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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第7話

 これといった戦いもなく俺達は昼は行軍、夜は鍛錬の日々を過ごした。

 そして王都を脱出してから十三日目の昼過ぎ北方守護将軍ジェロームの居城、ドリュケール城が見えてきた。


 ジュスト殿が先に行き、エジット殿下が来る事を伝えていたので将軍自ら出迎えてくれるはずだ。

 城門が開き、騎士達が出てきた。先頭にいる男は見た目の話になるが強さの中に優しさがありそうな男だ。


「ジェローム!久しぶりだ。これから世話になる」


「殿下、聞きましたぞ。使徒様のお告げによると殿下が次期国王になるということは。ですが殿下、王都を追い出されたようですな」


「ああ。父上には神の名において王位を頂きに参ると伝えた。それとこちらが此度の使徒のジル卿だ」


 やっと紹介された。今か今かと待っていたのだ。


「ジルだ。よろしく頼む。堅苦しいのは苦手だから気軽にジルって呼んでくれ」


「よろしく。私はジェロームだ。実は私も堅苦しいのが苦手でな。君とは気が合いそうだ」


「ところで俺はあなたの事をなんと呼べばいい?」


「皆からは『北方守護将軍閣下』とか『将軍』とか呼ばれているが実の所は名前で呼んで欲しいのだ。まぁ、殿()とか()とかをつけないと周りからよく思われないぞ」


「ではジェローム卿と呼ばせてもらおう」


「ああ」


 そう言ってジェローム卿と俺は握手をした。

 この人とは気が合いそうだ。


 その後アシルやオディロンも紹介されていた。


 城内に入ると『使徒様万歳』とか言われながら進んだ。多分歓迎されているんだろう。


 その後は部屋を与えられた。俺とアシルとオディロンが同じ部屋で隣にはエジット殿下の部屋がある。そしてエジット殿下の向こう、俺の二つ隣にはジェローム卿の部屋がある。まぁ、これで旗を持つ重要人物は集まっている。


 部屋に何か面白いものはないか探しているとノックがあった。

 ジュスト殿であった。


「ジル卿、殿下とジェローム将軍が呼んでいる。俺が案内しよう」


「アシル、行こう。オディロンは留守番を頼む」


 俺とアシルはジュスト殿の後ろをついて行く。会議室に行くらしい。

 ちなみにジュスト殿の部屋はエジット殿下の部屋の真正面だ。


「ここだ。情報交換と作戦会議をするらしい。殿下、ジル卿を連れて参りました」


 そう言ってジュスト殿はノックして入っていく。

 俺は奥の席、エジット殿下の隣に案内され、座った。


「これで全員揃ったな?では始めよう」


 エジット殿下の声で情報交換が始まった。と言ってもジェローム卿達からは特に無かったので俺達の事をひたすら伝えた。

 情報交換が終わると作戦会議が始まった。


「ジュストと話したんだ。西方守護将軍アンセルムは味方になるだろう、と」


「なぜそう考えるのですか?」


「確か信心深い男だと聞いていたからだ。もしかして違ったか?」


「いえ、間違っておりません。確かに信心深い男ですから。他は何かありますか?」


「大将軍アクレシスと南方守護将軍イアサントは敵になるだろう」


「それまた何故?」


「大将軍アクレシス率いる部隊はサヌスト王国軍の中でも父上のためにある部隊と言っても過言ではないから。そしてイアサントは父上から賄賂を受け取っているらしい」


「まあ、それも間違ってはいませんが少し付け加えると、アクレシス卿もとても信心深い男です。毎年、教会に多額の寄付をするほどには。そしてイアサント卿の方は南の国から来る奴隷の中から美しい女奴隷を選び、陛下に買わせているのです。それに応じる陛下も陛下ですが」


 南の国から来る奴隷というのを説明しよう。

 まずこの大陸には世界公路という大きな道がある。それはサヌスト王国を東と西に分けるような位置にある。

 サヌスト王国より南には国は一国しかない。コンツェン王国という国で国民の大多数が奴隷である。その理由はコンツェン王国のさらに南、国と呼べぬ程小さな集団がたくさんいる。いわゆる民族というものだ。そこへコンツェン王国の者が奴隷狩りに行くからだそうだ。

