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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第85話

 もちろん疑うのは当然の事だが、ここにいる三人を貶されたようで少しイラッとした。


「信用できます。少なくとも兵士達はここにいる三名を信頼しており、私はこの三名を信頼しております」


 俺はそう言ってやった。


「ワタシ、必ず、裏切る、しない」


 アキもカタコトながらそう言った。グレン達に作らせた本で学び、少しだけ話せるようになったのだ。もちろん早口で言われると理解出来ぬようなので通訳に聞いてから反論していた。


「少なくともジル様は裏切らない、と申しております」


 アキは更に通訳のフローランにそう言ってもらっていた。


 そもそもここにいる時点で魔王語(ヤマトワ語)をある程度は話せなくてはならぬはずなのだ。もちろん最近集められた者は仕方ないが、ずっと軍にいてここにいるくらい出世したなら、ある程度は話せなくてはならぬ。他国との交渉や接待などが必要だからである。


 まあサヌストの会議なので別に良いが。


「信じられませんな。だいたい…」


「私は使徒であるジル卿の言葉を信じます」


 アンセルム卿が部下の言葉を遮ってそう言ってくれた。


「アンセルム卿、そう言って頂けるとありがたい」


 俺はアンセルム卿に礼を言っておいた。まあ言わなくとも気にするような人ではないだろうが。


「ジル卿、ジェローム卿、アンセルム卿、ジュスト卿。一度、演習をしてみてはどうだ?」


「「「御意」」」


 殿下の提案で会議の後は演習をすることになった。


「ご報告!」


 扉を開けた兵士がそう叫んだ。


「ここより南方二十メルタルに偵察隊と思しき先遣隊あり!歩兵が約三千!」


 室内の空気が一気に変わった。まあそれはそうだろう。


「殿下、いかが致しましょうか?」


「ジル卿、ヤマトワから連れ帰った兵士は何人だった?」


「五百の騎兵と二千五百の歩兵でございます」


「ちょうど三千か。ジル卿、頼めるか?」


「は。全滅させてもよろしいでしょうか?」


「出来れば捕虜にしてやってくれ。今は敵でも我が国の民だ」


「御意」


 俺は殿下の命令で出陣することとなった。反対している者もいるようだが、ジェローム卿とアンセルム卿の部下から一人ずつ監察官として預かることで引っ込んだ。


 キイチロウとリョウが出て行き、俺もエヴラールとアキを伴って城外へ出た。幸い、ヤマトワからの兵士達はいつでも戦える状態だったので指示を出したらすぐに集まった。


 俺はヌーヴェルに飛び乗り、城壁を見上げた。城壁上から殿下方が見守っていたので俺は一礼してから駆け出した。


「リョウ、おぬしはこのまま正面から突撃せよ!エヴラールは念の為にリョウについて案内をしてやれ。それと今回はなるべく殺すな。捕虜にしろ」


「ん。了解」


「御意」


 リョウにはヤマトワ語で指示を出したが、サヌスト語で返事をしてくれた。習得しようとしてくれいている証拠だ。ちなみに、魔法歩兵隊は魔法で脚力を強化することで、全力を出せば馬くらいの速さで走れる。


「キイチロウ達は俺についてこい」


 俺はそう言って南東に向かって駆け出した。回り込んで挟み撃ちにするのだ。魔法歩兵隊の攻撃に遅れぬように更にスピードをあげる。赤子とは言え、(ドラゴン)だ。馬より速い。


「ジル様、監察官が遅れていますが」


「知らぬ。見張りに気を使って、敵を取り逃がすわけにはいかぬ」


「はは」


「だが可哀想だから二人だけ護衛を残してやれ」


「御意」


 キイチロウが手を挙げて指示を出すと二人が隊列から離れ、監察官と合流した。面倒だな。

 監察官は、俺達が二手に分かれたので、二手に分かれたのだろう。大人しくリョウ達について行けば、遅れることはなかっただろうに。


「主殿、足でまといなど見捨てたらどうだ?」


「いや、足でまといでもそれなりの身分だ。死ねば更に面倒な事になるだろう」


「そういうものか」


 アキは意外と薄情であった。いや、前から弱者の為に動くのを嫌っていたか。

 リョウ達が国王軍先遣隊と接触したのだろう。微かに剣戟の音が鳴っている。


「主殿、ワタシが切り込もう!」


 アキがそう言って単騎で突撃した。とは言え、まだ距離がある。

 アキはシュンに乗っているので、赤子の(ドラゴン)に乗っている他の魔法騎兵より速い。ちなみにゴンは水氷龍攻撃隊に選ばれ、水氷龍に殺されたらしい。


「キイチロウ、なるべく速くな」


「御意」


 俺はキイチロウにそう言い残してアキに追いついた。さすがに走ることに長けた一角獣(ユニコーン)の方が(ドラゴン)より速い。


「一人で行くな。一人だと手加減できぬだろう?」


「知らん!主殿と敵対した者は降伏か死以外に選択肢はないのだろう?」


「ああ。だから今回は降伏させる。殿下のご命令だ」


「ワタシは殺すぞ」


 ようやく近づいてきた。どうやら敵は軽装備なようで突然の突撃に動揺し、逃げ惑っている。普通、こういう場合は散り散りになって調べるものだが。知恵があるとは思えぬ上、体も貧相な者が多い。奴隷兵か?

