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第63話 横浜山手通信

 (二年B組・海斗の教室にて)

 林莉子は話題を振った。

「ねえ、皆、知っている? 新聞部がホームページを立ち上げたのよ!」

 中山美咲は答えた。

「へー莉子、詳しいのね。学園通信だけじゃ無いのね」

 小野梨紗も続けた

「今時、ネット社会でしょ。やっぱスマホなら何処でも読めて良いわよね」

 話題に乗って来ない三人が居た。


 小野梨紗は海斗を見た。

「ねえ海斗、どうしたの? 浮かない顔をして?」

「うん、闇サイトが無くなってから、たった二ヶ月で校内を記事にする新しいホームページが出来るなんてさ。しかし莉子は情報源は凄いな、そもそも何処から探し出すんだ?」

「やだなー海斗、先月の学園通信にも申請中って書いて有ったし、女の子も噂をしていたのよ。今度は新聞部だし、信頼性が有るんじゃない?!」


 松本蓮は強めに林莉子に突っ込んだ。

「もう忘れたのかよ? 闇サイトを作っていたのは新聞部だって噂が有ったじゃん! ねえ美咲」

「そうよね、もし同じ発信者だったら怪しいわね。でも大きく違うのは、発信者が明らかな事ね、だってフェイクニュースは出せないもの。今度は中等部が見ても安心な記事なら良いけど。……莉子は好きよね?」

「うん、私はこう言うの好き! だって月一の新聞より、頻繁に更新される記事は興味あるもの。きっと閲覧数も上がるに違わないわ!」

 鎌倉美月は海斗を見た。

「海斗、また気を付けた方が良いわね、狙われるかもよ。私も気を付けるけど」

 小野梨紗は不思議な顔で鎌倉美月を見た。

「美月は狙われた事、有ったっけ?」

 鎌倉美月は松本蓮との鎌倉デートを盗撮されていた。しかし闇サイト閉鎖の為、公にならずに済んだのであった。

「いや、ちょっとね。何でも無いわ、ハハ、は~」

鎌倉美月はごまかした。


 (新聞部にて)

 ホームページが公開され一週間が経った。再び新聞部に活気が戻っていた。

 戸塚部長は張り切っていた。

「皆、良くやった! これでやる気もV字回復だ!」

 部員達は歓喜を上げて喜んだ。

「山本!「横浜山手通信」このホームページの名前が良い! うんうん」

「そうでしょー、一見、地味すぎる名前だけど、オフィシャルっぽいですよね。非公認と表記させられたって、下段に表記すれば生徒は気づきませんよ」

 戸塚部長は悪代官のような顔になった。

「山本デスク、お前も悪よのー、ワ、ハ、ハ、ハ。フェイク・オフィシャルか。発信元が新聞部なら、それだけで学校関係者はオフィシャルと勘違いするだろう。すでに閲覧数は闇サイト時代の数十倍だ。新聞部の影響力も強くなるってもんだ。次は派手な記事を掲載したいモノだな」

 山本デスクはニヤリと笑った。

「戸塚部長、とっておきの噂があるんですよ! 山手砲を打つ為に、聞き込みを進めています」

 戸塚部長の目が光った。

「ほう、ほう、聞かせて貰らおうか」

 山本デスクは耳打ちをした。

「先日、中庭のベンチが壊されたのはご存じですよね。あの犯人は○○らしいですよ。警備員が職員室で、防犯カメラの映像を見て話しているところをウチの記者が聞いているんです」

「えーっ! それはビッグニュースじゃないか! ん? どうした山本デスク」

「それが未だ、その映像を見ていないんです。見たくても防犯カメラの映像は職員室ある単独のレコーダーに記録されているから見られないのです」

 戸塚部長は考えた。悪い顔をして山本デスクの肩を叩いた。

「それなら、良い方法が有るよ。ウチの顧問を利用すれば良いんだよ、あの島田先生。理由は犯人捜しだとマズいから適当な理由を付けて……そうだなあ、校門の防犯カメラの映像を使い効率的に生徒達の髪型を調べ、多い髪型ベスト・テンを記事にしたいとかね、言ってみれば良いんじゃないか?!」


 山本デスクは手を叩いた。

「戸塚部長、それは明案です。そうすれば防犯カメラの映像を堂々と見る事が出来ますね!」

「ああ、それと、島田先生に迷惑がかからないように、ちゃんと記事も掲載しろよ」

「はい、解りました」


  一週間後の夕方、遂に山手砲が撃ち放なされた! 全校に衝撃が走った。タイトルは

「ベンチを破壊した犯人は、大手H商事のお坊ちゃまだった!?」

 記事によると複数の生徒の証言による犯行時間の裏付けと、犯行時間の前後に現場付近を歩く少年の写真が掲載された。写真は個人を特定出来ないようにボカシが入っていた。


 翌朝、京野颯太が教室に入ると、空気の異変に気が付いた。いつもの様に席に座ると京野グループ仲間は心配し慰めた。

「な、なんだ? 何で俺を心配しているんだ?」

 橋本七海は力強く答えた。

「颯太は何が有っても、これからも友達よ」

 佐藤美優も続いた。

「ねえ、大丈夫なの? 颯太って物に当たる人だったのね。意外だわ」

 遠藤駿は気遣った。

「俺は信じているよ、何かの間違いだよね、ね!」

 田中拓海は、ただただ心配をしていた。京野颯太は状況を飲み込めずにいた。

「何を言っているんだ?! 何か、勘違いをしていないか!」

 田中拓海はスマホで記事を見せた。


 京野颯太は仁王立ちになり声を張った。

「えー! なんだ、この記事は! 俺じゃないよ。壊す訳ないだろ!」


 佐藤美優は目を細め、怪しそうな顔をした。

「だってH商事よ! しかも犯行の前後に撮られるるなんてお粗末よね。モザイクがかかっていても、知ってる人なら颯太って気が付くわ!」

「おい! だから違うって言っているだろ」

 林莉子も加わった。

「京野君、何でこんな事をしたの、私、悲しいわ……」


 海斗は京野が話題の中心になって、良からぬ話題とになっている事に気付いた。

「何だ? さっきから変だぞ! 莉子、説明をしてくれないか?」

 林莉子はスマホから横浜山手通信の画面を海斗に見せた。皆も自分のスマホで検索をかけて記事を読んだ。

 皆は席を声を合わせて驚いた。

「えーっ!」

 海斗は額に手を当てて怒った。

「蓮、まただよ!」

「ああ、まったく懲りないな!」

 鎌倉美月も頭にきた。

「何がコンプライアンスよ!」


 海斗は念のために訪ねた。

「なあ京野、やってないんだよね?」

「うん、やる訳無いだろ!」

 すでに京野颯太と海斗達の会話では無く、教室全体が注目をしていた。

「お前はイヤミな所は有るが、悪い事をする奴じゃない。俺は知っているよ!」

「ああ、有り難う伏見君。でもその言い方はどうなの?」

 松本蓮も鎌倉美月も京野颯太の見方を表明した。

「なんで、伏見達が信用しているのに、俺の仲間はこうも半端かな!」

 小野梨紗は呆れた。

「だってしょうが無いよ。複数の証言と証拠写真があるのよ。そもそも何で撮られたのよ? って言うか何で中庭に行ったの?」

 京野颯太は困った顔をした。

「そ、そ、それは言えないよ」

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