会よりは大きくないが、それでもなかなかの広さがありそうな外観である。しっかりとした石造りで頑丈そうだ。
「私もあまり入ったことはないんですが、面白い人がいっぱいいますよ」
目の前のギルドを指してデート気分で楽しそうに話しているサキだが、俊也は「面白い人」と彼女が言ったのがギルドの前にいる、一癖も二癖もありそうな男たちに聞こえてなかったか内心ハラハラしていた。
中に入ると確かに面白い男が大勢いる。剣を帯びた荒くれ者がその中では多いが、ひょろりとした澄ました顔と格好をしている魔術師のように見える者、また、荷造りや姿格好から商人と見られる者もなかにはいた。ここで簡単な食事もできるようで、昼食を取っている者もいるが、トラブルを避けるために酒は出さないようだ。
「あのカウンターに座っているおじさんと話してみましょう。ラダの尻尾を換金してくれますよ」
サキは案内を続けてくれたが、ギルド内でも俊也の手を握ったままなので、これはまずいだろうと思った彼はそれとなくサキの手を放し、大癖がありそうな食えない顔をした中年の男の前にゆっくりと座った。
「どうした? ここは子供が来るとこじゃねえぞ?」
座った俊也を見るなり、いきなりそんな挨拶とも言えない挨拶から始めたが、俊也はこのギルドの親父は悪い人間ではないと見た。この言葉も親父なりの親切心から出ているのだろう。
「いや、ラダの尻尾を2つ持ってきたんです。換金してくれませんか?」
「なに? 本当か? 出して見せてみろ」
俊也はサキから借りた小さな獲物袋から、ラダの尻尾を取り出しギルドの親父に見せた。親父は感心したようにそれを見ている。
「ほ~、確かにラダの尻尾だ。よし! 今のレートは1匹300ソルだ! 換金してやろう」
ギルドの親父は金貨1枚と銀貨1枚を簡易金庫から取り出し、ラダの尻尾2つと交換した。
「ところでこれはどうやって手に入れたんだ? まさか、お前さんが倒したわけじゃないだろう?」
親父は俊也の容姿から、そんなことができるわけはないと彼の力を見誤っているが、俊也は持っていた木刀を見せ、ここまでの経緯を説明した。
「う~む、信じられんが嘘をついているようにも見えんな。この木剣でか……」
使い込まれた俊也の木刀を見て、ギルドの親父はしばらく考えていたが、
「あんたがそんなに強いなら頼みたい仕事があるんだ。ちょっと聞いてくれるか?」
と、彼の力を信用することにし、特別な話を持ちかけてきた。