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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第82話

 タカミツの背に乗ろうとしたところでかなりの気配を後ろから感じた。アキなど顔が青くなっている。シン達にも緊張が走っている。


「水氷龍か。久しいの」


「その名で呼ばないで。妾の名はミオリよ。ミオリと呼びなさい」


 タカミツがその気配に向けてそう言った。振り向くと水色の龍がいた。称号から察するに水魔法を使う龍なのだろう。


「そうじゃったの。ところでミオリは何をしに来たのじゃ?」


「火炎龍めを氷漬けにしようかと思ったのだけど、そこの魔天使族に先を越されたようね」


 タカミツが人化し、尋ねると、ミオリも人化して答えた。美しいは美しいが、怖いな。周りを凍てつかせるかのような雰囲気がある。

 それにしても俺の種族を当てるとは恐ろしいな。


「そこの魔天使族、名乗りなさい」


「ジル・デシャン・クロードだ。ジルと呼んでくれ」


「そう。ムサシを従魔にしたのね」


「火炎龍を倒したいのか?」


「ふふふふふ」


 俺がそう尋ねるとミオリはなぜか笑いだした。


「倒したい?なぜ?まさか妾がムサシの術に嵌ったとでも言いたいのかしら?」


「ムサシの術?」


「知らないの?なら教えてあげる。ムサシはね、この火山の炎に術をかけているのよ。相手を全力でねじ伏せたくなるような術を」


「そうか」


 魔法は使わぬと決めていたのに使っていたのはそのせいか。


「あら?興味無さそうね。まあいいわ。ところでジルはこの山をどうするのかしら?」


「どうする、とは?」


「支配者がいない場所は荒れるのよ。だから人間が管理しきれない場所を龍が管理しているの。この山もそうよ。あんなトカゲでも、一応はここの支配者だったのよ」


「そうだな…俺はどうせこの国を出るからおぬしらで話し合ってくれ」


「分かったわ。それじゃあ、うちの若い子達に管理させるわね」


「そうか」


 ミオリは龍の姿になり、高く飛んだ。かと思うと口から冷気を出してこの山を凍らせて、氷山のようにしてしまった。俺達がいた場所はタカミツが結界を張っていたので凍っておらぬ。


「ジル、妾よりも強くなったら妾も従魔になってあげなくもないわ。せいぜい頑張りなさい」


 ミオリはそう言い残して飛び去って行った。その背中に鑑定魔法を使ったが俺よりも魔力が多かった。


「ジル殿、ミオリの事など忘れて、シガマトン城に行こうぞ」


「そうだな」


「ワシの背中に乗って行くのか?それとも火炎龍の背中に乗って行くのか?」


「せっかくだからムサシの背に乗っていこう」


 俺はムサシを喚び出した。


「俺を背中に乗せて行け」


「マロにおまかせ。ところでシガマトン城はどこだ?」


「タカミツ殿について行け」


 俺はそう言ってムサシの背中に乗った。後ろにクラウディウスが乗り、前にアキが乗った。


「主殿、ワタシが操縦してやろう」


「任せた」


 タカミツが飛ぶとタカミツの配下の(ドラゴン)も飛んだ。それに続いてムサシも飛んだ。


「ジル様、鎧を脱いでおいた方が良いぞ」


「そうしよう」


 俺はクラウディウスの言う通りに鎧を脱ぎ、和服に戻った。もちろん上は包帯のみだ。


「ここからは徒歩で行くのじゃ」


 しばらく飛ぶと街の近くで着陸した。街中に(ドラゴン)の大群と龍二柱がいきなり来たら驚くだろう、と言うタカミツの配慮だ。数は赤子や若者も集まってきたので二百五十ほどいる。

 ちなみに魔法騎兵隊の(ドラゴン)は赤子である。赤子が多いのには理由がある。先程、火炎龍がタカミツ達を配下に襲わせたように、龍同士の抗争によって命を失うことが多い。なので長く生きた個体は少なく、強いのだ。


