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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第97話

 アキ達を待つ間、俺は例の三人を観察した。

 まず、隻腕の男に指示を出した少年は少女から『ルイス兄様』と呼ばれていた。少年とは言ったが、言動などは大人だ。見た目が幼いだけかもしれぬ。

 隻腕の男は言葉を理解はしているが、話せぬようだ。それと俺達から二人を守るように待機している。おそらく、ルイスが言わねば退かぬだろう。

 そして最後は少女だ。ルイスの事を『ルイス兄様』と呼んでいるので、おそらく妹だろう。そしてルイスはこの少女を『アズラ』と呼んでいた。


「主殿、持ってきたぞ」


「よくやった」


 アキ達が帰ってきた。アキが生首を持ち、ほかの三人が、魔法人形の破片を持っている。


「ルイス殿、こやつらを知っているか?」


 俺は魔法人形の首を受け取り、ルイス達にそう呼びかけた。アキは俺の横でダークエルフの生首を誇らしげに持っている。


「この爺さんは知りませんけど、この人は知っています」


「そうか。誰だ?」


「デヴィッドの腕を切り落とした男です」


「そうか。ところでおぬしはここから出たいか?」


「出れるんですか?!」


 俺が尋ねると、アズラがルイスの後ろから顔を出してそう言った。


「分からぬ。だが、俺達は今日ここに来た。そして迷った」


「ダメじゃないですか…」


「だが、おぬしらはどうだ?いつからここにいる?」


「えっと…」


「分かりません。十日ほど前に目が覚めたばかりなので。そうだ、アンドレアス王を知っていますか?」


 ルイスがいきなりそんなことを聞いてきた。

 アンドレアス王はジャビラを倒して、サヌスト王国を築いた人だ。

 気を紛らわせる為に言ったのかもしれぬな。サヌスト人なら憧れくらい抱くだろう。


「ああ。知っているぞ」


「どこにいますか?!」


 俺はエヴラールの方を見た。


「もう亡くなっています」


「だそうだ。五百年前の人が生きているわけなかろう?」


「「五百年前?!」」


 話が噛み合わぬので、一旦落ち着いて話をさせた。


 ルイスとアズラはアンドレアス王の三男と二女と言った。デヴィッドは二人の護衛だったそうだ。いや、ルイスの護衛だったが、アズラの護衛が死んだ為、兼任しているそうだ。

 ある日、ルイスとアズラが街を歩いていると、何者かに攫われたという。その時、気を失ったそうで、目を覚ましたのが、十日ほど前だと言う。


 エヴラールに聞くと、確かに同じ名の者がアンドレアス王の子供にいたらしい。だが、二人は若くして死んだとされている。権力争いに巻き込まれたと思われているそうだ。

 実際は魔王軍の残党に攫われた。そして魔王軍の残党は二人の命と引き換えに何かを要求したが、アンドレアス王は拒否し、二人は死んだ事にした。民を安心させるためだろう。


「ルイス殿下、アズラ殿下。先程のご無礼、お許しください」


 俺はそう言って頭を下げた。知らぬ事とはいえ、とんでもないことをしてしまった。


「あ、いや、良いんです。で、今はいつなんですか?」


「アンドレアス暦五百三年、五月八日でございます」


「そうですか。あなたがたは何をしにここへ?」


「とある人物を探しにまいりました」


「誰の指示ですか?」


「エジット殿下です」


「その人は知りませんが、サヌスト王国は健在なんですね?そしてあなたはその人の部下なんですね?」


「その通りです」


「名前は?」


「名乗り遅れて申し訳ありませぬ。ジル・デシャン・クロードです。人魔混成団の団長をしております」


「そうですか。ではよろしくお願いします」


「はは」


 俺はルイス殿下達を連れて歩き出した。来た道を戻り、可能ならば、結界を解除する。まあ通った時に結界を張るような魔法陣は無かったので、見つからぬだろう。

 俺はそんな事を考えていたが、祭壇の広場に来た時にルイス殿下が祭壇を見つめ、魔法陣を見つけた。

 俺は祭壇に近づき、魔法陣を観察する。


「エヴラール、アキ。御二方をお守りせよ」


「はは」


 エヴラールがルイス殿下を、アキがアズラ殿下をお守りするようだ。

 魔法陣を確認したところ、魔法陣を解除した瞬間、どこからか攻撃が来るらしい。その代わり、遺跡内の罠が全て解除される。

