表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に仕える黄金天使  作者: こん
第2章
534/560

第533話

 八月二十日。数日間の会議の末、第一の侵略目標はコンツェン王国とその南方地域に定められ、コンツェン王国遠征計画の概案が、内々に制定された。

 ちなみに、コンツェン王国の南方地域は、コンツェン王国の半分程度の土地を巡って諸民族が争覇しており、コンツェン王国も敢えて平定せず、奴隷の供給源として放置している地域であるそうだ。だが、敢えて平定せぬというのはコンツェン王家の主張であり、情報本部の見立てでは平定できぬが実際であろうとの事だ。


 コンツェン王国遠征計画概案によれば、侵攻の開始は帝国暦五年四月を想定しており、それに向けて遠征軍を編成し、軍備を整える必要がある。

 遠征軍の指揮官には俺が選ばれ、遠征軍の編成から作戦の立案、その他諸々の準備を命じられた。だが、コンツェン王国軍を排除した後の統治については、コンツェン総督が担当する事になる。そのため、コンツェン軍撃破後、第一防衛軍コンツェン総督を大将軍に格上げし、十数名の将官と共に新たな戦略単位として独立させ、文官によって構成される統治部門と合わせて総督府を編成する。

 まあ具体的な作戦すら定まっておらぬのだから、占領政策について考える必要は一切ないという事だ。


 俺の当面の任務は、コンツェン王国内の情報収集や遠征軍の編成、対コンツェン戦に向けた軍備増強などである。これに加えて、通常の軍務や政務などあるので、忙しくなりそうである。


 俺はアーウィン将軍と騎士団本部に戻り、騎士団の部局長を呼び出した。


「軍令部での決定事項を伝える。帝国暦五年四月、我らサヌスト帝国軍はコンツェン王国に対し、侵略を開始する。遠征軍については、帝国騎士団を基幹に編成される予定だ。アーウィン将軍」


「は。我々はまず、参加部隊を選定し、コンツェン遠征軍司令部を編成せねばならない。それと並行し、コンツェン王国の情報収集に努める。情報部と測量部はコンツェン領内に潜入し、情報収集にあたる部隊を編成せよ。なお、本計画は現状極秘であり、原則武官のみ参加とし、軍属と兵士階級は不参加とする」


 アーウィン将軍はそう言い、コンツェン王国遠征計画について説明し、ある程度の指示を出し始めた。

 状況を見て判断せねばならぬが、しばらくは極秘扱いとなり、戦略単位の高級幹部が知るのみとなる。これは、コンツェン王国側が遠征計画について知り、事前の準備なり予防戦争なりをせぬためである。

 この計画は、帝国正規軍のみによる遠征であり、諸侯軍の参加はない。戦果を理由にコンツェン領の領有権を主張されたら面倒であるからである。それに、遠征軍に必要な戦力は、帝国正規軍から十分に抽出できるので、面倒事を増やす必要はないのだ。当然ながら、聖堂騎士団など宗教騎士団の従軍もない。


 コンツェン王国遠征計画について通達のため、俺は騎士団将官に密書を書いた。

 コンツェン遠征軍司令部は、その大部分が騎士団の高級将校で構成されることになっており、参加要員を選ばねばならぬ。その全てを俺が選べるほど俺は各部隊の本部要員に詳しくないので、その選定も命じてある。


 翌日。新都に関する件で、建設省新都営造局から呼び出しがあったため、俺はアキとリンを伴って建設省に赴いた。

 建設省の会議室では、建設大臣シャルパンティエ公爵ら建設省幹部が待っていた。


「モレンクロード大将軍、よく来てくれた」


「ああ。何用であるか?」


「新都防衛に関して、案を頂いたとか。確か、新都周辺に支城を建設し、それらに騎士団が常駐する、と」


「その件であるか。安心なされよ。許可さえ貰えれば、騎士団の方で人員も予算も負担する」


「皇帝陛下にもご報告申し上げたところ、大変乗り気でらっしゃる。帝都防衛隊総司令官閣下もお呼びしているから、支城の位置や規模について、草案を練ろう」


「なるほど。では騎士団からも幾人か連れて来れば良かったろうか」


「今回はあくまで草案だ。軍令部に提出して軍事的な部分に確認してもらい、枢密院で承認されて、初めて成案になる。軍令部での確認には、騎士団にも協力してもらうとのことだ」