「お師匠様!」


 しばらく歩いたところでリンタロウが騎馬隊を引き連れて迎えに来た。先に連絡を入れていたらしい。


「火炎龍ムサシ様を倒されたとの事ですが」


「うむ、ジル殿の従魔となった。ワシでは火炎龍を従魔にすることは出来んが、ジル殿なら出来るからの」


「ジル殿の?」


「うむ」


 タカミツが俺の方を見たので俺も前に出る。


「火炎龍と言っても大したことはなかった。タカミツ殿の方が強い」


「ジル殿、お怪我を?」


「これはタカミツ殿と手合わせした時に負った傷だ。完治している」


「そうですか」


 俺の傷が完治していると聞いたリンタロウは再びタカミツと話し始めた。昨日会ったばかりの俺より、旧知の仲であるタカミツと話したいのだろう。

 両側を騎馬隊に守られながら、俺達は歩き出した。


「主殿、そういえば、今日中に帰ってきたな」


「そうだな」


 アキに言われて思い出したが、アシルに帰りは明日以降になるとアキが連絡していた。別に何も無いが。


「ワタシの見立てでは明日までかかるはずだったのだ」


「そうか」


「いつも火炎龍達と戦う時は三日ほどかけて戦うのだ」


「タカミツ殿がその気になれば、コヤツなど一撃だろう?」


 俺はそう言って火炎龍の肩に手を回した。


「防御に徹されれば、爺様でも一撃では倒せん」


「そうか。ところで水氷龍が怖いのか?」


「水氷龍は今生きている龍の中で三番目に強い。ワタシなど足元にも及ばん」


「それだけ長生きしているということか?」


「そうだ。あのババア、爺様の十倍は生きているぞ」


 アキがそう言った瞬間、短剣の形をした氷が目にもとまらぬ速さでアキ目掛けて飛んできた。俺は剣を抜いてそれを両断した。


「攻撃か!」


「迎撃態勢!」


 騎馬隊が槍を構え、周囲を警戒する。


「アキ、大丈夫か?」


「だ、大丈夫だ」

 

 俺がアキの無事を確認すると、タカミツが近づいてきた。


「アキ、ミオリの悪口は言ってはならんぞい。どれだけ離れていようとミオリには関係ない。で、なんと言ったのじゃ?」


「…」


「次も防いでやろう」


「あのババア、爺様の十倍は生きているぞ」


 アキがそう言うとまた短剣が飛んできたので両断した。


「それは禁句じゃ。ミオリは年齢のことを言われると怒る」


「そ、そうなのか?」


「ミオリババア」


 タカミツがそう言うと再び短剣が飛んできた。今度はタカミツが雷魔法で撃ち落としていた。


「ほれ」


 タカミツの言う通りであった。ミオリがどこにいるか知らぬが、離れた場所から自分の悪口を聞き取り、ピンポイントで狙うのは、まあ難しい。と言うよりも聞こえるのがすごいな。かなり地獄耳である。


 その後、シガマトン城へ戻った。

 俺は一度、与えられた私室に戻った。


「あ、ジル。おかえり」


「ただいま。早速だが包帯を取って服を直してくれ」


「うん、わかった」


 レリアがいたので服を直してもらう。ちなみにファビオはいない。


「明日になるって言ってたけど」


「ああ。アキが勝手に連絡しただけだ。その時、俺は気を失っていた」


「え?」


「ワタシのせいにするなっ!」


 勢いよく襖が開き、アキがそう言った。護衛だとか言ってついてきたのだ。部屋に入らぬ条件付きで。


「アキ、俺とレリアの時間を邪魔するな」


「むー」


「あたしは別にいいよ。アキさんから話を聞けばいいでしょ?」


「そうだな」


「失礼する」


 優しいレリアがそう言ったのでアキが入ってきた。レリアが良いなら俺も良いのだ。レリアが良ければ。


 その後、レリアとアキは仲良くなり、公私混同しないという条件で俺のそばで仕えることとなった。

 エヴラールと同じ従騎士として仕えるはずが、騎士は嫌だと拒否した。従騎士ではなくサムライとして仕える、と言っていたのでそうした。ちなみにサムライと言うのはヤマトワの戦士の中でも特に忠誠心が高い者をそう呼ぶらしい。


 そしてその夜、宴会が開かれ、朝日が昇るまで楽しんだ。(ドラゴン)達が酒豪ぞろいだったので全員と飲み比べをしていたら朝までかかった。


 と言うのがアキが語った俺の失った記憶だ。疲れている上、飲み過ぎたので前後の記憶を完全に失っていたらしい。俺はアキが部屋に入って来たところまで記憶がある。

 そして今はサヌストの暦で四月十八日らしい。


「レリアは?」


 俺は布団から出ずにアキにそう尋ねた。


「姫なら出掛けたぞ。主殿の為に果物を買いに行った」


「逆じゃないか?」


「何がだ?」


「役目だ。この街の地理に詳しいおぬしが買い物に行った方が良かったのではないか?」


「姫は昨日案内した。だいたいの場所は覚えたらしいぞ」


「さすがレリアだ」


「主殿の好みをワタシは知らん」


「そうか。レリアが帰ってきたら起こしてくれ」


 俺はそう言ってもう一度寝た。

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