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神に仕える黄金天使  作者: こん
第2章

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第541話

 九月十日。将官を呼び集め、兵科将軍と兵種将軍を選ぶ事となった。将官は忙しい者ばかりであるゆえ、全員を集める諸々の調整に少々手間取った。


 兵科将軍については、それぞれの兵科の将官が、自分以外の有資格者に票を投じ、俺がそれを承認し、任ずる事にした。

 結果、歩兵将軍はファラー将軍、騎兵将軍はフォーサイス将軍、火兵将軍はサザーランド副将軍が選ばれたので、俺は帝国騎士団長の権限によって三人を上級職に格上げし、兵科将軍に任じた。

 任期は通常一年であるが、制度構築のため初回のみ延長し、帝国暦四年の三月末までの一年半強となる。


 兵種将軍については、それぞれの兵科将軍が有資格者のうちから推薦し、俺が承認する形をとった。上級職に任じる訳ではないし、任務と責任が増えるだけであるから、兵科将軍との相性を優先するためである。

 こちらも任期は通常一年であるが、制度構築のため初回のみ延長し、帝国暦四年の三月末までの一年半強となる。兵種将軍の任命について、兵科将軍が推薦する権利を有するが、基本的に兵種一つにつき一回のみ行使可能し、任期中の交代はせぬ事とした。ただし当然ではあるが、退役や戦死などによって空席が生じた場合はこの限りではない。


 兵科将軍についての会議が終わると、グローブス将軍が用があると言い、帰ろうとする将官らを呼び止めた。当然、事前に俺には相談があり、許可は与えている。


「失礼。主要幹部が揃っている今、提案をさせていただく。兵器局次長イーサン・リード筆頭銀級徒士、入室したまえ」


 グローブス将軍がそう呼ぶと、会議室の扉が開いて何らかの荷物を持ったリード銀士が入室してきた。

 事前の報告によれば、魔導砲マヒー・カノンについての話であるそうだが、詳細は聞いておらぬ。


「先月、我らが帝国騎士団本部の正門が破壊された件は、皆の知るところだろう」


 グローブス将軍はそう言い、歩きながら説明を始めた。正門は既に修復されており、正門が爆散した件を知らぬ者もいるだろうが、グローブス将軍は何のためか敢えて知っている前提で話している。

 グローブス将軍は魔導砲マヒー・カノンによって正門が破壊された事から説明を始め、魔導砲マヒー・カノンの性能、有効な戦術や運用に関する案などを提案したが、開発者が俺の関係者である事は言わなかった。俺に忖度させぬためであろう。


「さて、聡明な諸将ならば有用性をご理解いただけたかと思いますが…帝国騎士団長閣下、これと併せてもう一点、ご提案させていただきたく存じます。ご許可を」


「ああ、許可しよう」


「ありがとうございます。それでは魔導列車ソルセラリー・ルトランの軍事利用について提案いたします」


 グローブス将軍がそう言うと、リード銀士は持って来ていた荷物から、以前アズラ卿が見せてくれた魔導列車ソルセラリー・ルトランの模型を取り出した。アガフォノワから聞いたのであろうか。

 グローブス将軍は魔導列車ソルセラリー・ルトランとは何か、その有用性などについて、魔導砲マヒー・カノンの時以上に熱弁した。この様子から察するに、こちらが本命であろうか。


「以上、魔導列車ソルセラリー・ルトランの提案でした。これら二点の導入について、ご検討いただきたく思います」


「承知した。質問がなければ決を採ろう。各自、匿名で票を投じよ」


「お待ちを。よろしいですか?」


「ファラー将軍、言ってみよ」


 決を採ろうとすると、ファラー将軍がそう言って投票用紙を配ろうとしていた副官部の者を止めた。歩兵将軍として、歩兵あるいは工兵が運用する事になりそうな新兵器について、職務を全うしようとしているようだな。


「グローブス将軍、貴官の言う事は理解したが、まず、この記録が事実である事を証明してもらいたい。僚友を疑いたくはないが、貴官の個人的な繋がりのある武器商人の伝手で、記録の改竄などあれば問題だ。第一、なぜ貴官が新兵器の審査に参加を?」


