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第46話 目利き

 (三回目の調理実習の前日)

 海斗達はお昼の時間に机を並べ昼食を取っていた。小野梨紗は得意げに話しかけた。

「私、日曜日に肉ジャガを作ったんだよ」

 海斗は驚いた。

「えっ、やるじゃん! エレンおばさん、喜んだでしょ?」

「うん、そうなの! ママもパパも喜んでくれたの。私、嬉しかったわ。ねえ、明日は調理実習の最終日だよね。私も買い出しに行ってもいいかな?」

 中山美咲は首を縦に振った。

「うん、一緒に行きましょう。食材の選び方を教えてあげるわ」

 海斗は梨紗を見て口を尖らした。

「えー、せっかく美咲と二人きりの買い物だったのになー!」

 中山美咲は不意にかけられた言葉に頬を染めた。

 すると小野梨紗はホッペを膨らませ海斗を睨んだ。海斗は笑って返した。

「嘘だよー! 梨紗も一緒に行こうねー」

 梨紗は膨れたホッペを戻して微笑んだ。林莉子も便乗した。

「ねえ、私も行ってもいいかなー? 卵が安いんでしょ? 美月も行かない?」

「へー、それじゃあ私も行こうかな。蓮はどうする?」

「なんだよ、みんな主婦みたいな事、言っちゃって。……じゃあ俺も行くよ」


 海斗は皆に話しかけた。

「じゃあ、皆で買い出しに行こうね」

 松本蓮は主菜だけの献立に不満が有った。

「明日は、豚の生姜焼きでしょ。やっぱり、ご飯が欲しいよね。どうせなら、ご飯を炊こうよ。莉子、上手だったし」

「まあね、でも授業なのよ、勝手な事は出来ないわよ。ねえ海斗」

「それなら帰りのホームルームで提案しようよ。ウチの班だけだと良くないからね。だいち主菜を作るのに、誰だってご飯が欲しいに決まっているよ」

 小野梨紗は海斗に笑いかけた。

「それなら、海斗に任したよ、ね!」

 皆も海斗に期待をした。


 (買い出し三回目)

 放課後になり、海斗達はスーパーに居た。松本蓮は店内を見回した。

「へー、このスーパー始めて入ったよ。なあ美月、こんな所に在ったんだね。」

「そうね、コッチは来ないもんね」

 林莉子は値札を見つめた。

「あらホント、安いわね」


 中山美咲は小野梨紗に話しかけた。

「ねえ梨紗、キャベツは何処を見て、選ぶのが良いと思う?」

「ん~、どれも同じに見えるよね。水水しいのを探すのかな?」

「梨紗、一つ目は正解よ! まず色と艶ね。やっぱり美味しそうに見える物には理由が有るモノよね」

 海斗は尋ねた。

「一つ目と言うからには複数答えがあるんだね」

 中山美咲は得意げに答えた。

「ええ、そうよ。二つ目は持って見るの。ずっしり感じたら、しっかり詰まっている証拠よ。スカスカじゃ、味も量もがっかりよね。ほら持ってみて」

 中山美咲は複数を持ち上げ、二つの例を挙げた。小野梨紗は二つのキャベツを持ち上げ比べてみた。

「ホントだー、持たないと分からないのね」

 中山美咲はキャベツを持ち上げて、梨紗に見せた。

「三つ目は真横から見て、葉脈が左右対称な事を見るの。均等に日に当たり、健康に育った証なの。ココね。

 四つ目はひっくり返して裏から見るの。芯は五百円硬貨ぐらいの大きさがベストな大きさなの。美味しい成長時期を判断できるのよ。ついでに切り口の色を見るのも忘れないでね。乾燥していたり変色しているモノは、収穫してから時間が経っている証拠だからね」


 小野梨紗は感心をした。

「えー、キャベツ一つに、こんなに見る所が有るのね。知らなかったわ!」

 林莉子は自慢げに言った。

「そうよ、これが目利きよ!」

 中山美咲と林莉子は知っていたものの、その他の仲間はその知識に驚き感心をした。その後も調理実習で使うモノを買い物かごに入れた。ついでに皆は自宅用に、お得な卵を買って帰った。


 (調理実習室にて)

 海斗達は手を洗い、エプロンを着けて席に着いた。長谷川先生は割烹着を着て話し始めた。

「はい、今日は調理実習三回目の最終日です。昨日のホームルームで伏見から提案の有ったご飯ですがマストでは有りません。本題の主菜を作る事が授業の目的ですので、自信を持って時間に余裕の有るグループだけにして下さい。評価は主菜のみですからね」

 遠藤駿が手を上げた。

「先生! ウチの班は炊くのでは無く、白飯を持ってきました!」

「それは良い案ですね。それでは今日も怪我をしないように注意して始めて下さい」


 中山美咲は仲間達の顔を見渡した。

「さあ、今日は主菜の他にご飯も炊くわよ。主菜の評価もAを目指すからね、手分けして莉子と美月はご飯を炊く事に専念して欲しいの。大勢いても豚肉を焼くフライパンは一つだからね。お願いね」

 林莉子と鎌倉美月は早々に米を洗い始めた。

 中山美咲はさらに指示を出した。

「じゃあ、コッチもやるわよ。まずはキャベツの千切りね。海斗出来るかしら」


 海斗はキャベツの葉を数枚剥がし水洗いをした。葉を重ねて丸め、千切りを始めた。海斗の千切りは早くて細くて上手だった。皆は包丁さばきに驚いた。

「お母さんが居ない時間が長かったからね。だから料理の事は分からなくても包丁は使えるんだ」

 皆は感心した。海斗は続けて、トマトとタマネギを洗いカットした。次にタレ作りに進んだ。松本蓮が生姜を摺り始めると、辺りに生姜の爽やかな香りが立ちこめた。中山美咲は指示を出した、松本蓮は砂糖、みりん、酒、醤油と摺り下ろした生姜をボールに入れた。


 次に中山美咲は小野梨沙を見た。

「次は豚肉の準備ね。小野さんの番よ」

 小野梨紗は豚肉の白い脂肪の部分と赤い肉の境に小さく包丁を入れた。

「ねえ美咲、どうしてココに包丁を入れるの?」

「この一手間をすると、焼いた時にお肉が反り返えって変形しにくいのよ」

「へー、そうなんだ。ホント良く知っているのね」

 小野梨紗はバットにお肉を並べ、軽く小麦粉を振った。中山美咲はご飯の炊きあがる時間をはやし莉子に確認した。海斗と蓮には食器を並べキャベツの千切りとトマトを盛りつけ始めた。

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