表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/65

【IF】断罪イベントですわ

完結ありがとうございました!

privatterで公開していたIFルートです。よろしければ合わせてお楽しみください。

ざまぁまでないけどややざまぁからの溺愛ルートです。

 皆様ごきげんよう。

 プリム・ラ・ジンカイイでございます。

 はじめましてから早2年。わたくし、ただいま婚約者からの婚約破棄真っ只中ですの。


 お相手は皆様御存知ですわね。

 イングラム・ド・イルフカンナ王太子殿下でいらっしゃいます。


 え、何故婚約しているのか、ですか。

 理由は簡単ですわ。

 イングラム殿下が婚約を公表しておりませんと、お兄様とメアリー様の婚約が成らなかったからにほかなりません。

 折よく殿下はじめ王家から婚約の打診があり、また、お兄様とメアリー様の交際も家内に知らされましたので、わたくし、是も非もなく頷きましたの。ええ、躊躇いはありましたわ。もちろん。モブを手放すこともなやましゅうございました。

 ですが。

 お兄様とメアリー様に例の冒険をさせずに済むのであれば、否やはございませんでした。

 今となっては、ヒロインを特攻させたほうが早いようなルートに、メアリー様を放り込むなんて、とてもとても。義姉としてそばにいていただくほうがずっと大事でございます。


 さて。

 そんな事情で殿下の婚約者となりましたが、わたくしたち、それなりに上手くやっていたと思うのです。

 ゲーム二部にあたる学園編でもおかしなことはありませんでしたし、メアリー様もわたくしも、上から数えたほうが早い順位で卒業できました。


 あ、『輝きのソナタ』は三部構成になっておりまして、

 第一部 令嬢デビュー編

 こちら、いわゆる出会いイベントとチュートリアルです。王妃様のお茶会や、大夜会までの社交で各攻略対象と知り合います。

 大夜会が第一部のエンディングですわね。

 第二部 貴族学園編

 こちらは学園パート。成人とされる16の春から1年間の学園生活です。

 必要なのかと言われると疑問ですが、学園パートのみの攻略対象もおりますので、出会い兼ステータスアップ期間とお考えください。

 エンディングは卒業式です。卒業式を終えたヒロインのもとに、第三部でお相手となりますヒーローが迎えに来るのです。

 第三部 攻略対象ルート編

 こちらがいわゆる個別ルートです。学園でのステータスやデビュー編での好感度によって、攻略対象一人に対してのルート分岐が始まります。三部では他の攻略対象へのアプローチは基本的にありません。あるのはその攻略対象とのエンディング分岐ですわね。


 そして。

 学園を卒業したメアリー様を迎えに来たのはお兄様。

 わたくしを迎えに来たのは王家の馬車。

 酷くないでしょうか。


 そんなわけで、私はイングラム殿下の婚約者となり、それなりに交流し、それなりにその、恋心、のようなものも感じております。

 が。

 今は、わたくしが19の年の大夜会。殿下とお兄様は23歳となられ、冬を超えた春に、メアリー様とお兄様、わたくしと殿下の結婚式が営まれる予定となっております。

 そんな、独身最後の大夜会でございます。


 わたくしの前に立つイングラム殿下は、無表情にわたくしをご覧です。ここまで付き合いがありますと、無表情の下の表情も読めるようにはなったのですが、今の殿下はまさに、無、でした。

 あら。珍しい。ここまで無の殿下なんて。

 その殿下の左腕にぶら下がるかのように縋り付いているのが、クアクゴス男爵令嬢ローズマリー様でございます。

 正直に申し上げますと、クアクゴス男爵家、まったくゲームに出ておりませんので、攻略本知識と現世の知識で思い出しますと、イルワ侯爵家につながるお家柄で領貴族だったように記憶しております。

 ゲームでは終盤の簒奪イベントにおそらく関わっていたのだろうとは推察されますが、現状、イルワ侯爵家は断絶されておりますし、今なおイルワ侯爵領は代官による目が厳しい状況。クアクゴス男爵は領内貴族でしたから、領地もなく、イルワ侯爵家から俸禄をもらっていたはずですが、今はどうなっておいでなのでしょうか。噂に上がらないということは大きなことは何一つ起こっておいででないということとは思います。


 さて、そのお家のローズマリー様ですが。

 感想を申し上げますとぼんきゅっぼーん! なボディラインと、それを惜しげもなく見せつけるかのような谷間を強調するオフショルダーのドレス、絞りきったコルセットが目に浮かぶような腰、そしてどれだけパニエ入れてますのと思われるほど膨らんだスカート、の、大変、その、盛りに盛った装いです。髪は地毛なのでしょうか、前世のやっすいカラーリング剤、またはいわゆるアイドル系メッシュカラーでよくあったような、くすんだピンクともうしましょうか、シルバーピンク? のような色合いです。毛先ほどピンク色ってどういう髪ですの? プラチナ色の反射がピンクに見えるメアリー様とは比べられませんわね。

