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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第78話

「いらっしゃいませ。今日は何をお探しに?」


 店主らしき人が出迎えてくれた。


「アクセサリーを」


「恋人用ですか?」


「ああ」


「どんなものをお探しで?」


「サプライズ用に綺麗なものを」


「指のサイズは分かりますか?」


「これくらいだ」


 俺はそう言って親指と人差し指で輪っかを作る。


「…では、ネックレスにしてはどうでしょうか?」


「そうしよう」


「ちなみに予算の方は…?」


「これだけだ。紙切れだが足りるか?」


 俺はアキに渡された三十枚すべてを渡した。


「それですと…こちらの中からお選びください」


 そう言って店主は三つのネックレスを持ってきた。右から赤色、青色、透明の順である。


「これにしよう」


 俺は青色のネックレスを選んだ。


「ネオンブルーアパタイトですね。少々お待ちください」


 店主は店の奥に行った。戻ってきたらやはり紙袋を持ってきた。中をそれとなく確かめると丈夫な紙でできた箱の中にネックレスが入っていた。


「ありがとうございました。またのご利用を」


「ああ。覚えておこう」


 俺はネックレスを異空間にしまい、そう言って店を出た。ちょうどクラウディウスとアキが来たところだった。


「主殿、昼飯を食べよう。ワタシに任せろ」


 俺が言おうとしたことをアキが言った。アキが俺に恋愛感情(変な気持ち)を抱かなければ、副官にしても良いかもしれぬ。抱くのであればアシルあたりに任せよう。


「さあ行こう」


 アキがついてこいと言わんばかりに歩き出したので、クラウディウスからたい焼きを受け取ってついて行った。クラウディウスはなぜか笑っていた。


「着いたぞ」


「何屋だ?」


「入ってからのお楽しみだ」


 俺とクラウディウスはアキにそう言われたので早速、店に入った。なぜか分からぬが違和感を感じる店だ。


「待て待て待て!先に注文するんだよ」


 俺とクラウディウスがカウンターの中の店主に話しかけようとしたところで、アキが入口付近でそう言っていたので戻る。


「主殿、嫌いなものはあるか?」


「無い。強いて言うなら野菜系が嫌いだ」


「我も同じだ」


「二人して子供か。ワタシが適当に頼んでおくから席につけ」


 クラウディウスが野菜嫌いだとは初耳だな。まあ肉食動物が草食動物を食べ、草食動物が草(野菜)を食べているので間接的に栄養は摂れるはずだ。


「ジル様、サヌストとは違ってやはり魔法が普及しているのだな」


「あれか」


 クラウディウスが指さした方を見るとアキが魔導具を操作していた。魔法陣を解析してみると、欲しいものを選択し、代償を払うと欲しいものが貰えるというものだった。この場合、お金を払うと券が貰えるらしい。