「ファラー上級将軍、説明させていただこう。この新兵器を持ち込んだ武器商人は、モレンク血閥軍の方です。審査に私が参加したのは、正門が破壊された兵器があると聞き、閣下にご紹介いただきました。記録の改竄については口で説明するだけでは証明できません。土地の手配もありますし、明日にでも視察いただければ」


「閣下のご紹介ですか、それは失礼を。閣下、視察のご許可を賜りたく思います」


「ああ、良いぞ。では決を採るのは、明日の視察を終えてからにしよう。グローブス将軍、手配を頼めるな?」


「お任せを」


 ファラー将軍は色々と言いたい事があるようだが、俺の紹介であるとグローブス将軍が言ったためか、すぐに引き下がった。

 その後、兵科将軍と兵種将軍の任命に関する手続きを終え、少々早く帰邸した。


 翌日。今日は朝早くから集まり、視察の予定について打ち合わせた。

 新兵器評価演習と題された今日の演習は、騎士団の将官全てが視察に訪れるため、警備も厳重なものとなった。騎士団長の親衛隊長、つまりアキの指揮の下、各将官の親衛隊、憲兵隊などが各地に配置される事となる。


「閣下、軍令部に演習の許可を求めましたところ、視察に参加したいとの事で…」


「そうか、承知した」


「演習地として定めました、帝都の西側にて合流する事になっております」


「承知した。誰が参加すると?」


「関係部署の高官とのみ聞いております」


「そうか。まあ行けば分かるだろう」


 グローブス将軍は申し訳なさそうにそう報告したが、騎士団以外の部隊で導入されても友軍が強くなるだけであるから、別に構わぬし、むしろ歓迎すべきなのだ。


 準備を整え、演習地に赴くと、本陣らしき場所に省部の旗が翻っていた。軍令部の高官とやらは既に到着しているようだが、幕舎の中で待っているため誰が来ているか分からぬ。


「帝国騎士団長閣下、ご到着!」


 先に来ていた憲兵本部長クラム金士がそう叫ぶと、幕舎の前の歩哨が中にいる高官に呼び掛けた。さすがにジェローム卿は来ておらぬであろうから、高官とはいえ俺が気遣う必要はなかろう。


「モレンクロード大将軍、今日は無理を言って悪かったな」


「陛下!」


「大将軍を驚かせようと思ってな。元帥に口止めを頼んだ。今日は楽しみにしているぞ」


「左様でありますか。おっと、馬上から失礼いたしました」


 幕舎から出てきたのは、エジット陛下であった。軍令部の高官と聞いていたので、せいぜい将官かと思っていたが、まさかエジット陛下がお越しになるとは…そもそも、皇帝であるエジット陛下は、官を任ずる側であり、いくら高位でも高官ではなかろうに。

 俺が下馬すると、共に来た騎士団員の全員が下馬した。警備のための騎兵戦力として期待されていた親衛隊員まで下馬すると、警備計画に影響が出るのではなかろうか。まあアキが何も言わぬなら大丈夫か。


「さて、大将軍。早速だが、新兵器の能力を見せてもらおう」


「元帥閣下も…グローブス将軍、頼んだ」


「御意」


 ジェローム卿も来ていたようで、演習の開始を促されたので、俺はグローブス将軍に開始を命じた。

 グローブス将軍は馬に乗って魔導砲マヒー・カノンが並ぶ陣地へ駆けていった。


 省部など外部から視察に来ているのは、エジット陛下やジェローム卿の他、軍務大臣グローヴァー将軍や兵杖庁長官ザック・ドレスラー副将監、侍従武官長サヴォイア将軍、近衛兵団長エッジレイ将軍、皇帝親衛隊長メリエス副将軍など大物揃いであった。

 ちなみに、兵杖庁とは実戦用の武器の調達や管理、開発などを任務とする軍務省の外局である。儀仗用の武器については、軍服に付随するものは軍務省被服局が、それ以外は各戦略単位が各個に管轄するので、兵杖庁の管轄外である。

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