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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第58話

 しばらくするとミミルが戻ってきた。

 どうやらこの宿は大商隊向けの宿でフロアごと貸しているらしい。つまり、一部屋がワンフロアだ。全部で四階あり、一階は荷物置き場となっており、二階三階はミミルが借りている。四階はエルワンが借りた。


 その事を聞いた俺は荷車を一階に置くように言った。牛や馬などの面倒も見てくれるらしい。


 荷物を預けた俺たちは、四階に行った。四階まで階段だったのでエルワンの息が切れていた。俺は別になんともない。


 四階は五つの個室と一つの大部屋があった。俺は個室のベッドにレリアを寝かせた。ベッドは小さいが二段重なっているため、一つのベッドで二人が寝れる。名付けるならば、『二段ベッド』だな。そしてこの部屋には二段ベッドが二つある。普通は四人で同じ部屋で寝るのか。


「待たせたな」


 俺はそう言って大部屋のソファーに座る。俺の後ろにエヴラールが立った。俺の隣にはアシルが座り、反対側にはエルワンの俺が蹴った者が座った。

 ミミルは自分の借りている部屋に帰っていった。眠くなってきたらしい。

 俺の部下は個室に入っていった。

 監視の者は『領主の死体と金貨五十万枚を持って逃げた偽使徒一行を追い、ブロンダンの外に行った』と報告しに戻っている。


「いえ。デシャン殿、まずはどうしましょう?」


「そうだな…大前提として領主殿には全てが終わるまでここで待機していてもらいたい」


 セシャンは領主が死んだと思って行動するはずだ。なのでエルワンが生きているのが知られてはならぬ。


「そうでしょうな。そういえば、もし私に何かあった時に領主代理を務める者がいますのでその者に許可を貰ってください。事情を書いた書状を渡しますので」


「では私が秘密裏に許可を頂いて参ります」


 見張りをしていた衛兵の一人がそう言った。


「頼む」


「お任せ下さい」


 俺が使徒だと明かしていないのにこんなに信頼されているとは。


「そうだ。護身石を渡しておくから何かあったらそれで知らせろ。必ず助けに向かう」


 俺はそう言って懐に手を入れて創造魔法で小石を創り、それを衛兵に渡した。


「ですがコツがいるのでは?」


「特別に教えてやろう。『神よ。脆弱な我をお救い下さい』と三回ほど唱えるのだ。小声で良いぞ」


「『神よ。脆弱な我をお救い下さい』ですね。分かりました」


「ああ。頼んだぞ」


 俺が衛兵に小石を渡している間にエルワンはアシルと相談しながら書状を書き終えたようだ。


「これを。悟られるなよ」


「はは」


 衛兵はそう言って階段を降りていった。

 ちなみにあの衛兵には追跡魔法が掛けてある。追跡魔法とは追跡の為の魔法だ。今回は居場所が分かるようにしたのと盗聴の機能をつけておいた。これで護身石をちゃんと発動させることが出来るし、安心だ。セリムに教えてもらった。


「デシャン殿、セシャンの家の間取りは分かるのですか?」


「分からぬ。クロード、忍び込んで来れるか?」


 俺はアシルの方を見る。


「まあ、間取りの把握くらいならできる」


「人質の場所も確認して来い」


「分かった。行ってこよう」


 アシルはそう言って窓から飛び降りた。


「あ…ああ…」


 エルワンがそんな声を漏らした。


「安心してくれ。クロードは元暗殺者だ」


「なんと…」


「確か国王陛下直属の暗殺部隊に所属していたらしいが脱走したらしいぞ」


「そんな部隊、聞いたことがありませんが…」


「子供の奴隷を買って暗殺者として育てるそうだ。幼い頃から洗脳教育をされている為、国王陛下の命令に間違いはない、と思うようになるらしい」


「クロード殿もですか?」


「いや、クロードは洗脳されずに初任務の時に逃げ出したらしい。だから技術だけの暗殺者だ」


「なるほど…」


 この会話はアシルにも念話で送っておいた。矛盾が生まれないようにするためだ。


「話が逸れたな」


「そうですな。失礼しました」


「いや、良い。俺は知り合いの四人を呼んでくるから空いている個室で休んでいてくれ」


「分かりました。デシャン殿、お気をつけて」


「ああ」


 ちなみに天眼を使ったところ、交渉役三人で一部屋、侍従武官とエヴラールで一部屋、俺とレリアとアシルで一部屋なのでエルワンが一部屋使っても空き部屋はある。アシルを一人にしようか。


