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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第53話

 俺はオクタヴァイアン達の行動が凡そ分かった。


「調子に乗った騎兵隊は先に攻撃を仕掛けてきた訳だ」


「左様です。騎兵隊に置いて行かれた事で歩兵隊の士気は下がり、進軍速度が落ち、脱落兵も出たようです」


「アホな奴らだ」


 俺はそう言って喋るのを辞めた。


「ええ。そしてジル団長が出陣なせれた時、これはまずい、と歩兵隊に急ぐように指示を出したようです。そして歩兵隊は大急ぎで駆けつけ、当初の予定通り、西側から攻撃を仕掛けたようです」


 俺は話さないと決めたのだ。誰かが俺の代わりに返事をしてくれるのを待つ。


「五人、射抜かれていた、との事ですが気付かれずに五人も射抜ける程の名射手がいたのでしょうか?」


 誰も話さないのを見てアルフォンスがそう言った。


「百人ほど国王親衛隊の者が指揮官としてついていたようです。その者らでしょう」


「騎兵は見当たらなかったが?」


「反感を買わない為に歩いていたのでしょう。いくら精鋭とはいえ百人では一万五千人に勝てませんから」


 アシルが仕事をしていない。俺も他人(ひと)の事は言えないが。


「以上で良いな?」


 誰も話さなくなったのを見てアシルがそう言った。それに対して皆が頷いた。


「では次はジル殿を交渉する」


 ん?何の事だ?


「ジル殿、俺もヤマトワに連れて行ってくれ」


「別に良いが、ここの指揮は誰が執るのだ?」


「兵士はドニスに、一般の魔族は長老院に、任せる」


「ではエジット殿下の対応は誰がするのだ?」


「それもドニスに任せる。カルヴィンにはサポート頼む」


「分かった。連れて行ってやろう」


「感謝する」


 ここで言うことでは無いだろうに。


「では決まりだ。解散!」


 ここで解散しても良いのか?