 俺は弓を取り出し、矢をつがえる。


「弓っ?!」


 アキが驚いているが無視である。


「足だけで馬を操っているのか。すごいな」


 俺はヌーヴェルを操ってはおらぬ。ヌーヴェルは念話を応用して、俺がどこをどう走って欲しいのかを読み取り、その通りに走るのだ。俺は振り落とされぬように、それっぽく手綱を握るだけなので足だけでも大丈夫なのだ。


 俺は矢を三本同時に放った。先頭を走っていた者たちの膝に命中した。苦しんではいるが、死ぬよりマシだろう。


 俺とアキは敵中に突入した。

 俺は弓を剣に持ち替え、すれ違いざまに一人を浅く斬った。俺の隣でアキは薙刀で首を刎ねていた。ちなみにこの薙刀は俺が新しく買ってやったのだ。


「アキ、殺すな!」


「敵には同情せんっ!」


「アキは捕虜も捕えられぬのか。敵を生け捕りにも出来ぬ者がサムライと名乗って良いものなのか?」


 俺はアキにそう言ってやった。おそらくそう言えば、『そんなこと簡単だ!』と言って殺さぬようになるだろう。


「そ、そんなこと簡単だ!」


 やはりな。アキは薙刀の石突で敵の鳩尾を突いていた。


「突撃!」


 キイチロウ率いる魔法騎兵隊が俺達に追いついた。

 その後、改めて総攻撃を仕掛けると、ちらほら命を落とす者もいたが、ほとんど捕虜にできた。


「リョウ!」


「ジル様!」


 敵中突破をしたリョウ達と合流した。


「キイチロウ、逃がした者を追え!一人も逃がすな」


「御意」


 キイチロウは百騎ほどを率いて逃げた者共を追いかけた。


「リョウ、こいつらを拘束しろ」


「ん。了解」


 リョウとその部下達が次々と拘束している。その時、俺達についてこようとしていた監察官が追いついた。遅いな。


「ジル卿、先走っては困る」


「先走る?何を言っているのだ?」


 自分が遅れただけだろうに。こういう輩は何をしても文句を言う。


「単騎で突撃したであろう?」


「ああ。あれは作戦だ」


「ほう」


「敵が『なんだ、統率が取れておらぬ部隊か。相手にならぬ』と油断してくれれば良い。しなくても負けることは無い」


 別にそんなことは考えておらぬが。俺はいつもそうだ。戦は適当にやって、作戦など後付けだ。


「なぜそんなことを言い切れる?」


「俺は負け戦はせぬ。それだけだ」


 監察官は呆れたようにもう一人の監察官の所へ向かった。


「主殿、ワタシにそんなつもりは無いぞ」


「アキの性格を考えてのことだ」


 まさかアキにそう言われるとは思わなかった。まあ適当に言っておけば良い。


「拘束、できた」


 リョウからの報告があった。魔法で拘束したようである。魔法が発達したヤマトワの兵士ならではだな。俺は魔法で拘束など思いつかぬ。縄を創るくらいなら思いつくが。


「ジル様、戻りました」


 キイチロウ達も戻ってきた。


「帰るか」


「「「御意」」」


 俺達は拘束した兵を連れて帰った。


 今回の奇襲ではこちらには死者は出ておらぬ。かすり傷などの軽傷者はいるが、まあ上出来だろう。国王軍先遣隊の方は死者三十余名、捕虜は約三千人だ。死者三十余名のほとんどは指揮官として従軍していたサヌスト騎士だ。最期まで抵抗したので殺害したらしい。


「ジル卿、お見事」


「はは。お褒めに預かり光栄です」


 入城する際、殿下に褒められたのでそう言っておいた。


「ふん。戦略も何もあったものか。ただぶつかり合って強い方が勝っただけではないか」


 そう呟いたのはアンセルム卿の部下である。最後まで文句を言い続けたあの男だ。


「おぬし、名はなんと言う?」


 俺はその男の方を見て、そう尋ねた。皆の視線がその男に集中した。


「トメルだ」


「トメル殿。敵より強い兵を用意するのも戦略の一つだ」


 俺はそれだけ言って入城した。少々格好つけすぎたな。

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