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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第69話

「誰かいるか?」


 俺は研究室の扉を開けてそう聞いたが返事はなかった。


「団長、先にジュスト殿やルイ殿とお話しされては?」


「そうしよう。どこだ?」


「こちらです」


 俺はドニスの案内で客室へ向かった。


「ドニスです。ジル団長が一時帰還しましたのでお連れしました」


 ドニスがノックをしてそう言った。


「ジル卿が?」


 扉を開けたジュスト殿がそう言った。


「久しぶりだ」


「ジル卿!おい!ジル卿だ!」


 ジュスト殿は俺達を部屋へ招きながらそう言った。ルイ殿と同じ部屋なのだろう。


「おぉ!ジル卿、お久しぶりです」


「ルイ殿、久しぶりだな」


 俺はジュスト殿に勧められた椅子に腰掛ける。俺の後ろにセリムが立ち、俺の正面にジュスト殿が座り、斜め前にルイ殿が座った。


「団長、私は研究会の主だった者を研究室に集めて参ります。集まり次第報告します」


「頼む」


 ドニスが退室した。俺達に気を遣ってのことだろう。


「早速だが、ジル卿にひとつ言いたいことがある」


「なんだ?」


「この城はラポーニヤ魔砦と言うのか?」


「城ではない。砦だ」


「そのことだ。この城を砦と呼ぶなら国内の城を全て砦と呼ばなければならんぞ」


「む。そうか。だがもう俺達の中で砦と決まっているのだ。それに城主は俺だ。今更変えぬ」


「それもだ。砦の主は砦主と名乗るものだ」


「そうか。では考えておこう」


「そうして貰えるとありがたい」


 ジュスト殿の言うことも一理ある。この城を砦とするのは、これよりもすごい城を造れるということになる。実際造れるがサヌスト王国としては自分達より技術がある者がいると言うことを認めたくはないのだろう。


「まあ、真面目な話は置いといて酒でも飲みましょう」


「ジュスト殿、酒を飲んではなりませんぞ。殿下と約束をしたではありませんか」


「少しくらいなら…」


「ダメです」


 ルイ殿がこんなに怒っているところは初めて見たな。仲裁でもしてやるか。


「ルイ殿、何かあったのか?」


「ありましたよ。ジュスト殿が殿下の御前で酒を飲むせいで下級兵士達の素行が悪くなったんですよ。『上がそれでは下に示しがつかん』とジェローム卿に怒られて王都へ入城するまでは禁酒することを殿下と約束したのです」