 俺のそんな疑問を余所に皆が部屋から出て行った。俺とアシルとエヴラールが残った。


「なぜ急に行きたいと言い出したのだ?」


「それは…ロドリグに聞いてくれ」


「分かった。ロドリグを喚べ」


「ああ」


 ロドリグが出てきた。


「俺はやることがあるから別の所へ行く。ロドリグは後で俺の部屋に来てくれ」


 アシルはそう言って部屋から出ていった。


「では俺の部屋に行こう」


 ───ジル様、久しぶり───


「確かに久しぶりだな」


 久しぶりにロドリグと話した。俺達は話しながら部屋を出て俺の部屋に向かう。


 ───ジル様、この部屋はダメだ───


 俺の部屋の前まで来たところでロドリグがそう言った。


「なぜだ?」


 ───魔女がいる。不吉な魔女がいる。直ちに立ち去ろう───


 ロドリグがそう俺に念話を送った時だった。扉が開いたのだ。


「ジル様、不吉な魔女なんていないわ。安心して入ってちょうだい」


 キアラが出てきてそう言った。その瞬間ロドリグが腹を上にして寝転んだ。


 ───降参!降参だ!───


「あら?この猫は何を言っているのかしら?」


 キアラはそう言ってロドリグの首の後ろを掴んで持ち上げた。


「さあ、ジル様はこんな猫、気にせずに中に入ってちょうだい」


「どこに連れていこうとしているのだ?」


「追い出すだけよ」


「俺はロドリグに用があるのだ」


「…分かったわ。ジル様、一つ忠告をしておくわ。この猫、ロドリグは口が軽いわよ」


「分かった」


 キアラがロドリグから手を離した。ロドリグはちゃんと着地した。

 俺はロドリグが歩けるのを確認し、部屋に入った。

 机はレリア達が座っていたのでベッドより奥のカーペットが敷いてある所に座った。もちろん椅子などない。


 ───ジル様、アシル様がヤマトワに行きたいと行ったのは女目的だ───


「なに?」


 ───アシル様にヤマトワの女の話をしたら食いついたのだ───


「アシルも男だな」


 ───そのようだ。だが本人は恥ずかしがっている───


「そうみたいだな。だがアシルが女だけを目的についてくる訳はないだろう?」


 ───ジル様は乱破(らっぱ)、もしくは透破(すっぱ)を知っているか?───


「知らない」


 ───ヤマトワを裏で支える暗殺者だ───


「アシルって暗殺者に興味があるのか?」


 ───アシル様が興味を持ったのは乱破や透破の技術だ───


「なるほど。で、誰を殺そうとしているのだ?」


 ───ジル様に仇なす者を全て殺そうとしている───


「正面から打ち破れば良いだろうに」


 ───それでは逃げられる可能性がある。暗殺の方が確実だ。そう考えているのだろう───


「アシルを敵に回したくないな」


 ───我はジル様を敵に回したくない───


「お世辞なんていらないぞ」


 ───お世辞では無い。ジル様が本気を出せばこの砦に住まう者を殺し尽くすのに半日もかからないだろう───


「いや、そんな事しない」


 ───する、しない、の話ではない。できる、できない、の話だ───


「出来ないぞ。キアラとセリムとヨルクとクラウディウスには勝てそうにない。レリアもだ」


 ───やはりジル様はレリア姫には甘いな。それはそれとしてヨルク殿には勝てるだろう?───


「前、ヨルクと手合わせしたがあの時は本気ではなかっただろう」


 ───分かるのか?───


「ああ。キアラが認めた近衛騎士だぞ。俺が対等に戦える訳が無い」


 ───それが読み取れるだけでも立派な剣士だ。ジル様に剣で敵う人間はいないだろうな───


「俺の剣は力でゴリ押しだ。俺よりも上手な剣士はいくらでもいるだろう」


 ───ジル様は無意識だろうがいつ見ても隙が無い。どこから襲いかかっても勝てる気がしない───


 その後もロドリグに褒められ続け夜ご飯の時になり、ロドリグとキアラ達が帰って行った。アルテミシアも帰った。


 今日の夜ご飯はキトリーが作ったらしく、いつもの数倍美味しかった。もちろん俺の配下も料理人の料理も美味しいが、格が違う。


 そしてそれからしばらく経ち、四月が始まった。本来であれば、もう出発しているはずだが、検品などで時間がかかってしまった。


 四月二日、俺達はついに出発した。俺はデシャンと名乗り、アシルはクロードと名乗る。

 メンバーはこうだ。俺、アシル、レリア、俺とアシルの従魔、エヴラール。侍従武官はロジェ、フィデール。交渉役としてフローラン、サンディ、マルキだ。サンディとマルキは文官だ。

 そして俺達はデシャン商隊と名乗る。


 移動は異空間に繋がった馬車に乗ってもらう。俺の魔法だと説明が面倒なので犬人や猫人が特別に作った速い馬車ということにして、御者は俺しか出来ないことにしてある。

 窓も付いていることになっており景色も見えるが俺の視界を写すので揺れが激しい。だから外を見ると中にあるものが風圧で飛んでいく、と言って窓を開けるのは禁止している。

 俺も一度入ってみたが、見た目より広い。人数分のベッドを置いてもくつろげる。これも特注だからと言ってある。

 ちなみにバローが『これは馬車型異空間部屋だワン。ジル様もそう呼ぶワン』と言っていたので俺もそう呼ぶ。


 俺は皆が馬車型異空間部屋に入ったことを確認し、それを異空間にしまう。これ専用に新しく異空間を創ったのだ。荷車に積んだ剣も入れてある。


 俺は『行き難くなる』と言って見送りを断ってあったので狼の姿になり、一人で駆け出す。


 港町ブロンダンには四月五日までにつかなくてはならぬ。ミミルによると前日までに商隊の隊長と商船の船長が役所に許可証を貰いに行かなければ、出港してはならないらしい。規則を破れば、ブロンダンの領主が抱えるブロンダン海兵隊に船を沈められるのだ。そこまでやらなくても良いとは思うが、ルールはルールだ。守れば罰則はない。


 ミミルは海賊対策に中古の武装商船を買ったらしい。それで金貨八十枚が消えたらしく、ミミルもヤマトワで商売をするらしい。


 それともう一つ。ヤマトワでは特殊な服を着るらしい。和服と言うらしい。それもミミルが用意してくれている。

 それとヤマトワでは主に二つの宗教がある。

 一つは魔王ジャビラが伝えたジャビラ教。これは八百万の神々を信仰する宗教だ。

 もう一つはヴェネリース教と言ってヴェネリース族を崇拝する宗教だ。その為、オッドアイの人間はヴェネリース族を冒涜しているとし、目玉をくり抜かれると言う。

 後者のせいでオッドアイの者は眼帯をしなくてはならない。眼帯をしていれば、余程熱心なヴェネリース教徒でなければ、教会に通報されることはないらしい。なのでオッドアイ以外の眼帯をしている者は優しい人、というのがヤマトワの裏常識みたいなものだ。

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