第百十四話 ギルド長コルナード
「なるほどな。西の大陸になかなかの剣士がいるとは聞いていたが、お前のことだったのか。ザイールが書いたことなら間違いないだろう。しかも、白鷹団のバルトともつながりがあるのか」
「はい。シーグリフォンが蒸気船を襲ってきた時に助けてもらいました」
「お前もその時、かなり戦ったらしいな。よし分かった! ガキ呼ばわりして悪かったな。俺はライネルのギルドの長、コルナードという。よろしく頼む」
コルナードは右手を差し出し握手を求めている。話が通ったことに俊也は安堵し、笑顔で堅い握手を交わした。周りの荒くれ者たちは、ザイールの名だけでなく、バルトの名も思いがけず出てきたことにより、驚愕し幾分動揺している。二人の顔はそれほどライネルで利くということだろう。
その後コルナードは、俊也たち三人を下にも置かず、受付の奥部屋へ通した。どうやら色々な詳しい話をしたいようだ。その部屋は、コルナードのちょっとしたプライベートも兼ねているようで、様々なワインが棚に収められおり、他の調度品も意匠深い物がある。
「長旅でくたびれてるだろうが東の大陸によく来た」
「ありがとうございます」
まず、コルナードが聞きたいことは、東の大陸へ俊也たちが来た目的であり、経緯を含めて丁寧に話をした。
「なるほどそうか。レオン法王に呼ばれているんだな」
「はい。セイクリッドランドへ行きたいのですが、どうやって行ったら一番いいでしょうか? 地図を持っているので、おおよそは分かるんですが」
「そうだなあ……。うまい行き方を案内してやれないこともないが、俊也と言ったか、一つ頼まれてくれないか?」
「なんでしょうか? 伺います」
「はははっ、お前は素直なやつだな。気に入ったぜ。セイクリッドランドへ行くのにも大いに関係することだ。実は近頃、セイクリッドランドへの街道沿いにある川の近くで、亀のモンスターに旅人が頻繁に襲われている」
「亀のモンスターですか。なんという名のモンスターです?」
「ランドタートルという大亀だ。亀だからあまりすばしっこくはないが、硬い甲羅を持ち頑丈で、歯が立つ得物は少ない。だが……俊也、お前の得物を抜いて見せてくれないか?」
自然な流れで促され、俊也はテーブルに立てかけていた刀をゆっくり抜いて見せた。その抜身をコルナードは「ほう……」と、感嘆の声を上げ、まじまじと見ている。俊也もランドタートルというモンスター名を聞き、ディーネが「そのカタナならランドタートルでも」と、カラムの町へ来た最初に言っていたのを思い出していた。