「それは…ジュスト殿が悪いな」


 ジュスト殿を禁酒させるのに約束だけというのがまたエジット殿下らしいな。


「そうでしょう?ジル卿からも言ってください」


「ジュスト殿。庇ってやろうと思ったが無理だ。ジュスト殿が悪い」


「ジル卿までそんな事を…」


 ジュスト殿は何かを思いついたかのように俺の体を見た。


「話は変わるがジル卿は武人らしくなったな」


「そうか?」


「ああ。言動もそうだが何より隙がない」


「いくら褒めても酒の件に関してはジュスト殿の肩は持たぬぞ」


「その件とは関係なしに武人らしくなったものだ。一度でいいから手合わせしないか?」


「良いぞ。夜だから練兵場にも人はいないだろう」


「そうしよう。ルイ、ちょっと行ってくる」


 ジュスト殿はそう言って立ち上がり、部屋から出たので俺とセリムもついて行く。


「ところでジル卿。そちらの方は?」


「セリムだ。まあジュスト殿では到底勝てぬくらい強いぞ」


「そんなにか…」


「ああ」


 俺はジュスト殿にセリムの事やキアラ達の事を説明しながら練兵場へ向かった。


「ジル卿、やるか」


「ああ。勝敗はどうやって決める?」


「そうだな…いつものルールでいいんじゃないか?」


「いつもの?」


「あーそうだった。俺達は試合をする時は木剣を使って急所を叩いた方の勝ちだ」


「それで良いだろう」


 俺達は倉庫から木剣を取り出して向かい合った。


「ジル卿、行くぞ!」


「ああ、来い!」


 ジュスト殿は剣を構えて走り出した。そのまま、俺の頭を粉砕する勢いで剣を振り下ろしたのでそれを剣で受け止める。

 そのまましばらく鍔迫り合いが続いた。俺が全力を出せば、押し切れるがジュスト殿がどう出るのかを見る為、力を拮抗させる。


「ジル卿、本気を出せ…」


「良いのか?」


「手加減される方が気に食わん!」


「そうか」


 俺は力を込めて押し切り、ジュスト殿のバランスが崩れたところでジュスト殿の剣の腹を思いっきり叩き、ジュスト殿の木剣を折る。そして頭を軽く叩いてやった。


「強いな…出会ったばかりの頃は隙だらけの素人に不釣り合いな武器を使っているな、と思ったが今は思わんな」


「…褒めているのか?」


「もちろん褒めている。たった三ヶ月でここまで強くなるとは誰も思っていなかった」


「努力の賜物だ」


「ふん…半分以上は才能だろうに」


「嫉妬するな。もう一戦くらいやろう」


「一矢報いてやる」


 俺とジュスト殿はドニスが来るまで試合をし続けた。


「団長!会長と開発者だけですが集まりました」


「分かった。ジュスト殿、また今度な」


「ああ。土産待ってるぞ」


「向こうの酒でも買ってこよう」


「楽しみにしておこう」


 俺はジュスト殿と別れ、ドニスの案内で研究室へ向かった。


「ドニスだ。団長をお連れした」


 ドニスは扉を開けながらそう言った。

 研究室は主にお茶会をする場所だ。というのもエルフの老人たちがお茶会中に思いついた魔法を研究室の設備とエルフの知識を使って創るのだ。つまりアイデアが出るまではただのお茶会だ。


「ジル様、我々の為にわざわざお戻り頂き感謝します」


 会長がそう言うと後ろの二人も頭を下げた。ちなみに会長はタケラという名だ。他は知らぬ。


「気にするな。自宅に戻るのは一瞬だ。で、早速聞かせてくれ」


「はい。ではこのハインリヒが説明します」


「頼んだ」


「まずこの水晶を見てください。これは魔石を材料に創った魔水晶と言います」


 創造魔法を使う時、俺の場合は全てを魔力で代用しているが、普通は材料を用いて創造魔法を使う。


「この水晶に触れると魔力量を数値化できます。理論上十億まで測ることが出来ますがおそらく十億はないでしょう」


「魔力を数値化と言うが基準はなんだ?」


「この砦内の人間の平均を一万としています。ちなみにですが魔法エルフの平均が一千万、フーレスティエ殿が約一億五千万、それ以外のラポーニヤ魔族は五百万以内でした」


「そうか。俺も触れて良いか?」


 俺は自分の魔力がどれくらいか気になって仕方がない。


「どうぞ」


 俺はそ〜っと丁寧に手を触れた。すると魔水晶が砕け散った。


「「「え?!」」」


「…すまん」


「あ、いや、あの、謝らないでください。魔水晶はまだまだありますから」


「だが…」


「つ、次の説明を」


 これ以上俺に謝られたくないのか次の説明を始めた。


「このカードを見てください」


 ハインリヒが手のひらサイズのカードを差し出した。


「これは?」


「我々はステータスプレートと呼んでおります。先程の魔水晶と連携しておりまして魔水晶に触れた者の名前、種族、魔力量、使用可能魔力、スキルが表示されます」


「スキル?」


「はい。先天性の能力のことです。ちなみにこれがジル様のステータスプレートです」


 渡されたカードを見るとこう書いてあった。


『名前:ジル・デシャン・クロード

 種族:魔天使族、ハイエルフ、人狼、人虎

 魔力量:測定不能(十億以上)

 使用可能魔力:測定不能

 スキル:求心力 統率力 才能 豪運』


 よく分からぬが名前がおかしい。俺はジルである。ただのジルだ。


「ハインリヒ、名が違うが?」


「そうなのです。魂に刻まれた名があるのです」


「よく分からぬが…」


「人々は自身の本来の名を知ることなく生涯を終えるのです」


「あーつまりこれが本当の名前ってことか?」


「そうです。次の説明よろしいですか?」


「ああ」


 ハインリヒが下がりもう一人の男が前に出てきた。


「リピエッツです。早速ですがこの魔法陣を見てください」


 リピエッツはそう言って魔法陣を描いた。


「これは鑑定魔法と言います。この魔法は対象の詳細を知ることができます」


「と言うと?」


「まず対象は何でもできます。物体に対してこの魔法を使えば自分の記憶の中から対象にまつわるものを選んで教えてくれます。人物に対して使えばその者の名前、魔力量が自分より多いか否か、この二つを教えてくれます。さらに身内であれば自分との関係も教えてくれます」


 説明が下手だったがだいたい理解した。物体に対して使えば思い出せぬ記憶も思い出せる。人物に対して使えば、簡易ステータスプレートを見れるというわけだ。


「分かった。今回はこれで全てか?」


「はい。全てです」


 タケラが代表して答えた。


「魔水晶は全部でいくつある?」


「残り十五個です」


「では五個貰えるか?」


「どうぞどうぞ。あ、ジル様、魔力量は増えることはあっても減ることは無いのでお気をつけください」


「分かっている」


 俺は魔水晶を五個貰って一度私室に帰った。

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