 扇で表情を隠しながら、ローズマリー様を観察いたします。

 腰はコルセットで支えられておりますからまあ、及第点ですが、ぶら下がるような縋り付き方は下品ではないでしょうか。それほど背が低いようにもお見受けできないのですけれど。


「もう一度、おっしゃっていただけますか?」


 わたくしは、よくあるシナリオのとおりに問い返します。

 イングラム殿下は鷹揚に頷いておっしゃいます。


「ジンカイイ侯爵家令嬢プリム。

 王太子である我が判断により、そなたとの婚約を破棄する」

「まあ。わたくし、なにか粗相をいたしましたか?」


 まあ、破棄される分には全く問題ございません。なにせお兄様とメアリー様の婚約もすでに公布されておりますし、結婚式の段取りもバッチリです。

 断罪されたとして、ゲームのままであれば、死罪にはされないでしょうし、国外追放ならちょっと面倒ですけれども、生き延びることはできるのではないでしょうか。ここ2年、わたくしもただのんきにモブしていたわけではございませんの。


「あ、謝ってください!」


 と声を上げたのはローズマリー様。

 あら、まだ発言の許可されておりませんわよ。

 わたくしは視線を殿下に向けたまま、もう一度問いかけます。


「わたくし、なにか粗相をいたしましたでしょうか?」


 大夜会です。

 国中の貴族がほぼ全部集まっている場です。

 ここで行われることは、【公然の秘密】になります。つまり【噂話】としてあっという間に駆け巡るのです。

 殿下は一つ息を吐かれます。


「こちらの、クアクゴス男爵令嬢ローズマリーが、わたしに都度都度訴えるのだ。そなたが、己の爵位と、王太子妃候補であることを笠に着て、下位貴族である己を虐げている、と」

「まあ」


 殿下に直接都度都度とはまた、大胆な。


「念の為お伺いしますが、都度都度、とは」

「こういった夜会の席や、招かれた茶会の席で、だな。そなたが居た時もあった」

「そうでしたの」

「謝ってください! 何をのんきなことを言っているんですか! 婚約破棄されているんですから、私に謝って、イングラム様を開放してください!」


 わあ、ほんとにあるんだこういうのー!

 ではないですわね。


「話に割り込まないでくださいますか、クアクゴス男爵令嬢様」


 殿下から紹介されておりますけれどカーテシーしたほうがよろしかったんでしょうか。タイミング違う気がしましたの。


「謝罪、をすればよろしいのでしょうか?」


 わたくしが殿下に問いかけます。


「まずは罪状を明らかにしよう。クアクゴス男爵令嬢ローズマリー、きみは、彼女に何をされたのか、日時、状況、私に語ってくれたとおりに説明して見せてくれるか」


 壇上には陛下と王妃殿下もおられますし、周囲には衛兵もおります。

 ついでに申し上げればもう、周りが興味津々な皆さんで十重二十重なのですけれど。


「はい! イングラム様!」


 なのに自信満々なローズマリー様は、とうとうと訴えられます。

 曰く、学園で足を引っ掛けられた。

 曰く、茶会でお茶をわざとかけられた。

 曰く、殿下からの恋文が届かないよう城のメイドや下男を買収した。

 曰く、曰く、曰く。


 あらやだー! テンプレのままですわ―!

 わたくし、だんだん目がランランとしてきているのを自覚しております。もぉう、モブで居られなくなったと思いきやこんなところで乙女ゲームの真骨頂を見せていただけるなんて―!

 わくわくと続きを待っておりましたら、殿下が、わたくしをみつめて。

 無表情の下の無が、あら、なんだか、微笑んでらっしゃる?


「――これだけなさったのです。証人もおります。どうか、謝ってくださいまし!」


 ふんす! とローズマリー様が言い切りました。

 後半興奮してて聞いてませんでしたわ。御免遊ばせ。


「左様ですか」

「だそうだ。申し開きはあるか?」


 私のつぶやきに、殿下がうなずかれます。


「申し開き、と申しますか、殿下」

「何かな」

「腕、重くてらっしゃいませんか?」

「うん。重い」

「なっ!」

「あと、わかってらっしゃってやってますわよね?」

「まあね」

「以上ですわ」

「そうかい」


 殿下は頷かれます。


「クアクゴス男爵令嬢、いい加減、離してもらえるか」


 そして、左腕を引き抜きました。

 ほぼ全体重をかけていたであろうクアクゴス男爵令嬢ローズマリー様が、そのままバランスを崩され、ふっかふかのカーペットに膝をつかれます。


「イングラム様!」


 クアクゴス男爵令嬢は信じられないとばかりに声を上げました。それからわたくしを睨みつけます。


「早くあんたが謝らないから!」


 そんな言いがかりやめていただきたいですわ。


「謝る必要はない」


 それに答えたのは殿下でした。


「クアクゴス男爵令嬢ローズマリー。お前は勘違いをしている。確かに、お前の言葉に乗って、『婚約破棄のフリをし、プリムの悪行を暴く』を実施したが、特に悪行など出てこなかった。

