第 8話 写真部・部会
学園祭に向けて写真部の部会が行われた。普段から出欠管理は有って無いような部活であったが、学園祭の会議ともなると、全員出席が義務である。写真部員が空き教室に集まると、教室がいっぱいになった。
森幸乃は周りをキョロキョロと見ながら小声で言った。
「鎌倉さん、結構人数が居たんだね。いつも部室がガラガラだったから驚くよ」
「そうねー、一学年が十人ちょっといるから三学年だとこの位になるのよ。でも女子は普段の面々でしょ。確かに部員で教室を埋め尽くされると、男子ばかりで数に圧倒されるわね」
写真部には学年別に代表がいた。二年生の代表は松本蓮だ。蓮は教壇側で部会の進行について話をしていた。
和泉大輝部長が教壇に立ち、部会が始まった。
「皆さん、お疲れ様です。今年の夏は史上最高気温を記録した夏でしたね。非常に希な気象条件の中、特別な写真は撮れましたか。または炎天下にも関わらずカメラを三脚に固定し、屋外に置き去りにして壊した人もいるでしょう」
数名の部員が笑った。
「紹介が遅れましたが、私が部長の飯泉大輝です。ちなみに普通課の三年A組です。普段、顔を合わせる機会が無いからこの機会に是非、覚えて下さいね。
本日の議題は大きく分けて二つあります。一つ目は学園祭の展示に向けて、出品作品の確認と運営スタッフの割り当て。二つ目は生徒会と合同主催で行う、ミスコンの実行委委員を決めたいと思います。では二年生代表の松本君お願いします」
松本蓮はプリントを配り終えると淡々と進めた。
森幸乃は頼もしく見えた。
「ねえ鎌倉さん、松本君、やるわねー! テキパキと進めちゃって見直したよ」
鎌倉美月は珍しく人前に立つ、松本蓮を見つめて答えた。
「はい、やるときは、やる男なんです!」
二人はコソコソと笑った。
会議の決定事項を整理すると、出品作品は学園祭の一週間前までに額に入れて提出。部室のカラープリンターは多くの部員が使えるように計画を立てた。展示する教室の準備と片付けは極力全員参加の事、当日の運営スタッフは二日間を午前と午後で最低四名を決定した。海斗、松本蓮、鎌倉美月、森幸乃は、一日目の午後を担当する事になった。
続けて二つ目の議題に進んだ。生徒会合同主催のミス横浜山手総合学園コンテスト実行委員会の選出となった。
和泉部長は話し始めた。
「このミスコンテストの歴史を知らない人が多いと思うが、バブルの頃に写真部の港湾課の生徒が企画したものが始まりなんだそうだ。その企画は学園祭一盛り上がり、成功を収めた。それを妬んだ生徒会が翌年からミスコンは全校生徒のものとして写真部から取り上げ、生徒会主催のイベントに変わった。黙っていられなかった先輩が、考えた次の企画が、ミスフォトジェニックコンテストだった。前年盛り上がった主催団体を知っている男子生徒達は、もちろん写真部を応援した。その結果、写真部のイベントの方が生徒会より遙かに盛り上がった。更に翌年からは生徒会が歩み寄り、写真部と合同主催となった歴史があるそうだ、そうですよね、二宮先生!」
和泉部長は顧問の二宮隆先生を見た。
二宮先生は教壇側の窓側に座っていた。席を立ち部員を見回した。
「あ~、そうだよ、だから未だに合同主催なんだよ。ココだけの話だが生徒会にいるのは、大人しくて優秀な生徒が多いだろ。そもそもミスコンで何が盛り上がるかなんて、分からない生徒が多いんだよ。ただ集めて並べたって、朝礼みたいになるだけなんだよ。
だからな、写真部部員は生徒会より優れている事を見せつけ無くちゃいけないだよ。三年生は進学や就職の準備が有るから拘束はしたくない、そこで私から推薦をしたいんだが。始業式で話題を集めた、松本君と伏見君はどうだろう、あと手伝ってくれる二名ほどを探し、写真部の実行委員にしたいと思うのだが如何だろうか?!」
和泉部長は確認をした。
「皆は、それで良いですか? 松本君、伏見君は、お願いしても良いですか?」
二人は顔を見合わせた。
「海斗、やってみるか?」
「うん、生徒会を突いてやるか! やってみようぜ、蓮」
二人は気持ち良く引き受けた。和泉部長は部員の顔を見回して言った。
「他に手伝ってくれる人はいますか?」
松本蓮は鎌倉美月を、海斗は森幸乃を見つめた。そして鎌倉美月と森幸乃は、困った顔をしながら手を上げた。
「森さんは三年生だけど大丈夫?」
「ええ、大丈夫です」
「それでは、鎌倉さんと森さんが手伝ってくれるようなので、この四人を実行委員に決定したいと思いますが、如何でしょうか?!」
部員は拍手をし賛成を示した。
「あと、当日の撮影班として、数名の人選をします。これは三年生の特権なので、この後三年は集まって決めましょう。実行委員会は明日の放課後、生徒会との打ち合わせがあるから出席を頼むね。それと過去の打ち合わせ記録が戸棚の中にあるから参考にして下さい。去年、私が実行委員をした時に参考になったから、見ておくと良いよ」
その後、幾つかの連絡事項があり、部会は終了した。
早速、四人は去年の打ち合わせ議事録を手にした。
森幸乃は議事録を見て感心した。
「へ~、さすが生徒会ね。詳細な記録が残っているのね」
松本蓮は気遣った。
「森さんに、付き合わせてゴメンね。クラスの模擬店もあったろうに」
「ううん、クラスの模擬店は無いの、むしろ最後の学園祭を楽しめて嬉しいかも。何で君達の周りには面白い事が多いのかな?」
鎌倉美月は笑った。
「ププッ! そうかもね。今年は特別みたいね」
海斗も続いた。
「ミスコンにあんな歴史があるとは思わなかったね。写真部として責任重大だね」
四人は去年の打ち合わせ記録に目を通した。