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第45話 海斗の胃袋

 桜井メイは話題をそらした。

「そう言えば、ハロウィンパーティーの帰りね。マスターが松本君のスマホを届けてくれた時、ホント怖かったよね?!」


 皆は笑い出した。松本蓮は両手を合わせた。

「あー、ゴメン、ゴメン。ホント怖かった」

 鎌倉美月も思い出した。

「もー、蓮が悪いんだからね!」

 森幸乃は残念がった。

「ああ、私も見たかったな-! 皆の驚いた所。松本君が忘れ物をしたのよねー」

「そんな、もんじゃ無いよ。皆、必死だったんだから」


 稲垣京香は笑みをうかべた。

「メリーさんを見た後だからね、余計に驚いたのよ」

 海斗も続いた。

「うん、うん、そう言えばマスター、あれからメリーさんは来た?」

「あれからは来ないよ。来ても困るけどね。来年のハロウィンに、また来たりして?! ハ、ハ、ハ」

 皆もつられて笑った。


 海斗とも思い出し、マスターに話し掛けた。

「マスターはアップルボビングを知っていたの?」

「ああ、知っていたよ。山下公園前のホテルで働き始めた頃にね、若い連中と余興でやったんだ。あそこのホテルは外国人のお客さんも多くて、ハロウィンパーティーは大きなイベントだったからね。だから、たらいって言われピンと来たよ。伏見君達のアップルボビングも楽しかったね」

「そうそう、パーティーから帰ったあの日。葵がね、私も行きたかったって、しばらくうるさかったんだよ。クラスの集まりだからって言ったけどねー」

 鎌倉美月は困った顔をした。

「やっぱりねー、それに楽しかったからね」

 松本蓮は気遣った。

「一緒に居たら、楽しかったけどね。まあしょうが無いよ」

 桜井メイは海斗を見た。

「伏見君には妹さんがいるのですか」

 森幸乃は悩ましく嬉しそうに答えた。

「いるのよ。それもブラコンの!」

「えー、それじゃあ禁断愛なんですか!」


 海斗は慌てて否定した。

「禁断とか言わないでよ。兄妹だからね、家族愛だよ」

「会ってみたいな~、伏見君と似ているのですか?」

 森幸乃は答えた。

「そう言えば、似ていないわね。ねえ美月さん?」


 海斗の秘密を知る仲間は驚いた。触れて欲しく無い話題なのだ。

「は、は、そうかな~、ほら、ココなんてそっくり」

 鎌倉美月は海斗の顔をさして、眉毛、目、鼻、口と順に移動して迷ったあげく、頬を指した。ほらホッペなんか、そっくりじゃない?!」

 松本蓮は追い打ちをした。

「そうそう、ホッペはそっくりだな!」

 中山美咲は笑った。

「ププッ!」

 すると周りも笑い出した。森幸乃は桜井メイに言った。

「もー、ホッペを指すかな~、でもね、とっても可愛い子だよ」

「へー、そのうち会えるよね、伏見君」

「ああ、そうだね。仲良くしてあげてね」

 その後も皆は会話を楽しみ、しばらくして帰路についた。


 (調理実習室にて)

 生徒はエプロンを着けて席に着いた。長谷川先生は割烹着を付けて教壇に立った。

「はい、今日は調理実習二回目です。前回はご飯を焦がすものがいたが、これも経験です。人は失敗して成長するのです。今、先生は良い事を言いました! あら? 反応が無いのね。さあ、今日の献立は煮物です。各班の献立表を見ると筑前煮と肉ジャガが多いいですね。今日も火傷や切り傷の無いように調理を始めて下さい。特に堅い野菜は、しっかり猫の手で押さえるようにして下さい」


 中山美咲は再び司令塔となった。

「それでは、肉じゃが作りを始めます。海斗と蓮は野菜を洗って皮を剥いて下さい」

 二人はジャガイモを洗い芽を取り除き、ピーラーで皮を剥いた。続けて人参とタマネギの皮を向いた。

 松本蓮はジャガイモの芽を見つめた。

「なあ、ジャガイモの芽は毒が有るって聞いた事が有るけど、ホントかな?」

 林莉子は自慢げに答えた。

「そうよ、ソラニンとチャコニンって言う毒が有って、嘔吐や下痢、頭痛がするらしいわよ。だからしっかり取り除いてね」

「へー、可愛い名前をしているのにね。忍者のキャラクターみいただねニンニン」

皆はニヤリと笑った。中山美咲は次の指示を出した


「次にジャガイモは一口大に、人参は乱切りに、タマネギはくし切りに切って」

 海斗には切り方の名前が理解出来なかった。

「乱切り? くし切り? どんな切り方だっけ?」

 林莉子は海斗に、鎌倉美月は松本蓮と交代をした。彼女達はテキパキと刻んだ。林莉子は糸こんにゃくを五センチの長さで切った。中山美咲は次の指示を出した。

「次は梨紗の番ね、お鍋に油を入れて野菜とお肉を炒めてから水をいれてね。糸こんにゃくは最後に入れるから、未だ置いといてね」


 小野梨紗は切られた野菜を中火で炒めた。火が通ると鍋に水を入れた。

「へー、一度炒めてから煮込むのね」

「梨紗、この方が美味しくなるのよ。アクが出て来たらオタマを使ってすくい取ってね」

「アクをすくい取るのね」

「次は味付けね。予め計り取ってあるから、そのまま入れて下さい」

小野梨紗は、顆粒出汁、酒、みりん、砂糖、醤油を鍋に入れて混ぜた。

 中山美咲は続けて指示を出した。

「最後に糸こんにゃくを入れて、そうねー、弱火にして十分位煮込んだら出来上がりよ」

 小野梨紗は調味料を入れ終わると嬉しくなった。

「わー、やったー! コレで肉じゃがが作れるようになったよ! 美咲のお陰だよ」

中山美咲は照れて微笑んだ。皆も料理の過程が終わったのでニコッと笑った。


 小野梨紗は火の通り方に疑問を持った。

「ねえ中山さん、ジャガイモに火が入ったかどうか、どうやって分かるの?」

「コレよ、この串を使って刺すのよ、火が通れば柔らかくなるでしょ」

「おー、なるほど!」


 海斗達は出来上がった料理の盛り付けを始めた。評価用に少量の盛り付つけも終わり、海斗は先生に声を掛けた。すると長谷川先生は歩み寄った。

「おっ! 今週も早くて綺麗だな! 良いお嫁さんと、お婿さんになれそうだな」

 皆は笑った。

「見た目はA評価だ。味は……」

 長谷川先生は肉ジャガに箸を付けた。

「ん~、美味しいよ! 味もA評価だね」

 早速、皆も箸を伸ばし口に運ぶと、皆は笑顔になって「美味しい」を連呼した。


 林莉子は感心した。

「ジャガイモの火の入り方がちょうど良いわね。ホクホクで美味しいわよ」

 小野梨紗は、またも感動した。

「始めて、ちゃんとした和食を作ったよ。今度パパとママに作ってあげよ!」

 海斗は中山美咲をねぎらった。

「美咲、今日も上手くいったね。流石、美咲だね」


 林莉子はニヤリと笑った。

「海斗、胃袋掴まれちゃったんじゃないのー?!」

 昨日、喫茶「純」に居たメンバーは驚いた。中山美咲は興奮しながら否定した。

「もー! そんなんじゃ、ないからー!」

 林莉子は驚いた。

「えっ! なんで、そんなに怒ったの?」

 海斗、松本蓮、鎌倉美月は笑った。そして中山美咲は遅れて照れ笑いをした。

 この日も順調に調理実習が終わった。

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