第百二十六話 銀行統合型ギルド
レオン法王との謁見はこれで終わった。こんなに時間を割いて一般の個人と話をするのは、法王にとって非常に稀なことらしい。後は、残りの成功報酬5000ソルと聖騎士の称号について、いくらかの説明があったようだ。法王から贈られるその称号は、カラムの町長トクベエが言っていた通り、高い権威的なものであり、もし称することができるようになれば、旅において様々な行動が行いやすくなる。
全く関係ない話になるが、俊也は大聖堂から去る時、見送りに出てくれているレオン法王にこんなことを聞いている。
「もしかして、どこかでお会いしたことがありませんか?」
異世界の日本から来た俊也がである。傍にいたサキとセイラは、どうしてこんなことを言っているのだろうと、キョトンとした顔で彼を見た。俊也の顔には変わった衒いも見えない。その時、至って普通であった。
「俊也さんが会ったと思うのなら、何処かで会っているのかもしれませんな」
おおらかな微笑みをたたえながら、レオン法王は俊也にそう答えている。この答えも妙なもので、護衛の近衛兵は不思議そうな顔をしていたようだ。
二人はそれ以上は深く聞くことはなく、俊也たち一行は大聖堂を後にしている。
「よし! これで準備が整ってきたな! もうすぐ北へ出発できるぞ」
「ちょっと俊也さん! 大事なことを忘れていますよ! この都のギルドへ行かないと」
「あっ、そうかそうか。ザイールさんから言われてたな」
東の大陸へ来て日も経ったが、まだどこかしら俊也はとぼけている。こういう彼をしっかりサポートしていくのが、サキでありセイラということに、これからなっていきそうだ。
謁見後だが、まだ昼間で時間が十分ある。町の人に尋ねながらギルドを探し、そこで情報収集などの用を済ませることにした。
セイクリッドランドのギルドはとても広い。流石に聖都ということだろう。また、仕事を斡旋するギルドと金銭を扱う銀行が統合されており、職員の物腰が柔らかく、この銀行統合型ギルドの客層も、他のギルドにいたような荒くれ者は少なく、品が良く見えた。
「これは驚いたなあ。こんなギルドは見たことがない」
「ええ。とても機能的ですね」
建物の内装も上品で、なかなか高価そうな絵や、花を生けた花瓶なども飾られている。俊也たちはそれらが珍しく、しばらく立ち止まって眺めていたが、ぼやぼやばかりもしていられないと気付き、受付窓口の職員に話しかけた。とても柔和な青年職員で、おおよそ荒っぽいギルドのイメージとはかけ離れている。