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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第67話

 早速この魔盾の性能を確かめたいが、盾を使うということは攻撃する対象が船の上なのでフィデールが戻ってきてからにしよう。


「ジル様、聞いて参りました」


 ちょうどフィデールが戻ってきた。


「どうだった?」


「船を傷つけないのであれば良いそうです。もし傷つけてしまったらご自慢の魔法で直してください、との事です」


「分かった」


 俺はヨルクの方を見てこう言う。


「ヨルク、俺が適当に攻撃するからこの盾で防いでくれ。反撃はするなよ」


「御意」


 俺は槍を出して構える。そしてヨルク目掛けて突き出す。それをヨルクは盾で防いだ。すると肘が砕けるかと思うくらいの衝撃が槍から伝わってきた。


「これはすごい。次も防いでくれ」


 今度は槍を仕舞って、弓矢を取り出す。そしてヨルク目掛けて矢を放つとヨルクが微調節をしたので、ちょうど盾の真ん中に命中した。放ったのは普通の矢だったが火魔法を付与したからか、火矢になって返ってきた。矢は俺の眉間に当たりそうだったので右手をあげて防いだ。すると手を貫通して鏃が手の甲から出てきてそのまま俺の右腕は燃えた。


「ジル様!」


 セリムが慌てて水魔法で消化し、回復魔法をかける。


「こんなことでは死なぬぞ」


「そ、そうですが」


「これは使えるな。次も防いでくれ」


 俺は弓矢を仕舞い、右手に魔力を込める。そして雷魔法を右手に纏って盾を思いっきり殴る。


「…あれ?」


 気が付いたら海に落ちていた。甲板の端には柵があったはずだが、それすら壊れたのだろうか。


「ジル様!今、助けを呼んで参ります!」


 フィデールがそう言って走って行った。

 俺は水魔法で海水を氷にして階段を創り、甲板へ戻る。


「その必要は無いぞ」


「「「ジル様!」」」


 俺は壊れた柵を魔法で直しておいた。


「俺はどうなった?」


「盾を殴った瞬間、ジル様は火達磨となり、海へ落ちました。おそらく盾に付与した反転魔法の効果で弾き飛ばされたのかと」


「それはすごい魔法を見つけたな」


「いえ、普通はあのような効果は…」


「では何故俺は弾き飛ばされたのだ?」


「おそらくジル様の殴る力が強すぎたのかと」


「そうか。まあ俺は他人より少し力が強い意識はある」


 俺がそう言うとセリムが考え込んだ。ちなみに俺が本気を出せば、人間の頭くらい破裂させれる。


「わはははは!さすがジル様!」


「なんだ、クラウディウス?」


「我とほぼ同等の力を持ちながら『他人より少し力が強い意識がある』か!わはははは!」


「なにが『わはは』だ?」


「我は魔界でも屈指の力自慢である。その我と同等の力だ。その凄さが分からぬジル様でもなかろう?」


「ああ。もう少し鍛えればクラウディウスに勝てるということだろう?」


「あー、まあそんな感じだ。さすがジル様!わはははは!」


 俺は剣を取り出して盾の鞘にしまっておいた。そして同じタイプの剣と盾を取り出した。


「次は何を為さるんだ?」


「クラウディウスは何か別の用があるのだろう?そちらに行け」


「別の用などない!我はジル様の様子を見に来ただけだ!」


「そうか。邪魔はするなよ」


 俺はクラウディウスにそう言いつけてセリムに返していた妖魔導書をもう一度借りた。今度は訓練用の武器に付与するべき魔法はないものか、と思いながら開いた。するとこんなことが書いてあった。


『硬化魔法。対象をひたすら硬くする魔法。城壁や結界、武器、石像など幅広く使用される』


 その文章の下に魔法陣が描いてあった。俺はすぐにこの硬化魔法を剣と盾、それぞれに付与した。

 訓練用の剣と盾に硬化魔法を付与したのには理由がある。ただでさえ力が強い人狼同士が剣で戦えば、いくらミスリル製とはいえすぐに折れるからである。これは検品の時にブームソンとヴィルトールが試しに試合をしてみたところ、一合で折れたので確実だ。