「なるほど、では良いか」


 シャルパンティエ公爵の設計した新都は、少なくとも計算上は二百万の民が住まう超大型都市となるはずである。俺は存在せぬ都市の人口を見積もる事などできぬので、この計算の正誤は分からぬが、それでも小国程度の人口を有するであろう事は、想像に難くない。

 俺と帝都防衛隊総司令官、文官の建設大臣だけで、草案とはいえこのような超大型都市の防衛計画を決めてしまって良いのであろうか。まあエジット陛下からご許可は賜っているようであるし、不備があったならば軍令部の審査が通らぬだろう。


「ウォード将軍が来るまで、モレンク血閥総帥としての公と話をしたい」


「良かろう。それで、話とは?」


「皇帝陛下より、新都建設の出資者から、感謝の意を込めて、新都建設に関する要望を募り、可能ならば実現せよ、と」


「なるほど。ちなみに要望とは?」


「誰とは明かせないが、新都の名称について案を出す方や、巨大な闘技場を建設するよう求められた方もいらっしゃる。公はどうする?」


「なるほど…持ち帰って考えさせてくれ。数日以内に返答する」


「了解した。ああ、それと血閥に対しては情報の開示を始めている。新都の現状の街図と詳細だ」


「感謝する」


 シャルパンティエ公爵から受け取った街図を、アキとリンと三人で確認した。


 新都は内側から円を描くように八つの区画に分けられている。

 最も内側が、皇宮である。近衛兵団本部や宮内省などもあり、帝室のための区画となっている。

 二番目は、官衙である。帝都に集めても支障のない限り、文武問わず全ての組織の本部、本庁舎が集められ、そこに勤める官吏のための住居、そこに住まう者を対象にする官営の商店などが入る予定である。

 三番目は、上級貴族の邸宅街である。この区画には血閥特区が設けられ、特区内に限り血閥に管理が任される事となる。

 四番目は、騎士階級の邸宅街である。騎士階級は上級貴族に比すれば増えやすいので、適当な名称で空き地を多く確保し、今後新たに叙される者がいれば、邸宅の建設が可能となるよう備えられている。

 五番目と六番目は、平民の住む区画となる。五番目の区画の住民に対しては六番目の区画に比して重税を課し、ある程度財産のある者を選び、貴族の住まう区画への、ある種の濾過装置として機能させるそうだ。

 七番目は、巨大農場である。農商省が管理する巨大農場を設置し、帝都内の食料を全て生産するそうだ。クィーズス式の農法を用いれば、兵糧などを差し引き、帝都民を養ったうえで、帝都外に対する販売や備蓄に回す事も可能となるそうだ。

 八番目、最も外側は軍隊用の区画である。この区画を管轄する部隊は決まっておらぬが、この区画で敵の帝都侵入を防がねばならぬので、それなりの部隊が置かれる事になるだろう。


 三番目の説明にあった血閥特区とは、警備や治安維持などを血閥が担当する代わり、ある程度の裁量が認められ、自由にできる事となった。

 四番目には教皇領として、教会に献上する区画があり、その地域は教会が開発を担当するとの事であった。

 ちなみに、騎士団本部庁舎の設置を求めていたのは、六番目の区画であり、官衙区には騎士団本部支局を置くよう求めていたが、これは却下され、騎士団本部と支局の名称を入れ替える事になった。


 その後、帝都防衛隊総司令官ウォード将軍が着くと、新都周辺支城建設計画について話し合う事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