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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第62話

 翌朝。俺は窓から差し込む朝日で目覚めた。久しぶりに日の出以降も寝ていたな。

 俺は起き上がろうとして俺の左右に人がいることに気づいた。小さいベッドなので狭かっただろうが、深く眠っていたのか全く気が付かなかった。

 よく見ると二人とも昨日ウルファーで捕まえた女だ。審判の言っていた二十人の内の二人か?


「起きろ。寝る部屋を間違えている」


 俺は言葉に魔力を込めてそう言った。


「「は、はい!」」


 二人は飛び起きた。俺は近くにあった椅子に移動する。


「はい、ではない。何をしている?」


「エドメ様からの指示でございます。聞いておりませんか?」


 俺の疑問に俺の右で寝ていた女が答えた。


「聞いていない。それとエドメ様って誰だ?」


「あの、前の長の副官です。決闘では審判を務めたそうですね」


「審判か」


 あの審判はエドメと言うらしい。まあ、しばらく会うことは無いだろうが。


「で、そのエドメが俺に伝え忘れたと?」


「おそらく…」


 俺は魔法で着替えた。昨日は着替えた覚えはないが寝巻きに着替えていたので無意識のうちに着替えていたのだろう。


「ではおぬしらの名を聞いておこう」


「アメリーです」


「ロアナです」


 右の女がアメリーで、左の女がロアナと言うらしい。


「あ!デシャン様、ちょっと待っててください!」


 ロアナが立ち上がって部屋を出て行った。ナニがとは言わぬが大きかった。


「私も着替えて参ります」


 アメリーも出て行った。アメリーも大きかった。

 俺も部屋を出た。部屋の前にエヴラールはいない。理由はふたつある。船の中なので俺に敵対する者はいないだろう、と言うのがひとつ。もうひとつは廊下が狭いからだ。ちなみに廊下はすれ違う時に横向きにならぬとすれ違えぬ。


「レリア〜!いるか〜?」


「姫様でしたら甲板でキアラ様方とお茶をしているはずです。確かフィデール殿がついておいでです」


「エヴラールか。どこにいたんだ?」


「ジル様の右隣の部屋にいました」


「そうか。では食堂に案内してくれ」


「姫様の所へは行かないのですか?」


「腹が減った。もう耐えられぬ」


「こっちです」


 エヴラールの後ろをついていくと食堂に着いた。


「お、ジルの旦那!もうお目覚めですかな?」


「ああ。ステーキを五人前頼む」


「はいよ!」


 食堂はミミルが雇った船上料理人のパトリスだ。船員全員の料理を一人で作る。食糧の管理もパトリスが一人でやっている。ちなみに会うのは二回目だ。


「エヴラール、この船の地図を貰ってきてくれ。ミミルが持っているはずだ」


「承知しました」


 エヴラールが食堂を出て行った。ちなみにこの船はもう出発しているはずだ。つまりいつ海賊が出るか分からぬのだ。だから船内のどこに何があるかを把握しておく必要がある。


「完成だ!にしても旦那、朝からステーキ五人前なんて元気ですな」


「ああ。食糧が足らないようであれば言ってくれ。食欲を抑える」


「その必要はありませんぜ。船長に言われて人数分の倍、用意したからな」


「余ったらどうするのだ?」


「帰りの分の足しにすればいいんですよ。つまり旦那は遠慮なく食べてくださって構わないんですぜ」


「そうか。ではおかわりを頼む」


 俺は会話をしているうちに食べ終わっていた。


「何を何人前だ?」


「そうだな…おすすめはなんだ?」


「ステーキだ。ただおすすめって言うより早く消費しないと腐っちまう」


「そうか。では二十人前頼む」


「は、はいよ!」


 再び、厨房に戻って行った。そう言えば、船なのに火を使って良いものか?まあ、船上料理人が使っているのなら問題ないのだろう。


「ジル様、一枚貰って参りました」


「広げてくれ」


 俺がそう言うとエヴラールは机を近くから持ってきてそこに地図を広げた。


「一番下が倉庫か」


 一番下は倉庫だけである。まあこの船は武装商船だからな。倉庫は大きくて当然だ。


「そうですね。一応ジル様が目を覚ます前に見てきたのですが、もし海賊に襲われた場合、非戦闘員はここに篭もるのもよろしいかと」


「そうか。まあ海賊だとわかった瞬間、向こうの船に乗り込んで逆に沈めてやるがな」


「そうですよね」


「で、部屋は二番目か」


 俺がいた部屋など、船員達の部屋があるだけだった。窓がある部屋は十部屋だけなのか。俺の部屋は窓があったな。なんとなくだが俺の部屋の扉に副船長室と書いてあったような気がするな。


「…」


「何かないのか?」


「何か、とは?」


「俺が起きる前に調べてないのか?」


「特に何もありませんでした」


「そうか」


「強いて言うなら倉庫への道が分かりやす過ぎますね」


「と言うと?」


「明らかに広い道、つまり大荷物でも通れるという事は倉庫に繋がっている道、と考えるのが普通ですよね」


「そうだな。まあいいだろう」


「ジル様がいますからね」


 なんかエヴラールがいつもと違うような気がするな。俺が置いて行ったからか?


