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第54話 お弁当トライアル

 期末テスト終わり日常が戻ってきた。海斗達はいつもの様に机を並べて昼食を取っていた。

 小野梨沙はしみじみと平和を感じていた。

「皆とこうして昼食を取るのは、久しぶりだねー」

 海斗は答えた。

「期末テストの期間は、半日だったもんね。放課後はどこにも寄らずに帰宅して、翌日のテストの見直しだもんね」


 中山美咲は小野梨紗の弁当に気が付いた。

「梨沙、今日はご飯のお弁当なのね。珍しいね」

 海斗は小野梨沙のお弁当を見て言った。

「へー、自分で作ったの? 凄いじゃん! 一学期は購買のパンが多かったのにね」

「しょうがないじゃん! 勝手が分からない頃はね。なんで私が作ったって分るの?」

「だってエレンおばさんは、お米のお弁当は作れないでしょ。梨紗、良く頑張ったね」

 小野梨沙はニコっと微笑んだ。林莉子は感心をした。

「私ですら自分で作らないのに、梨沙は偉いわね。もしかして、この間の料理実習で目覚めたのかしら?」

「うん、そうだよ! 料理は得意じゃなかったけど、自分で作れる事が分かったら、興味が湧いてきたの」

 中山美咲は思った。

「梨沙、日本のことわざで、好きこそ物の上手なれって言葉があるのよ。好きな事に興味を持って行う人は、誰よりも上達するって意味なの。だから興味の有るうちに、料理に取りくめば、誰よりも上達するわよ!」

 皆は中山美咲の言葉にうなずいた。

「うん、有り難う美咲。じゃあ、早速、やってみるよ! ねえ海斗、明日から海斗のお弁当を作っあげる!  海斗も私の料理の上達に協力をしてね!」

 皆は驚いた。一番驚いたのは良い事を言ったハズの中山美咲だった。ときめく小野梨沙は周りと温度差があり、中山美咲は戸惑った。

 小野梨沙は海斗を見つめた。

「ちょっと-、海斗聞いてるの!」

 中山美咲は意地っ張りである。自分の発言の手前、否定が出来なかったのだ。

「海斗、梨沙の為に協力してみたら。毎日のお弁当作りは大変だから、きっと良い勉強になるしね」

 嘘である。中山美咲は続く訳が無いと思った。林莉子、鎌倉水は中山美咲の心情を察していた。

 林莉子な言った。

「梨沙、何日、作ろうと考えているの?」

「もう、何日も無いから最後まで作るよ」

 鎌倉美月は驚いた。

「まだ二週間ちょっとは有るわよ。梨沙、最初は大変だから、例えば三日間だけやってみたら?!」

 林莉子も促した。

「そうね、一週間もやったら、懲りて料理が嫌いになるかもよ」

 小野梨沙は海斗の胃袋を公然と掴むつもりでいたが、嫌々作った料理は味に出るから、まずは三日間とした。

「うん、分かった。じゃあ、三日だけのトライアルにするよ」


 松本蓮は気が付いた。

「なあ、話がまとまった後に悪いけど、海斗の意見は聞かなくていいのか?」

 林莉子も続いた。

「そりゃあ、そうだよね」

 海斗に視線が集まった。

「実はさ、たまに葵が作ってくれるんだよ。だから葵の言い訳を考えるとねー」

 皆は驚いた。鎌倉美月は言った。

「はー? 中学生の葵ちゃんが、お弁当を作れるの?」

「それがさあ、美味しいんだよ! 葵は凄いね!」

 海斗の配慮の欠ける発言に、女子は肩を落とした。

 中山美咲は焼き餅を焼いた。

「もー! 海斗は未だ、葵ちゃんに胃袋掴まれているのね。呆れちゃうわ!」

 海斗は失言だった事に気が付いた。林莉子は続いた。

「もー、あの子はどこまでブラコンなのかしら」

 小野梨沙も負けてはいられなかった。

「それじゃあ、正しい兄離れが必要ね。前もって言っておいてよ! 三日間は梨沙お姉ちゃんが作るって!」

「……」

皆はきょとんとした。


 林莉子は言った。

「ちょっと聞き流しそうになったけど、いつからお姉ちゃんになったよ?!」

 小野梨沙は恥ずかしそうに自分の髪をくるくると触った。松本蓮は気遣った。

「海斗、それで良いのか?」

「うん、いいよ。三日だけなら、言い訳は何とでもなるしね。梨沙お願いします」

 小野梨紗はかしこまった。

「ねえ、三日間美味しかったら、ご褒美ちょうだい!」

「うん、いいよ。常識の範囲だよ」

「ホント! 私、横浜の夜景が見たい!」


 海斗は周りを見渡した。松本蓮と鎌倉観月、林莉子は楽しそうな顔をしている。これは一緒に行こうとしているな。中山美咲はホッペを膨らましている。これは二人で行くな、と言う意思表示だな。それじゃあ。

「梨沙、三日間ガンバれたら、ランドマークタワーの展望台に連れて行ってあげるよ。六十九階にある展望台から見る夜景はとっっても綺麗だよ。その後は汽車道を歩いて、赤レンガ倉庫で食事をしよう。食後に山下公園まで歩いて、帰りはシーバスに乗ろうね。船上から見るみなとみらいの夜景もとっても良いよ。普段は見られない方角だからね、とっても楽しめるよ。


 小野梨沙は聞いているだけで、うっとりしていた。中山美咲は聞いているだけでホッペがパンパンになっていた。

 海斗は続けた。

「シーバスの終点は横浜駅の東口だけど、離れた場所になるからJRの改札まで歩いて解散だよ。梨沙の分は弁当代として俺がおごるから、皆は自費でお願いします」

 小野梨沙は浮かれていたのに、急に現実に引き戻された。中山美咲はきょとんとした。松本蓮、鎌倉観月、林莉子は楽しそうな顔をしていた。三人は参加前提で聞いていたので喜んだ。

 林莉子は楽しくなった。

「ねえ、美咲、楽しみねー! 梨紗が作り切れば夜景を見に見に行けのね。横浜港の夜景を高層からと、海から見られるなんて応援しないとね!」

「ううん、そうね、楽しみだわ。でも何で海斗はそんなに詳しいの! もしかして、葵ちゃんと行ったんでしょ?」

 中山美咲は優しく睨んだ。

「ち、違うよー、なあ、蓮!」

「美咲、俺達三人は昨年、カメラを持って歩いているんだよ」


 中山美咲も林莉子も納得した。小野梨沙は口を尖らした。皆は梨沙に向かって言った。

「梨沙、ありがとう!」

 海斗は仕切った。

「楽しいイベントがまた出来たね」

「ううん……」


 小野梨沙はの思惑が外れた。しかし皆と過ごす時間も楽しいと思い機嫌を直した。海斗の胃袋を掴みロマンチックな夜景を見て、二人の関係が発展する事を夢に描いていたのだ。やはりこの仲間では抜け駆けは難しのだ。

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