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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第96話

 とりあえず進むことにした俺達は、俺を先頭に歩き出す。その後ろにアキ、エヴラール、十三人の騎士と続いている。松明を持つのはエヴラールと二人の騎士だ。俺やアキは夜目が利くので大丈夫だ。


 しばらく階段を下ったところで、何らかの儀式を行う為の祭壇がある広場にたどり着いた。ここで休憩することにした。


「主殿、あの上になにか乗っているぞ」


 アキが指さした方を見ると、祭壇の近くの机の上になにか置いてあった。ちなみに、アキはすっかり元気を取り戻している。歩いているうちに忘れたのだろうか。

 アキがそのなにかをジャビラ刀に刺して持ってきた。アキのジャビラ刀が刺しているのは、腕のようなものである。黒く変色し、もはや腕とは呼べぬ。


「主殿、なんだこれ?」


「分からぬ。人の腕だろうが、腐っている」


「うわ、臭い。おいエヴラール、匂いを嗅いでみろ」


 アキが匂いを嗅いで、エヴラールの前に腕らしきものを置いた。

 エヴラールは腕の匂いを嗅ぐと、顔を顰めた。


「毒…です。それもかなり強力な毒です」


「毒手ということですか?」


 連れてきた騎士の一人がそう言った。毒手とはなんだろうか。


「エヴラール、毒手と言うのはなんだ?」


「体に毒を取り込み、その毒で他者を殺すもの、とされています。ですが、それは使い手達が流した説で、本当は暗器を使って殺害をするらしいです」


「説が本当ということか?」


「そうかもしれません」


 もしそうであれば、敵は全身毒の塊である。一切触れられぬし、返り血も避けねばならぬ。気をつけるとしよう。まあ片腕では相手にならぬだろう。


「まあ分からぬ事を言っても何にもならぬ。進むぞ」


 俺はそう言って立ち上がり、出口を探した。


「どこだ?」


 出口が見つからぬ。入ってきた場所もどこか分からぬ。見事に敵の術に嵌ったな。


「主殿、あそこだ。あそこの壁が薄い」


 俺はアキが言った場所へ向かい、そこを殴った。石でできた壁だったので、俺の拳も痛むが、壁は砕けた。すると道が出てきた。


「アキ、他はないか?」


「あそこも薄い。あっちもだ」


 俺はアキが言った場所を全て殴り、壁を砕いた。合計八つの道ができた。


「おい、あっちから声がするぞ」


「何?」


「冗談を言っている時じゃないぞ」


 連れてきた騎士達がなにやら言っている。俺はその騎士の方へ行き、耳をすませたが、何も聞こえぬ。


「おぬし、声が聞こえるのか?」


「あ、はい。昔から人より耳が良くて…」


「そうか。なんと言っている?」


「いや、そこまでは…ただ二人の声がします。あ、いや、三人です」


「行ってみるか」


 この騎士が嘘を言っている可能性もあるが、嘘を言っても得は無いはずだ。それに嘘であっても良い。どうせどこに進めば良いのか分からぬのだ。

 俺はこの騎士、ロランから話を聞きながら進んだ。まあ特に新しい情報は無いらしい。


「止まれ」


 ロランが言った道をしばらく進むと、血痕を見つけた。それなりに新しい。

 辺りを探すと、ちぎれた鎖の破片ようなものが落ちている。


「主殿、ここの壁が薄い」


 俺はアキが言った場所を殴り、穴を開けた。


「これは…何だ?」


「暗くて見えんぞ」


「おい、松明をよこせ」


 四人の騎士が先に進んでしまった。俺は何も指示しておらぬが先に行ってしまった。

 ムサシの術のようなものなのか。確かムサシの術は戦闘欲をくすぐるものだと聞いた。これは引き寄せられるような術か?