「セリム、ちょっといいか?」


「なんでしょう?」


 俺はセリムと共に皆から離れた。


「今日の夜は暇だろう?」


「特にすることはありませんね」


「では一度、砦に戻らないか?」


「…なぜです?」


「いや、野暮用だ」


「そうですか。夜の間は船を止めて皆、休むそうです。その間に行きましょう」


「そうしよう」


 その後、俺はセリムと細かい事を決めてクラウディウス達の所へ戻った。


「クラウディウス、アレをするか?」


「ジル様の誘いとあらば!」


 クラウディウスはそう言いながら創造魔法で机を創った。腕相撲をするのである。クラウディウスを中心とした武闘派悪魔の中で流行っているのだ。


 その後、ファビオが来るまで腕相撲をしていた。今回は十勝九敗で俺の勝ちだった。


「アニキ、いいものって何?」


「これだ。こっちは訓練用でこっちは俺が認めるまで使うな」


 俺は二セットの剣と盾を説明しながらファビオに渡した。


「アニキ!ありがとう!」


 ファビオは嬉しそうに訓練用の剣を抜いた。


「では教えてやろう」


 俺はそう言いながら創造魔法で木剣を創り、硬化魔法を付与して構えた。


「いきなり?」


「ああ。ファビオには剣術、魔法、体術を教える。今日は剣術だ。まずは思うようにかかってこい」


「うん!」


 ファビオは訓練用ではない方の剣と盾を置いて、さらに訓練用の盾も置いて俺の方へ走り出した。


「うりゃぁぁ!」


 飛び上がって狼の姿になり、俺の頭を狙って剣を振り下ろした。俺はそれを受け流してファビオがいた場所へ行った。ファビオは着地のことを考えていなかったのか尻もちをついていた。


「盾は使わぬのか?」


「アニキが使ってないから使わない」


「そうか」


 俺は創造魔法で木の盾を創り、硬化魔法を付与して左手に持った。盾などほぼ初めて使うが多分使えるだろう。


「ファビオも使え。それと武器をそんな所に置くな」


 俺はそう言いながらファビオが置いた訓練用ではない方の剣と盾を拾ってファビオに渡した。


「魔法は使えるか?」


「使えない…」


「そうか。では剣術はやめて時空間魔法を教えよう」


「ほんとに?!」


「ああ。セリム、妖魔導書を」


 俺がセリムにそう言うとセリムはすぐに妖魔導書を渡してくれた。

 俺は魔法の良い教え方はないものか、と思いながら妖魔導書を開いた。


『教育魔法。術者が対象の体に乗り移り、魔法を行使することで感覚を掴ませる魔法』


 やはりこの下に魔法陣が描いてある。魔法陣の下にも何か書いてある。


『注意点。対象が魔力を感じられない場合、使用することはできない』


 なるほど。つまりまずは魔力を感じさせなければならぬというわけか。


「ファビオ、魔力は感じられるか?」


 俺はセリムに妖魔導書を返しながらファビオに尋ねた。


「魔力かどうかは分かんないけど『コイツはヤバい!』みたいなのは感じるよ。オレはオーラって呼んでる」


 俺は魔力を垂れ流した。


「オーラは強くなったか?」


「う…うん。絶対勝てないって感じから目を合わせたら死ぬって感じになった」


「そうか。自分のオーラは感じられるか?」


「んー分かんない」


 俺はファビオに回復魔法をかけた。魔力を渡す魔法だ。


「お、お、オレ、強くなってる?」


「自分のオーラは感じられたか?」


「た、たぶん」


「そのオーラこそが魔力だ」


「これが…」


「というわけで今から教えてやろう」


 俺は早速ファビオに乗り移った。


「ヨルク、俺の体を適当な所に置いといてくれ」


 ヨルクは抜け殻となり倒れている俺の体をどこかへ持って行った。


 ───あ、アニキ!オレ、体が動かせなくなった!どうしよう?───


「気にするな。今から魔法を教えてやる。感覚が掴めたら言え」


 ───わ、分かった───


 どうやら俺がファビオの口で喋り、ファビオは念話で喋ることしかできぬようだ。

 俺は早速、新しく異空間を創り、訓練用ではない方の剣と盾をしまった。


「どうだ?」


 ───なんとな〜く。もう一回くらいやって───


「ああ」


 今度は同じ空間に訓練用の剣と盾をしまった。


「どうだ?」


 ───できる!アニキ!オレ!たぶん!できるよ!───


「そうか。ではやってみろ」


 俺はそう言って教育魔法を解除した。目を開けると船内にいた。


「ヨルク、もう良いぞ」


「あ、ジル様。ファビオ様はもう習得なされたのです?」


「ああ」


 ヨルクが俺を下ろしながら尋ねてきたので答えてやった。


「甲板へ戻るぞ」


「御意」


 俺とヨルクは甲板へと戻った。

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