表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/560

第95話

「よろしければ、内容をお教え願えませんか?」


 俺が手紙を読んで笑みを浮かべていると、ドニスがそう尋ねてきた。


「アシルからだ。殿下への報告は任せろとの事だ」


「そうでしたか」


「ああ。そう言えば、ジェローム卿やジュスト殿は何をしているのだ?」


「ジェローム卿は両軍の損害の確認を、ジュスト卿は一万騎を率いてアルフレッド王太子の捜索をしております」


 エヴラールはそう言って駒を動かした。俺には分からぬが、置き方や動かし方が決まっているらしい。


「俺も何かせねばならぬな。何かあるか?」


「そうですな…ジュスト卿の手伝いなどはどうでしょう?」


「そうだな。殿下に許可を頂こう」


 俺はそう言って部屋を出た。ドニスやエヴラール、キイチロウ、アキがついて来る。

 俺は殿下にお貸ししている部屋まで来た。すると扉が開いた。アシルが開けたようだ。


「ジル卿、ついに結婚したようだな。おめでとう」


「ありがとうございます」


 部屋に入ると、殿下に祝われたので返事をした。アシルは黙って見ている。


「で、何か用があって来たのだろう?」


「は。私の麾下二千騎を率いてアルフレッド王子の捜索の為、出陣のご許可をいただきたく存じます」


「ジル卿、ジュストに任せておけば大丈夫だ」


「ですが、昨日アルフレッド王子を逃がした責任の一端は私にあります」


「そういう事なら好きにしてくれて構わない。ジュストと協力して探してくれ」


「はは」


 俺は殿下に一礼をして、退室した。


「では行くか。ドニス、キイチロウ、準備をしてくれ。騎兵のみで行く」


「「御意」」


 俺が指示を出すとすぐに行った。ちなみに昨日、怪我を負った者は、たとえ軽傷であっても、大事をとって休んでもらう為、二千騎だ。まあ二千騎というのは凡その数なので多少の誤差くらいはあるだろう。


 俺はエヴラールとアキを伴って、急がずに進む。急いでも準備中だろうし、慌てさせるのは悪い。


 練兵場まで来ると、皆が準備をしていた。ここにいるのは、俺の部下のみである。さすがに戦の翌日に鍛錬はせぬ。


「私も馬を連れて参ります」


 エヴラールがそう言って離れて行った。

 俺はヌーヴェルを喚び、乗る。


「シュン!シューン!」


 アキが呼ぶとシュンが来た。アキはシュンに乗り、こちらを見た。何か言って欲しそうだが、俺は何も言わぬ。


「ジル様、準備が出来たようです」


 エヴラールが戻ってきて、俺にそう告げた。


「行くか」


 俺はそう言ってジュスト殿がいると聞いた方へ向かう。まあ一万騎いると聞いたので、方角さえ合っていれば、分かるだろう。


 ジュスト殿がいるであろう軍営が見えてきた。幕舎がいくつか並んでいる。夜はラポーニヤ城に戻って休めば良いので、そう多くは無い。


 俺達は急ぐこと無く進む。俺の軍旗を掲げているので、国王軍の残党とは思わぬだろう。


「ジュスト殿はいるか?」


「は!こちらでございます」


 俺達を迎えに来たであろう騎士にジュスト殿の場所を聞くと、案内してくれた。俺はこの騎士が誰か知らぬが、この騎士は俺の顔を知っているようだ。


「ジュスト様、ジル様がいらっしゃいました」


 案内してくれた騎士がジュスト殿に声をかけると、ジュスト殿の周りの騎士がこちらを振り向いた。


「ジュスト殿、微力ながら協力させてもらおう」


「それはありがたい。早速だが、協力してもらおう」


 俺はジュスト殿と一緒に幕舎に入った。ここで作戦会議をしているようだ。


「この辺りはもう探した。今はこの辺りを探している。ジル卿は何騎程、連れてきた?」


 ジュスト殿は地図を指しながら、俺に説明してくれた。


「多少の誤差はあるかもしれぬが、二千騎だ」


「分かった。ならジル卿はこの辺りを頼む」


「分かった。ジュスト殿はどこに行くのだ?」


「俺はここで報告待ちだ。俺も行きたいが、王太子殿下が見つかったら対応しなくてはならんからな。ジル卿は気にせずに行ってくれ」


「ああ。俺は戦場でこそ、武勇を発揮できる」


「街中では誰も武勇を発揮できんぞ。衛兵が来て捕まる」


「ああ、そうか」


「まあそういうことだから頼んだ」


「任せてくれ。あ、それと俺は昼頃には一度、城へ戻るが、兵は残していくからもし何かあったら頼む」


「分かった」


 俺は幕舎を出て、ドニスとキイチロウに指示を出す。

 五十騎ずつに分かれ、探すこととなった。その結果、四十四組ができて、三十八騎が残ったので、その三十八騎は俺が連れていくことになった。


「では行くか」


 俺は三十八騎にそう告げて、走り出す。いや、エヴラールとアキを合わせたら、四十騎か。


「アキ、昨日、アルフレッドを最後に見たのはどこだ?」


「こっちだ。ついてこい」


 俺はアキの案内で、進む。ジュスト殿に任された場所とは違うが、まあ良いだろう。それに魔法を使えぬ者では見落としがあるかもしれぬ。


「ここだ。ここでワタシが王太子の左腕を斬り飛ばした」


 森の近くに着いたところで、アキがそう言った。


「そうか」


 俺はそう言いながらヌーヴェルから降り、地面を調べる。天眼を使ってアキと王太子以外の魔力の痕跡を探る。ダークエルフはジャビラに無理矢理強化されたと聞いたので、魔力は多いはずだ。ならば、痕跡も残りやすいはずだ。