 私の腕に気安くすがるな。そもそも、私を名で呼ぶとは不敬だろう」


 あら、殿下。声が氷点下ですわよ。そしてここでフリだと暴露されますのね。それにしてもいい声ですわねえ。さすが攻略対象。


「悪業は先程申し上げたではありませんか!」


 クアクゴス男爵令嬢はそれでも食らいつきます。強いです。


「発言よろしいでしょうか」


 わたくしがいえば、彼女が睨み、殿下が「赦す」と仰せになります。


「まず一つ目。クアクゴス男爵令嬢ローズマリー様、証人がおいでとのことですが、わたくし、殿下の婚約者となってからは周囲には必ず王家の手の方が一人以上お付きなのはご存知ですか?」

「だ、大体が学園時代でーー」

「学園でしたら、わたくしまだ婚約しておりませんでしたし、殿下は卒業済みでした」

「か、下位貴族の私を見下して――」

「見下すもなにも、今日初めてお顔を拝見しましたわ」


 そうなのです。

 クアクゴス男爵令嬢ローズマリー様とはまったくこれっぽっちも面識がございませんの。殿下と参加した夜会や茶会においでだったそうですが、これほど特徴的なら覚えていそうなものですのに。

 わたくし、鈍りましたかしら。

 首を傾げておりますと、扉のほうが慌ただしくなり、すぐに大きく扉が開かれ、警備騎士団が駆け込んで来られました。

 そのまま一直線にわたくしたちの元へおいでになり。


 膝をついたままのクアクゴス男爵令嬢ローズマリー様を捕縛されました。

 あら?

 ここで捕縛されるのは、わたくしの流れではございませんの?

 こう、クアクゴス男爵令嬢ローズマリー様をかばった殿下から逆転の一手! みたいなのが差し出されて。

 殿下を見ますと、無表情の向こうが満足そうです。触れないほうが良さそうですわ。


「クアクゴス男爵令嬢ローズマリー。王族とその婚約者への不敬、並びに、お前の父が、『お前とともに』成してきたことの数々。すでに王家は掴んでいる」


 あらやだ。初耳ですわ。


「私を籠絡するのもその一つだったのだろうが、無駄だったな」


 殿下はふかふかカーペットの上を優雅に大股に歩かれ、私の方を掴んで己の胸元に引き寄せられました。ちょっと勲章がちくちくしますわね。と思って見上げると目が会いました。なんですかその幸せそうな顔は!


「イルワ侯爵の残党として動いていたようだが、ここまでだ。沙汰は追って王が下す、大人しくせよ」


 殿下はきりり、と顔を引き締めて、クアクゴス男爵令嬢ローズマリー様におっしゃいます。


「なんでよ! 私が『ヒロイン』でしょう! そうよ! 助けてリバート! ラーシュ!」


 あら、お兄様やホエール公爵嫡男まで名前でお呼びになる仲ですの?

 と思ったら、メアリー様を伴ったお兄様と、婚約者のモビィディック侯爵令嬢サーエ様を伴われたラーシュ様がお見えになられます。


「おかしなことを言う女だなあと思って観察していただけなのに、どうして俺の名を軽率に呼べるんだ?」


 と問いかけたのはラーシュ様です。ラーシュ様はサーエさまを肩に抱いたままです。サーエ様、顔が真っ赤ですわ。お可愛らしい。


「わたしのこと、好きでしょう!」


 クアクゴス男爵令嬢ローズマリー様が叫びますが、警備騎士に床に押さえつけられます。


「発言は許していない。連れて行け」


 警備騎士の元締めはホエール公爵家ですものね。その嫡男、弓の名手にして警備騎士副団長の方の言葉ですから、クアクゴス男爵令嬢ローズマリー様はあっという間に引っ立てられて行かれました。

 会場の隅に居たクアクゴス男爵ご夫妻も同様に連れて行かれているようで、濁った悲鳴が聞こえます。

 やがて静かになり、観音扉が閉じられますと、壇上の陛下がしゃん、と一度錫杖を鳴らされました。


「騒がせた。これにてイルワ侯爵に連なる者、すべての処断を終えた。皆の協力と忠誠に感謝する。

 宴を再開せよ」


 陛下のお言葉に、いつの間にか止まっていた楽団の音楽が改めて奏でられます。

 わたくしの肩を抱いたままのイングラム殿下が、そのままわたくしの手を取りました。


「婚約者殿、一曲、お願いできますか」

「ダンスの間、説明をお願いいたしますわね」


 わたくしは、その手を握り返すのでした。


 ね、わたくしたち、それなりに上手くやれておりますでしょう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ムジーク編や学園編読んでみたいかな。
[良い点] 「なんでよ! 私が『ヒロイン』でしょう! そうよ! 助けてリバート! ラーシュ!」 ヒロインならリバートの隣で君に殺意を向けてるよ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