 まあエヴラールとアキに任せておけば、大丈夫だろう。ほかの者は戦えるので、自分の身は自分で守るだろう。


「結界を解除する!攻撃が来るかもしれぬので、注意せよ」


 俺はそう言って、結界を解除した。

 その瞬間、至る所から、矢や槍が飛んできた。俺は三本を躱したところで、槍に当たってしまった。


「主殿!」


「ジル様!」


「……」


 毒でも塗ってあったのか、体が動かしづらくなり、どんどん当たる。言葉も発せなくなった。

 攻撃が止んだ頃には、槍が三本、矢が八本の合計十一本が俺に刺さっていた。そのうち、槍一本が俺の胴体を貫通している。

 矢や槍が俺の魔力を吸収しているのか、せっかく結界を解除したのに、俺は魔法が使えぬ。アキを含めてここにいる俺の部下は回復魔法が使えぬので、外に出ねばなるまい。


「エヴラール…来た…道を戻り…外…に出よ…罠は…無い…」


「御意。ジル様、どうか生きてください」


「ああ…俺の事はアキが…運んでくれるだろ…うから御二方…はおぬしが…お守りせ…」


 俺はそこで気を失った。いや、体を動かせなくなっただけだが、俺以外は、俺が気を失ったように見えるだろう。意識はあるのに体が動かせぬ状況なのだから。


 俺が目を覚ますと、俺の部屋にいた。気を失わぬと思っていたが、失っていたようだ。

 体を起こすと、全身に激痛が走った。まああれだけの怪我を負ったのだ。痛いだけで済んで良かった。

 椅子に座ってベッドに倒れ込むようにレリアが眠っている。ファビオやアキ、アキの弟妹も同じように眠っている。心配をかけたようだ。


「あ、ジル様、お目覚めですか?」


 声がした方を見ると、サラがいた。アメリーやロアナもいた。アメリーやロアナは、机に倒れ込んで眠っている。その反対側にはウルを抱いたレノラが座っている。


「ああ」


 そう言っただけで体が痛む。念話で話せば良いか。


 喋ると痛いから、念話で話すが、おぬしらは好きにせよ。


「あ、はい」


 俺の部下は無事か?


「えっと…確認してきますので、少々お待ち下さい」


 あ、いや、分からぬなら後で良い。


「はい」


 今はいつだ?


「五月の十三日です」


 そうか。腹が減ったので、なにか持ってきてくれ。


「はい、分かりました。アメリー、ロアナ、行くよ」


「んー…」


「あ、ジル様!」


「はいはい。行くよ」


 サラはアメリーとロアナを起こし、引きずって行った。ちなみに俺のベッドに倒れ込んでいる者は一人も起きぬ。まあ五日間も眠っていたのだ。心配だったのだろう。

 レノラが気まずそうにこちらを見ている。


「あの、ジル様」


 何だ?


「ご結婚おめでとうございます」


 ああ。


「あの、この子達の世話役として、お説教をしてもいいですか?」


 あ、ああ。


「この子達はまだ幼いんです。ご両親を亡くされ、義理の兄となられたジル様まで亡くなられたら、一生心を閉ざすかも知れません」


 ああ。


「それにジル様は、ついに姫様とご結婚なさいました。これから結婚生活だという時に、夫が意識不明の重体で運ばれてきた姫様のお気持ちをお考え下さい」


 すまぬ。


「私に謝らないでください。いいですか?ジル様の命はジル様だけのものではありません。この城にいるみんなのものなんです。だから、どうか、どうか、ご自分をもっと大切になさってください。お願いします」


 ああ。次からは気をつける。


「ええ。そうなさってください」


「レノラ。もういい。よくやった」


「いえ、アシル様のお願いですから」


 アシルが部屋の奥からでてきた。


 アシル、どういうことだ?


「ああ、兄上が調子に乗って先走るから、レノラに叱ってもらおうと思ってな」


 なぜレノラなのだ?


「まず一つ。レノラは兄上の部下だから。そして二つ目、レノラは子供と一緒にいるから、叱るのが上手いと思ったからだ」


 アシルが言うには、部下に叱られるのが一番効くらしい。

 そして俺の部下の中でアシルから見て、叱るのが上手なのがレノラだったという訳らしい。

 レンカなども叱るのは上手そうだが、レノラにしたらしい。まあレンカとアシルが喋っているのを見たことがない。つまり喋った事があるレノラにしたということらしい。

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