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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第79話

 しばらく経った後、タカミツが戻ってきた。だが先程とは様子が違う。背中からは翼が生え、頭からは二本の角が生えている。そして何より魔力が先程とは桁違いに増えている。


「いつでも大丈夫じゃぞ」


「では早速頼もう」


「うむ」


 タカミツはそう言うと壁を蹴破って庭に出た。


「アキはどうする?ワシに乗ってくか?」


「ワタシはゴンに乗って行こう」


「あやつはまだ若い。(ドラゴン)の巣に行けば、ほかの(ドラゴン)に食われるぞい」


「ならばワタシも爺様に乗って行こう」


「そうかい」


 タカミツはそう言うと何かの魔法を使った。かと思うとその体が変化していき、龍と思われる姿になった。体は蛇に足が生えたような形で黄金に輝いている。


「グルルル」


「乗れと言っている。主殿、乗るぞ」


 タカミツが唸り声をあげるとアキがヤマトワ語に訳してくれた。俺には分からぬが龍の言語なのだろう。


「主殿、そこを踏んで乗れ。そして角を掴め」


 アキに言われた通りにタカミツに乗る。ちょうど毛が生えている所でふさふさだ。


「主殿、手を貸せ」


「ああ」

 

 俺が手を差し出すとアキが手に掴まったので引き上げる。アキは俺の後ろに乗り、俺の背中に抱きついた。


「何している?」


「こうしないと振り落とされる。主殿が手を離せば、ワタシも落ちる」


「なるほど。クラウディウス、早く乗れ」


「失礼するぞ」


 クラウディウスはどこも持たずに飛び乗った。


「グルルルル」


「準備はよいな、行こう。と言っている」


 タカミツが唸り、アキが訳すのを確認すると浮いた。シガマトン城より高く上がると一気にスピードをあげた。

 タカミツの顔の前に特殊な結界があるらしく、風などは感じない。だが振り回されるのでしっかりと角に掴まっていなければ振り落とされるだろう。

 ふと後ろを向くとクラウディウスがタカミツの背中に立ち、遠くを眺めていた。


「クラウディウス、何が見える?」


(ドラゴン)が一匹こちらに向かってくる。デカいぞ」


 俺は剣を抜こうにも両手がふさがっている。


「アキ、どうすればいい?」


「あれは爺様の下僕だ。迎えに来たのだろう」


「なるほど。味方というわけか」


 クラウディウスが言った(ドラゴン)はタカミツとすれ違うと急旋回をして隣に並び、タカミツと話している。


「アキ、何と言っている?」


「分からん。ワタシにも分からん言語だ」


 その後、しばらく飛ぶと、山頂が雲より高い山が見えてきた。その雲は黒く雷鳴が鳴り響いている。

 開けた場所に着陸すると大きめな(ドラゴン)が数十匹集まってきた。


「到着だ。降りろ」


 アキがそう言ったので俺は飛び降りた。振り向くとアキが俺めがけて飛んできたので受け止めてやった。


「「「タカミツ様、お帰りなさいませ」」」


 周りにいた全ての(ドラゴン)が人の姿になり、そう言った。


「うむ。留守の間、変わりなかったかの?」


「火炎龍の配下が侵入してきましたので全滅させました。どうやら若い個体が暴走したようで火炎龍の重鎮を問い詰めましても知らないとの事でした」


 タカミツが人の姿に戻り、尋ねたところ、(ドラゴン)のうちの一人?が代表して答えた。それにしても他の龍との派閥争いなどもあるようだ。


「ならば気にするな。教育が行き届いていないだけだ。我らが戦うまでもない。火炎龍の一族が滅びるのは時間の問題だろう」


「はは」


「いきなりだが皆に客人を紹介する。こちらはアキの新たな主、ジル・デシャン・クロード殿とその部下、クラウディウス殿だ。失礼のないようにせよ」

 

