第 2話 二学期の始まり2
長谷川先生は二人を讃えると微笑んだ。
「さあ、今日のホームルームは皆が気にている席替えから始めます」
長谷川先生は、机の配置に番号が書かかれたプリントを黒板に貼った。箱の中には番号の書かれたメモが有り、黒板のプリントと照合して席が決定するのだ。
小野梨紗は突然の席替えに戸惑った。
「えー!! 席替えするのヤダよ、この席が好きだったのに!」
「そっかー、梨紗は知らなかったんだね。学期ごとに席替えをするんだよ」
海斗の説明に、小野梨紗は肩を落とした。
「梨紗、ホラ、番号を引きに行くよ」
生徒達はキャーキャー言いながら、席替えを終わらせた。
小野梨紗は振り返り笑った。
「やっぱり海斗は、私と離れられないんだね」
小野梨紗は海斗の前席になった。海斗のそばには仲間達が集まった。
海斗に右横に中山美咲が座った。今まで席の遠かったので喜んだのも束の間、中山美咲の更に右横には京野颯太が座った。
海斗は京野颯太を見た。
「京野は、また中山さんのそばか! まったく不自然だな?!」
京野颯太はとぼけた顔をした。
「伏見君、たまたまだよ」
間に挟まれた中山美咲は苦笑した。
長谷川先生は仕切り直した。
「はい、今日からこの席順だから、明日から間違え無いようにね」
海斗の二学期が始まった。山の様な宿題を提出して帰宅する予定だったが、長谷川先生から呼び止められた。海斗と松本蓮は校長室で二件目の報告をして帰宅する事になったのだ。黒岩校長先生も斉藤教頭先生もご機嫌だった。一回目の時の説教が二回目で反映され、成功した事が嬉しかったのだ。
(海斗の自宅にて)
海斗は玄関を開けると、葵が飛んで来た。
「お兄ちゃん凄いね! 表彰されたんだってね」
葵はスマホから学校の裏サイトを海斗に見せた。海斗はそのサイトに目を通した。
「今度はフェイクニュースでは無く、ちゃんとした記事だね。しかしココの管理人、良く書くね。将来は週刊誌の記者にでもなるのかな」
海斗は感謝状の筒を葵に渡たすと、葵は海斗とリビングに入った。
リビングには明子が居た。
「海斗さん、お帰りなさい。初日は体が慣れないから疲れるわよね。どうしたの、その筒?」
葵は海斗に確認をして、テーブルの上で広げて見せた。明子も葵も驚いた。
「わー!! 凄い、凄いわ、海斗さん」
「お兄ちゃん凄いよ! お母さん、お兄ちゃん凄いんだよ。学校で山手警察の署長さんから表彰されたんだって。中等部も同じ体育館だったら見られたのになー!」
「凄いわね海斗さん。私、嬉しいやら驚くはで、ドキドキしちゃうわ! 正太郎さんにメールしなくちゃね」
明子は興奮していたが、海斗は冷静だった。
「お父さんは、仕事中だから連絡しなくて良いよ。帰ってからでも同じ事だしね」
思いもよらぬ返事に、明子は固まった。
「あらそう、海斗さんがそう言うなら連絡は止めとくわね」
自慢の兄と遊びたい葵は海斗を見つめた。
「お兄ちゃん、今日は時間が早いから、一緒にゲームしようよう!」
「じゃあ、時間を決めて遊ぼうね」
海斗は体調を崩してから、葵と遊ぶ時間に制限を設ける事にしたのだ。部屋着に着替え、海斗の部屋でゲームを楽しんだ。
この日は珍しく正太郎の帰りが早かった。明子は正太郎に話しかけた。
「正太郎さん、今晩は珍しく早かったのね」
「実は斉藤から連絡が入ってさあ、海斗が表彰されたんだって! ……ん? 驚かないの?」
「もう、そこに有るわよ。海斗さんが、いつ知らせても同じだから仕事中に悪いって言ってね。連絡をしかったのよ。折角、早く帰って来たのだから、褒めてあげて下さい」
そして、海斗は自宅でも二件目の説明をする事になった。海斗にしてみれば、説明は体育館、教室、校長室、帰宅後、そして今と五回目となった。いささか口も重くなったが、夕食は海斗の話題で盛り上がったのだ。