「で、三番目はここか」


 三番目は一番上である。食堂や武器庫、会議室などがある。ちなみにこの船には弩や投石器などが取り付けられている。それらの為の矢や石が積んである。


「ちなみに戦える者はどれくらいいる?」


「旦那、海に出る男はみんな戦えるぜ。じゃないと海賊に殺られる」


 パトリスがステーキを持ってきて机に置きながらそう言った。さすがにバーカートを使っている。


「そんなに海賊が出るのか?」


「船乗りはそう言われて育てられる。だからみんな短剣くらいは持ち歩いてるぜ」


 ステーキを並び終えたパトリスは懐から短剣を取り出し、鞘から抜いてみせた。


「さあ、冷めないうちに食べてくだせぇ」


「うむ。いただこう」


 俺はそう言ってステーキを食べる。一枚で一人前だと思うが手を広げたくらいの大きさで満腹になるのだろうか。

 俺はそんなことを考えながら一人前を一口で食べていく。五回噛めば飲み込めるくらい柔らかい。


「美味かった。また頼むぞ」


「お、おう」


 パトリスが短剣を眺めている間に俺は食べ終わった。


「エヴラール、レリアの所へ案内してくれ」


「こちらです」


 俺はエヴラールの案内に従い、甲板へと向かう。食堂にあった螺旋階段を上ると小さな部屋に出た。そこを出ると甲板だ。


「レリア〜!」


 レリアを見つけたのでそちらへ向かって駆けていく。レリアが立ち上がるとキアラも立ち上がった。


「あ、デシャン!もう起きたんだ。おはよう」


「おはよう。もうサヌストを出たからジルで良いぞ」


「そうなの?」


「ああ。ここに国王派はいないはずだからな」


「そうなんだ。座って座って」


「ああ」


 俺はレリアに勧められた席に座る。ちょうど三つの席があったのだ。

 俺が座るとレンカがお茶を入れてくれた。


「あ、そう言えば、ジルが起きたら教えて欲しいって言ってたよ」


「誰が?」


「船長が」


「分かった」


 俺がエヴラールの方を見るとエヴラールが頷いた。そしてそのまま船内へ行こうとした。


「おい、待て!」


「なんでしょう?」


 エヴラールは戻ってきてそう言った。


「ミミルに何と言って地図を貰ってきた?」


「この船の警備を見直したい、と言いました」


「俺が起きたことは?」


「伝えておりません」


「分かった。しばらくここにいるはずだからここに来るようにしてくれ」


「御意」


 エヴラールが船内へ行った。エヴラールの話ではこの船の警備に文句があるみたいではないか。


「レリア、もしもの話をして良いか?」


「もしもって何?」


「もし、俺が寝ている間にレリアではない女が俺のベッドに忍び込んで寝ていたらどうすればいい?」


「なにそれ〜」


「いや、どうすれば良いのだろうと思ってな」


「そんなの決まってるじゃん」


「え?」


「その女はそのまま寝かしておいてあたしの所に来てよ」


 そうか。その手があったか。


「もし、そんな事があればそうしよう」


 ───もし、ね。妾は知ってるわよ───


 キアラが念話でそう言ってきた。レリアを見ると固まっていた。天眼を使ってみるとレリアの時間が止まっていた。そしてキアラの魔力を感じたので一瞬でレリアの時を止めたのだろう。


 何のことだ?


 ───ウルファーの女と同衾していた事よ───


 いや、俺は知らぬ。


 ───エドメが選んだ美女だそうよ───


 何のことだ?


 ───あら?とぼけるのかしら?───


「姫様〜?今の話…」


 待て待て待て!


「そんなに慌てなくてもいいわよ。まだ止まったままだもの」


「む…」


「それでジル様はどうしたいのかしら?」


「待て。フィデール、耳を塞げ」


 俺は空気と化していたフィデールにそう言った。


「何故でしょう?」


「いいから塞げ」


「はは」


 フィデールが耳を塞いだ。その瞬間、俺はフィデールの時を止めた。


「キアラ、何がしたい?」


「そうね…ヤマトワで二日間、姫を借りてもいいかしら?」


「レリアを説得出来たらな」


「契約成立ね」

 

 俺とキアラは握手を交わした。その瞬間、レリアの時が解放されたのでフィデールの時も解放した。

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