 俺やエジット殿下はこの世から奴隷をなくすために戦うのだ。彼らを解放するために。

 ちなみに北から何が来るかは聞いていない。行ってからのお楽しみだと。

 話が逸れた。エジット殿下たちの会話に戻ろう。


「では何故、防衛費と称すのだ?」


「防衛費?え?防衛費と称してるとは聞いたことがありませんが。その情報は誰から聞いたのですか?」


「ジュストから聞いた」


「ジュスト!後で私の部屋に一人で来い」


 ジュスト殿、終わったな。なんか酔っ払って喧嘩を売ってコテンパンにされた上司ってこの人の気がしてきた。


「は、はい」


 完全に怯えている。哀れなり。


「失礼しました、殿下」


「あ、いや、気にするな」


「ところで東方守護将軍についてはどういう見解ですか?」


「それが俺もジュストも誰がやっているか知らなくてな」


「では、説明しましょう。東方守護将軍はシルヴェストルが務めております。彼は利益のためなら仲間を裏切ったり、法を犯したり、部下を殺したり、とにかく何でもする男です。殿下の最終目標は奴隷を全て解放することでしたな?この情報を元に一度お考えください」


「味方になりそうもないな。俺がやろうとしている事の正反対だ」


「そうなのです。あともう一つ兵を率いる者をお忘れではありませんか?」


「聖堂騎士団か?」


「ええ、その通りです」


 聖堂騎士団とは教会が抱える騎士団である。聖堂騎士団とはサヌスト王国の正規軍ではなく、教会が所有する私兵集団であるらしい。その数、約五万。また聖堂騎士団に所属する者は聖騎士と呼ばれ、彼らが戦えばそれは聖戦となる。

 エジット殿下達の会話に戻ろう。


「だが、教会は今回の件については中立を貫くそうだ」


「ええ、そうでしたな。忘れておりました」


「あ!諸侯達に呼びかけ、私兵を率いて集まってもらうのだな?」


「お気づきになられましたか。その通りです」


「一旦、今回の話をまとめてくれ」


「分かりました。味方になるもしくは味方になりそうな者は私、北方守護将軍ジェローム、西方守護将軍アンセルム。敵になりそうな者は南方守護将軍イアサント、東方守護将軍シルヴェストル。そして味方にするべく背中を押す必要がある者は大将軍アクレシス、そして各地の諸侯達。以上でよろしいですかな?」


「ああ。だが、父上や兄上の直属の部下や親衛隊もいる」


「そうでしたな。では、大将軍閣下や西方守護将軍閣下、各地の諸侯達へ味方になるように密書を送っておきます」


「ああ、頼む。これで今回の会議を終わるが良いな?」


「「「は!」」」


 会議がやっと終わった。エジット殿下とジェローム卿がほとんど喋っていたので暇で暇で仕方がなかった。気付いていないと思うがジェローム卿の部下も十人以上いてこれだ。なんとまあ、会議とは暇なものだ。早く夜ご飯を食べたい。


「アシル、早く部屋に戻ろう」


「ジル殿、今から将軍達と夕食だが、食べないのか?」


「それって参加しなきゃダメ?」


「もちろんだ。さあ行くぞ」


 終わった。最初は気が会う気がしたがそんなの勘違いであった。


 地獄の会食の始まりだ。






 会食が終わった。参加してみると意外と楽しかった。美味しいご飯もいっぱい出たし、ジェローム卿も会議の時とは全然違って楽しかった。公私混同しないタイプらしい。

 ここで新事実が判明した。ジュスト殿はジェローム卿の部下でエジット殿下が王宮へ引っ越す事になる前日に解任されたらしい。そこをエジット殿下が拾い、そのままついて行ったらしい。


「どうだ。楽しかったであろう?」


「ああ。これからはジェローム卿とも仲良く出来そうだ」


「それなら良かった。ところでジル殿、今夜も鍛錬はするのか?」


「いや、今夜は城の中を探索しようと思う。一緒に行くか?」


「ああ、そうしよう」


 俺達は部屋へ帰る途中、そんなことを話していた。このドリュケール城はとても広いので何か面白いものがあるかもしれない。


 ───まだか?我は空腹で死にそうだ───


 あ!忘れてた。すまん、オディロン、今すぐ行く!


 オディロンからの念話があるまですっかり忘れていた。


「アシル、一旦部屋に戻らないと、オディロンが餓死する。アシルは肉を貰ってきてくれ」


「了解」


 俺達の戦いは始まったばかりであった。

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