 タカミツがそう言っただけで周りにいた(ドラゴン)達はいっせいに頭を下げた。


「さて、約束は覚えておるの?」


「ああ。手合わせだったな」


「早速やろうではないか」


「ああ」


 俺は剣を取り出し、構えた。


「おい、誰か審判をせよ」


「では私奴が」


 そう言って出てきたのは先程の代表だ。代表が結界を張ると俺とタカミツ以外が結界の外に出た。


「では始めてください」


 その言葉と同時にタカミツは槍を取り出し、突いてきた。俺はそれを難なくかわし、その槍の穂先を斬り落とした。


「やるの。ちと本気を出させてもらおう」


 タカミツはそう言うと背中から翼を生やし、頭から角を生やした。それをきっかけに魔力が先程とは比べ物にならぬほど膨れ上がった。


「グルァァァ!」


 タカミツは雄叫びをあげた。俺も剣をダメにはしたくないので剣をしまい、狼の姿になった。


「そなた、人狼であったか」


「どうだろうな」


 俺達は言葉を交わし合いながら拳を突き出していた。拳同士で衝突し、少し痛い。

 俺は雷魔法を使って雷雲の雷を操り、タカミツに落とした。そうすることで少ない魔力でそれなりの威力の魔法を使える。もちろんその間も殴りあっている。


「ワシにとって雷は魔力の源。雷魔法しか扱えんなら相手にならんぞい」


「ならばこうしてやろう」


 俺はタカミツの腕を掴み、爪を突き立て、タカミツの体の中に火魔法を撃ち込んだ。


「ぐぅぅ」


 タカミツの右腕は吹っ飛び、その付け根からは血が出ている。俺はお構い無しにタカミツの胸に飛び蹴りをした。その瞬間、虎の姿になり、高く飛び上がる。ちなみに狼の姿では虎の姿に比べ、足が速くなり、虎の姿では狼の姿に比べ、跳躍力が上がる。


「人虎なのか?」


「どうだろうな」


 俺は風魔法を使い、急降下し、仰向けに倒れているタカミツの胸に着地し、その顔を三回ほど殴る。


「魔法は使わぬのか?」


「そこまで言うなら使わせてもらおう」


 そんなに言った訳では無いが魔法を使うようなので俺も眼帯を取り、魔眼の準備をする。


「行くぞい」

 

 タカミツがそう言った瞬間、雷雲から八本の稲妻が俺の体に向けて走った。俺はそれを耐え、狼の姿になり、タカミツと距離をとる。

 そして気付かれぬように土魔法で地面を脆くして地中に火魔法を撃ち込んで爆発させ、タカミツを生き埋めにした。もちろん俺も巻き込まれて生き埋めだ。

 俺は風魔法で自分の周りの瓦礫を吹き飛ばし、外に出る。

 タカミツの姿を確認できなかったので地面を土魔法で固める。


「無駄じゃ」


 上から声が聞こえたので上を見ると、下から雷が出てきたので、同等以上の威力の雷魔法で全て相殺した。


「どうやらお互い舐めておったようじゃ」


「そうだな。本気で行くか?」


「そうしよう」


 タカミツがそう言ったので俺は火魔法で結界内の温度を限界まで上げた。


「ぬりゃぁぁ!」


 俺が結界内の温度をあげている間にタカミツは魔法を使わず、右腕を再生していた。


「暑いの」


 タカミツはそう言いながらも雷のような速さで飛び回っている。俺はタカミツの折れた槍の穂先を拾い、投げた。


「ぐぁぁ」


 タカミツの左の翼を貫いたようでタカミツは地面に激突した。これでもう飛べまい。

 タカミツが立ち上がる間に、俺は地面から逆向きの氷柱をタカミツを囲むように三百本創り、全てに硬化魔法を三重に付与した。それを風魔法でタカミツごと巻き上げた。三重の硬化魔法であれば砕けまい。

 タカミツは右の翼で体を包み込み、風の流れに身を任せていた。


「くだらん!」


 タカミツはそう叫んで雷魔法を俺に撃ち込んだ。一発だけだったので対策せずにいると全身に強い衝撃が走った。立っていることが不可能なほどの衝撃が全身に走ったのだ。俺は膝をつき、回復魔法を自分に使った。それでも完治しなかったので剣を取り出し、杖にして立ち上がる。


「無駄な足掻きじゃの」


 先程と同等以上の威力の雷魔法が八本、俺に命中した。俺はもはや剣を杖にしても立っていられず、仰向けに倒れた。


「トドメじゃ」


 タカミツの口から出た雷魔法が俺の氷柱を巻き込んで俺に命中した。俺は全身血だらけになった。だがタカミツもそれは同じようで風魔法を打ち消すと倒れ込んだ。

 俺は最後の力を振り絞って座り、弓を取り出して矢をつがえた。


「トドメだ」


 俺が放った矢はうつ伏せに倒れているタカミツの翼の付け根に命中した。タカミツは呻き声をあげる体力も残っていないようだ。


「両者そこまで!勝者ジル・デシャン・クロード!」


 結界が解除され、クラウディウスとアキが俺のそばに駆け寄ってきたのを確認した。それを最後に俺の意識はなくなっていた。

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