「おい、止まれ。ジル様のご命令を待て!」


 エヴラールが呼び止めるが行ってしまった。


「俺達も追うぞ」


 俺達も四人の騎士を追って進んだ。


「団長、声が近づいています」


「そうか」


 ロランが俺に近づいてきてそう言った。


「止まれ!」


 俺は先走りした四人の騎士に向けて叫んだ。何か不吉な予感がしたが、何も無いか。

 四人の騎士は止まったらしいが、四人の騎士の持つ松明の火が消えた。


「行くぞ」


 俺は念の為に剣を抜いて走った。

 何かが飛んできたので、俺は反射的に受け取った。先走った四人のうちの一人の生首だ。


「火矢を撃て」


 俺の言葉で弓矢を持っていた騎士が火矢を撃った。その光に照らされて一人の影が見えた。そしてその影の足下には四人の亡骸があった。四人とも殺られたか。


「アイツ!昨日のアイツだ!」


 アキがそう言って走って向かった。俺も走ってアキに追いついた。


「ダークエルフか?」


「そうだ。ワタシの獲物を横取りしたヤツだ」


「俺に合わせろ」


 俺はそれだけ言うとダークエルフに斬りかかった。ダークエルフは面倒そうに俺の剣を受け止めた。


「今だったら見逃すけど」


「部下を殺られて黙っている俺ではない」


「あっそ。じゃあ死んで」


 ダークエルフはゆったり話すが、その剣は言葉とは違い、速い。速さなら俺より速い。


「ロラン!声の主はコイツか?」


「違います!声の主は、し、死にかけです!」


「おぬしらはそちらに行け!コイツは俺とアキが相手する!エヴラール、そちらは任せた!」


「御意!」


 俺は指示を出しながらもダークエルフと切り結ぶ。エヴラール達は違う方向へ走り出した。エヴラール達が松明を持っていったので、真っ暗になった。


「盗っ人め!死ね!」


 アキがダークエルフの後ろに回りこみ、ダークエルフの頭にジャビラ刀を突き刺した。右目からジャビラ刀の刃先が突き出た。


「何?」


 ダークエルフは頭を突き刺されても死なぬのか。先程と変わらぬ速さで剣を振るう。

 アキが刀を振り下ろし、右目から左肩まで斬り裂き、首が胴と離れてもまだ動く。


「主殿、こいつは魔法人形だっ!ワタシが術者を探して来る!」


 アキがそう言って離れて行った。魔法人形がアキを追おうとするが、俺が取り押さえた。速さでは勝てぬが、力では勝てる。

 俺は魔法人形の背中に乗り、まだ完全に切り離されていなかった首と手足を斬って遠くへ投げた。足が硬かったようで、壁にめり込んだ。頑丈な体をしているな。


「貴様、死ね」


 魔法人形がそう呟くと、魔法人形が有する魔力が暴走し始めた。頭は遠くへ投げたはずだが、口で喋っているのでは無いのか。

 俺は魔法人形の自爆でこの遺跡が崩れぬように、胴体だけとなった魔法人形に覆いかぶさった。


 俺の体に何かが当たったので、そちらを見ると頭が飛んできていた。この状態で治るのか。魔法人形は丈夫だな。

 魔法人形の左目は赤く光っている。が、数瞬後、光が消えた。体の方を見ると、魔力が失われている。


「主殿、待たせたな」


 アキが戻ってきた。その手には、ダークエルフの生首がある。仕事が早いな。


「アキ、良くやった。階段の件は忘れてやろう」


「本当か!?さすが主殿だ!」


 アキが抱きついてきた。が、俺は魔法人形を身代わりにしてエヴラール達が進んだ方へ歩き出す。


「わぁ!なんだこれ!」


 しばらく抱いてようやく気づいたようだ。アキが生首を持ってこちらに走ってきた。


「アキ、生首(それ)は置いて行け。片手が塞がる」


「ワタシは片手でも戦える!」


「気色悪い。気味が悪い。不吉だ」


「むぅ…」


 アキは渋々といった感じで生首を投げた。その瞬間、生首と目が合ってしまった。とても老いていた。エルフは見た目は若い頃のままだそうだが、ダークエルフは見た目も老いるのか。男か女か分からぬが、厄介な奴であった。


 しばらく歩くと、エヴラール達と三人が睨み合っていた。


「エヴラール、状況は?」


「救助しようとしたところ、隻腕の戦士が邪魔をして、近づけません」


「助けに来た、と言ったのか?」


「それが、唸ってばかりで話せません」


「そうか。俺が出よう」


 俺はエヴラール達の前に出た。


「そこの二人を護っているのか?」


「ヴゥゥー」


「そうか。だが、その二人は怪我をしているでは無いか。治療してやろう」


「ヴゥゥー」


「デヴィッド、退いてくれ」


 後ろにいた少年が隻腕の男に話しかけると、素直に退いた。言葉がわからぬ訳では無いのか。


「あなたがこの人達のボスってことはわかります。でもあなたが敵ではないか、我々には分かりません」


「そうだな。少し待ってくれ。敵ではないと証明する」


「そうですか」


 俺はしばし、考えた。名案を思いついた。


「アキ、先程のダークエルフの首と魔法人形を持ってきてくれ。魔法人形の方は全身だ。三人ほど連れて行け」


「だから言ったのだ」


「そうだな。行ってくれ」


 アキは怒りながらではあるが、三人の騎士と共に、戻って行った。


 俺達は隻腕の戦士たちから離れて待つことにした。

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