 俺はそんなことを考えながら階段を降りた。一階でヌーヴェルを受け取り、ブロンダンの門を出てヌーヴェルに乗る。一応、マナーとして街の中では馬を降りるのだそうだ。


 ブロンダンからある程度離れた所で例の四人を喚び出す。


「話は聞いていたな?」


「はは」


 セバスが代表してそう言った。いや、グレンと呼ぶことにしよう。


「設定を伝える。クラウディウスが主でヨルクとセリムはその弟分。グレンはクラウディウスの世話役だ。クラウディウスは隠居した武家貴族ということにして他三人はクラウディウスを慕ってついてきた」


(われ)が主か!わははは!さすがジル様!分かってらっしゃる!」


「分かっているとは思うが俺の事はデシャンと呼べ」


「おっとぉ…そうでしたな!わははは!」


 これはクラウディウスだ。まるで酒に酔ったような感じだがシラフだ。


「グレン、クラウディウスが暴走しないようにしてくれ」


「仰せのままに」


 一応、グレンに見張りを頼んだ。クラウディウスはシラフでも酔っている気がするからな。


「それでデシャン様とクラウディウスとはどういう関係ですか?」


 グレンがそう聞いてきた。ごもっともだ。関係ない知り合いなどいない。俺はしばらく考えてからこう言った。


「旧友だ。出会いを忘れるほど昔からの仲ということにしておこう」


「旧友か!ではこの街にいる間は呼び捨てよろしいのか?」


「ああ。それにクラウディウスは敬語も使わなくて良い。やってみろ」


「デシャン!我の指を見ろ!」


「なんだ?」


 俺はそう言ってクラウディウスの指を見る。


「こっちだ!」


 クラウディウスはそう言って右手を隠して左手を出す。


「今のに何の意味がある?」


「練習だ!わはははは!さあ、ブロンダンへ行こう!」


 俺はヌーヴェルから降りてヌーヴェルをヨルクに預け、クラウディウスと肩を並べて歩いた。その後ろをグレンやセリム、ヨルクがついてくる。


 ブロンダンに入る頃には日の出が始まっていた。


「デシャン!」


「何だ?」


「呼んだだけだ!」


「用がないのに呼ぶな」


 レリアもたまに同じことをするがクラウディウスはレリアでは無い。クラウディウスに呼ばれても嬉しくない。レリアなら戦に勝ったくらい嬉しいが。


「あれがデシャンの泊まっている宿か?」


「ああ。四階だ」


「弱そうな建物だな!こんな建物、破城槌で一撃だぞ!」


「戦争用の建物ではないから当たり前だ」


「そうであったな!わははは!」


 俺はクラウディウスとそんな会話を交わしながら宿へ入り、階段を上がった。


「戻ったぞ」


 俺がそう言うとエルワンが個室から出てきた。


「な…あ…あ…で…デカい…」


 エルワンはクラウディウスを見てそう言った。確かにクラウディウスは俺より頭三つ分背が高い。肩幅も倍くらいある。それに背中には大剣を担いでいる為、より大きく感じるのだろう。


「こいつはクラウディウス。俺の旧友だ」


「クラウディウスだ!よろしくな!」


「え、エルワンです…」


 エルワンはそう言ってクラウディウスが差し出した手を握った。怯えながらも握手には応じた。


「ほ、他の方々は?」


「我の世話役と弟子二人だ!こいつらの挨拶なと聞いても面白くないぞ!」


「はあ」


 クラウディウスは豪快にソファーに座った。俺はその隣に座る。


「デシャン、どっか部屋は空いてないか?」


「確かあそこの部屋が空いているぞ」


「借りても良いか?」


「ああ」


「お前ら!そこの部屋で休んでろ!デシャンが呼ぶって事はそれなりの敵だぞ」


「「「ではありがたく」」」


 三人はそう言って部屋に入っていった。


「戻ったぞ」


 アシルの声が聞こえた。窓の方から。そちらを見るとアシルがさっきの衛兵を担いで部屋に入ってきていた。


「あ、あの」


「ああ、すまん」


 衛兵を下ろした。


「間取りは分かった。地下牢の入口も」


「そうか。そっちは?」


 俺はそう言って衛兵の方を見る。


「頂けました」


「そうか。では細かいことを決めよう」

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