「こちらだ」


 俺はヌーヴェルに乗り、森の中へ駆け出す。かなりの魔力の持ち主が数名、走った跡がある。


「これは…」


 しばらく走った所で、巨大なクレーターを見つけた。


「周囲を警戒せよ」


 俺はそう言ってヌーヴェルから降りた。追われることを想定し、カモフラージュの為にクレーターを作ったのか。

 クレーターの中心で馬が死んでいた。馬の首や足しか残っておらぬ。おそらく胴体にかなりの攻撃を受け、胴体は跡形も無く消滅したのだろう。

 俺は片膝をつき、手を合わせた。


「主殿…」


 隣にアキがやってきて、手を合わせた。


「王太子の馬だろうな」


 俺はそう言って立ち上がり、天眼を使って周囲を探る。三方向に散って逃げたようだ。


「行くぞ。警戒を怠るな」


 俺はヌーヴェルに乗り、魔力の痕跡がいちばん強い方へ進む。


「主殿、アレを見ろ」


 しばらく走るとアキが俺にそう言った。

 アキが指さした方を見ると遺跡のようなものがあった。石でできた地下へ続く階段だ。ひと一人が腕を広げて歩けるくらいの広さしかない。

 入口には魔法陣がいくつか描かれている。どれも結界だ。

 周囲を見ると、二方向から魔力の痕跡が合流している。おそらく先程、追わなかった方だろう。


「十騎ほど報告へ戻れ。ジュスト殿に『遺跡らしきものを見つけた。結界を解除し、突入する』と伝えてくれ。そしてジュスト殿の指示を仰ぎ、その指示に従え。出来れば援軍を出してもらいたい」


「御意。では我らが」


「ああ、任せた。襲われても戦うな。逃げろ。一角獣(ユニコーン)の足ならば、逃げ切れるはずだ」


「御意」


 十騎が来た道を戻って行った。十騎もいれば、大丈夫だろう。


「ジル様、こちらはどうしますか?」


「突入するが、結界を解除するから少し待て。馬から降りて休憩していろ。だが、警戒を怠るな」


「はは」


 俺がそう言うと皆が馬から降りて、警戒を始めた。

 俺は結界を一つずつ解除していく。破壊すると爆発するものばかりなので、解除せねばならぬ。


「主殿、ワタシに教えてくれ」


「何をだ?」


「解除の方法だ」


「簡単だ。術者の魔力を解析し、その魔力に限りなく似せた魔力を使って解除する。解除は自分が張った結界を解除するのと同じ手順だ。まあ見た方がわかりやすいだろう」


 俺はそう言いながら結界を解除した。

 魔力は人によって違う。濃度や温度、色など魔力にも個性がある。同じ魔力を持つ者は存在せぬ。双子などは似ることもあるが、それでも僅かに違う。ちなみに温度や色などは俺の感覚だが、魔法など感覚でするものなので良いだろう。


 俺は全ての結界を解除した。魔法陣が見えぬものもあったが、大丈夫なはずだ。


「解除した。行くぞ。見張りに十騎ほどを残して行く。見張りはジュスト殿の援軍が来たら、俺達が突入したことを伝えてくれ」


「はは」


 俺がそう言うと十騎が馬に乗った。


「馬だと後退ができぬゆえ、徒歩で行く。一角獣(ユニコーン)は俺の異空間に入れ」


 俺はそう言って魔法陣を描いた。ヌーヴェルが入ると他の一角獣(ユニコーン)も続いた。


「行くぞ」


 全ての一角獣(ユニコーン)が入ったのを確認し、俺を先頭に遺跡へ入る。


「階段は一段おきに罠になっている。俺が踏んだ所以外は踏むな」


 俺はそう警告した。


「ああ、適当にこれを使え」


 俺は松明を三本取り出し、後ろにまわした。どうやらこの遺跡は内から外へ風が吹いているようなので大丈夫だろう。


「あ」


 アキがそう言った瞬間、どこからか石が擦れるような音が聞こえた。罠の段を踏んだのだろう。


「戻れる者は戻れ!退路を絶たれる!」


 俺がそう叫んだ瞬間、入口が塞がれた。逃げれたのは五人ほどだった。俺を含めて十六人残った。


「主殿、すまん…」


 アキが申し訳なさそうに俺に謝った。だが、今はそんなことを言っている暇はない。


「今は怒らぬ。後で怒る」


「ジル様、進みますか?それとも壁の破壊を待ちますか?」


 エヴラールが冷静にそう尋ねてきた。


 閉じ込められた瞬間、この遺跡内に反魔法結界が張られた。通常、反魔法結界を内側から破壊するにはかなりの魔力が必要だ。破壊することは出来るが、俺以外は結界と一緒に吹き飛んで死ぬ。もしかするとアキは生き残るかもしれぬが、それ以外は確実に死ぬ。

 つまり壁の破壊には時間がかかる。


 残された選択肢はエヴラールが言った二つ。

 この遺跡内は内から外へ風が吹いていた。もしかすると近くに通気口かなにかあるかもしれぬ。


「ここは内から外へ風が吹いている。ということはどこかに繋がっているかもしれぬ。進むぞ」


「「「はは」」」


 アキ以外の皆がそう言った。アキはしょんぼりしたままだ。

 早くここから出ねばならぬな。レリアとの昼食に間に合わぬ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