ジンカイイ侯爵家の従者たち
プリムの侍女エステル、リバートの侍従トーマスの話。ショートショートを一話ずつ。
トーマスの話は1-2の直前です。
【エステルのはなし】
「お嬢様、わたくし決めました」
「どうしたの、エステル」
「お嬢様のお子さまの乳母となれるよう、今から鍛えます」
「ふぁ!?ん、失礼。驚いてしまいましたわ。鍛える、と言ったかしら」
「はい、お嬢様。今から鍛えれば、任意のタイミングで母乳を出せる体になれるのではないかと」
「エステル、ひとつ、いいかしら」
「はい、お嬢様」
「あなたが修行したり、いつかの我が子の世話をしてくれたりするのは、とても嬉しいし、貴女の自由だと思うわ。だけど」
「はい」
「我が子とはいえ、貴女を取られるみたいで、いやだわ」
「お嬢様……!わたくし、浅慮でございました! まずはお嬢様こそ第一ですのに!!!」
「そこまで重く考えなくていいのよエステル。でも、ありがとう、そこまでわたくしのことを考えてくれて」
「お嬢様……!」
エステルの忠誠が1あがりました。
スキル 貴女のためなら死ねません を獲得しました。
【トーマスお見合い大作戦】
トーマスは執事見習いにして、ジンカイイ侯爵家嫡男リバートの専属侍従である。
リバートの秘書的業務と側仕えが主な仕事であるが、いずれは父の跡を継ぎ、ジンカイイ侯爵家の執事として骨を埋めたいと考えている。
しかし。
メイド長も母。
妹君であるプリムお嬢様の側仕えは妹。
つまり。
トーマスには、出会いの場がなかった。
いずれは父を継ぐ。そしてまた、家族でジンカイイ侯爵家に仕えたい。
我が家の本能のように染み付いている。
トーマスは思う。
いつか、自分に恋しつつジンカイイ侯爵家を最優先に考える、そんな彼女ができないものか、と。
それができそうなのは、今のところ実の妹しかいない。
それは絶対にごめん被りたい。
「閣下が羨ましい」
思わず、と言った様子で呟いたのへ、リバートは怪訝な目を向けた。
「どうした」
「私の妹もプリムお嬢様のようであれば、色々と安心でした」
「エステルには助けられているが」
「いえ、私も妹も、閣下とお嬢様が大切すぎておそらく結婚相手に困るだろうなと」
無表情なトーマスがそのようなことを言うのでリバートは目を丸くし、そして決意した。
──トーマスお見合い大作戦の始まりである。