「ジル様、あのような魔導具などに興味を持たれるな。早く席につこう」


「ああ」


 俺はクラウディウスと一緒にカウンターに行った。が、椅子がなかったので創造魔法で椅子を創り、座った。


「大将、お願い」


 アキがやってきてそう言うと大将と呼ばれた男が振り向いた。


「はいよ」


 アキが大将に券を渡すと再び向こうを向いた。券を渡して注文完了というわけか。先払いにすることで食い逃げ対策をしているのか。


「主殿、ここは立ち食いそば屋なのだからそんなものしまえ」


 アキはそう言って俺とクラウディウスの椅子を取り上げた。


「アキ、立ち食いそばとは何だ?」


「立ったまま食べるそばだ。急いでいる時に便利だが、ワタシは急いでいなくてもここに来る」


「それほど美味いのか?」


「美味いぞ。主殿はそばを食べたことがないのか?」


「ああ。聞いた事もない」


「何っ?!人生の半分は損しているぞ」


「それは良かった。半分を食べ物に支配されている人生など面白くなさそうだ」


「いや、そういう訳じゃなくてな…」


「それに俺はまだ産まれてから一年も経っておらぬ。今月で四ヶ月だ」


「ワタシに嘘をつくな。教えたくないのであれば、調べてやる」


「やってみろ。俺が年齢を公言したのはこれが初めてだ」


「クラウディウス!主殿は何歳だ?」


「…」


 大将を眺めていたクラウディウスは話を聞いていなかったのだろう。と言うよりも今も聞いていまい。


「お待ち。何があったか知らねえがアキちゃんを舐めたらダメだ。ウチの売上も突き止められたことがある」


「そうか。気をつけよう」


 大将が振り向いて丼を俺達の目の前に順に置きながらそう言った。丼には麺とスープと魚の切り身が入っていた。


「いただきます!」


 アキはペン立てのようなものに立ててあった木を取るとそれを割いた。それで食べ始めた。


「主殿も食べろ。できたてが一番だ」


「何で食べるのだ?」


「割り箸があるだろ。これを使え」


 アキはそう言って木を俺とクラウディウスに渡した。裂け目があったのでそれを割くと綺麗に割れ、お箸になった。アイデア作品だな。


「いただきます」


 俺はそう言って魚の切り身を一口で食べた。

 美味いな。

 ふとアキを見ると麺を吸っていた。


「そうやって食べるのか?」


「逆にこれ以外にどうやって食べる?」


「知らぬ」


 俺はアキの真似をして麺を吸う。

 美味いな。

 クラウディウスも俺とアキの真似をして食べていたが、麺を全て一口で食べていた。


「美味い!」


 クラウディウスは呑み込む前にそう言ったので少し麺が飛んだ。


「クラウディウス、少し待っていろ」


 俺もクラウディウスに負けじと丼を持ち上げ、スープごと丸呑みした。もちろん丼は食べておらぬ。


「アキ、遅いぞ」


「もう食べたのか?!」


 アキはそう言うがアキも食べ終わっていた。


「大将、ごちそうさん」


「おう。また来てくれよ」


「うん」


 アキはそう言って店を出ていったので俺もついて行く。


「主殿、次はどこに行く?」


(ドラゴン)は野生にもいるのか?」


「いる」


「ならば案内してくれ」


「主殿の頼みなら仕方ない。普通は準備が必要なんだが何とかしよう。ついてこい」


 アキはそう言って走り出した。俺とクラウディウスもついて行く。


「さあ入れ」


 立ち止まったアキが民家を指さしてそう言った。まあ他と比べれば大きいが。


「ここは何だ?」


「ワタシの家だ」


(ドラゴン)は?」


「主殿の交渉力次第だ」


 アキはそれだけ言うと家に入って行った。俺達もついて行く。


「ただいま。爺様はいるか?」


「アキ!仕事は?」


 出迎えてくれたのはアキの母らしき人物だ。なんとなく雰囲気が似ている。


「仕事中だ。爺様は?」


「瞑想中だ。ところでその方は?」


「ワタシの新たな主殿だ。ワタシは足元にも及ばなかった」


「そう」


 アキの母は座って俺に頭を下げた。


「我が一族の長に何か用があるのでしょうか?」


「いや、野生の(ドラゴン)のもとに案内してくれ、と頼んだだけだ」


「何事じゃっ?!」


 奥の扉が勢いよく開き、髭を生やした逞しいおじいさんが出てきた。


「貴様、何奴じゃ?」


 じいさんは異空間から槍を取り出し穂先を俺に向ける。


「爺様、やめろっ!ワタシの主殿だ!」


「なに?アキの?」


「そう。(ドラゴン)の巣に行きたいんだって」


「なんじゃ、そんなことか。ワシが案内しよう」


「いいのか?」


「うむ。その者はワシに迫るくらいの魔力を有しておる。そなた、名はなんという?」


 俺はじいさんに名を聞かれたが答えぬ。


「名を聞くならこちらから名乗るのが筋じゃな。ワシはタカミツ。そこらでは雷電龍と呼ばれとるの」


「俺はジル・デシャン・クロード。こいつは部下のクラウディウス。試すような真似をして悪かった」


「よいよい。挨拶も済んだことだし、入られよ」


「失礼する」


 色々あったがこのじいさんに認められたらしい。俺達は家に入った。


「なんもないが座っとくれ」


 俺はタカミツに言われた座布団の上に座る。


「タカミツ殿、(ドラゴン)の巣に案内してくれるのか?」


「もちろん。ワシは嘘が嫌いじゃからの」


「では早速」


「待ちたまえ。一つ、約束して欲しい」


「何だ?」


(ドラゴン)の巣に案内する代わりと言ってはなんじゃが、ワシと手合わせしてくれんかの?」


「構わぬ」


「交渉成立じゃ。ところでそなたはロマンを求めるか?それとも効率を求めるか?」


「質問の意図が分からぬ」


「そうじゃな…ワシの背に乗って空を飛んで(ドラゴン)の巣に行くか、転移門を使って(ドラゴン)の巣に行くか。どちらにする?」


「せっかくだ。タカミツ殿の背に乗せてもらおう」


「そうかい。じゃあ少し待っておくれ」


 タカミツはそう言い残して部屋を出て行った。

 何はともあれ、交渉成立ということだ。おそらくタカミツは最初の龍人か龍のどちらかだろう。鑑定魔法を使わなくとも魔力が多い事が感じ取れた。おそらくセリムよりも多く、俺より少し少ないくらいだろう。

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