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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第51話

 金貨十万枚は魅力的だが今すぐ必要な訳では無い。気になることはあるが。


「ちょっと待て!」


 俺は言葉に魔力を込めてそう言った。タケルがいた日本という国では言葉には霊力が宿るとされていた。セリムに相談すると新しく魔法を創ってくれた。言葉に魔力を込めて話すと強制力が働くのだ。日本で言霊と呼ばれていたので俺も言霊と名付けた。

 そんな言霊に反応して敵軍の動きが止まった。こちらは攻撃を開始している。


「一つ聞かせてもらう」


「仕方ない。冥土の土産に教えてやろう」


「国王は俺を捕まえたら金貨千枚と言っていた。なぜ貴様はその百倍も出せる?」


「それはこのオクタヴァイアンの財力によるものだ」


 やはりエヴラールの言っていたことは正しいらしい。国王親衛隊は金で成り上がれる、と。


「そうか。ならば生かしておいて俺に貢がせるのもありだが…俺は約束は守る男だ。約束通り、貴様を殺す」


「奴を殺せぇ!金貨十万枚だ!貧乏貴族よりも良い暮らしができるぞ!」


 奴がそう言うと歩兵が突撃してきた。

 破城槌で城門を突き破ろうとしたり、城壁に梯子をかけて登ってこようとしたり、投石器の所まで走ったり、隠してあった攻城塔を組み立てたり、十人ずつくらいでまとまっているが全体としては統率が取れていない。


「セリム、準備はどうだ?」


「騎士隊、魔戦士隊、共に準備完了していると連絡が入りました。キアラ様や他の近衛も結界を張ったようです。私も張りました」


「分かった。すぐに攻撃に移る」


 俺はエヴラールに合図をする。


「工兵隊、攻撃止め!」


 エヴラールはそう叫んだ。工兵隊の攻撃が徐々に止んだ。彼らは戦う事が本職では無いのでまあ良いだろう。


 俺は魔眼に魔法陣を描く。奴らがいる場所を土魔法で城壁ほどの高さまで上げてから底を抜いて筒の中に閉じこめる。そして火魔法を撃ち込もう。もちろん爆発させる。その後、雷魔法を三十発くらい撃ち込めば終わりだろう。


「撃つぞ!」


 俺は一応、そう叫んでから撃った。一瞬で地面が俺のいる場所と同じ高さまで上がり、兵士が落ちていった。そして中で爆発が起こった。次の瞬間には雷が三十発、中に突き進んでいくのが見えた。

 魔法が終わると辺りは静寂に包まれた。

 一応、アシルに念話を送っておこう。


 土魔法を解除するから生き残りがいないか調べてくれ。いたら殺せ。


 ───さすがにいないだろう。それと一発と言っていなかったか?───


 すまん。調子に乗った。


 ───今回は良いが次からは乗らないでくれよ。約束を守る男として約束してくれ───


 分かった。では解除するぞ。


 ───ああ───


 アシルとの念話を終わり土魔法を解除する。土魔法や火魔法は他の魔法と違って解除しなければ元に戻らない。まあ魔法によって変わったもの例えば燃えたものなどは元に戻らないが。

 土魔法を解除するとそこには何も無かった。いや焦げた地面はあるが死体や鎧などは無い。


「ジル様、やりすぎですね」


「そうみたいだがどうなったのだ?」


「灰まで燃やし尽くした、と言えば分かりやすいですか?」


「つまりオーバーキルということか?」


「そういう事です」


 セリムはそう言うがエヴラールなどは完全に腰を抜かしている。工兵隊もだ。これほど近くであれほどの魔法を見たことがないのだろう。


「「ジル様」」


「どうした?」


 バローとシャミナードが声をかけてきた。振り向くと跪いていた。


「僕達、犬人一族は何があろうともジル様について行くワン。これからも一緒にいさせて欲しいワン」


「僕達、猫人一族もニャ。ジル様が僕達に死ねって言うなら喜んで死ぬニャ」


「あ、ああ。よろしくな」


 いきなり二度目の忠誠の誓いを立てられた俺は戸惑いながらもそう答えた。


「ワ〜ン、ワ〜ン」


「ニャ〜、ニャ〜」


 この鳴き声久しぶりに聞いたな。確か喜びを表す声だったはずだ。


「セリム殿、感謝致します」


「いや気にするな。私も魔法を知らなければそうなるだろう」


 声がしたので振り向くとセリムがエヴラールを助け起こしていた。

 エヴラールは前までセリムの事を『セリム様』と呼んでいたが最近は『セリム殿』と呼ぶようになった。打ち解けたのだろうか。


「ジル様、魔法を教えてくださいませんか?無理な願いと分かっております。ですが…」


「そうだな。エヴラールには世話になっているから良いだろう。それに最終目標は騎士隊も魔法を扱えるようになることだ」


「ありがとうございます!その時は微力を尽くさせていただきます」


「俺に教わっておきながら微力だと?それはいくらエヴラールでも許せぬぞ」


 セリムが驚いている。


「まあジル様に教えてもらうのだ。謙遜が嫌味に聞こえるくらいには強くなるだろう」


「そういう事だ」


 意味はよく分からないがセリムの言葉に俺も乗っかる。


「ありがとうございます。それと先程の言葉、訂正します。微力ではなく全力を尽くします」


「ああ。頼んだぞ」


 ふと戦場跡を見ると皆が帰ってきている。心なしかいつもよりキビキビしている。


「団長に、敬礼!」


 ドニスがそう言うと皆が敬礼をした。俺も返しておいた。


「皆、どうしたのだろうか?」


 俺はそうエヴラールに問いかけた。


「皆、ジル様の強さは重々承知のつもりでしたが想像を超えるお力に恐れているのではないでしょうか」


 ───エヴラールの言う通りだ。魔王軍も魔王が参戦した後は同じような状態になっていたとヨドークも言っている───


「あーそういう事か。つまり格の違いを思い知ったということか?」


 ───いや、そういうことではない。ジル様の気が変わりその力が自分達に向けられると為す術もなく負けるからジル様の気が変わらないように努力しているのだろう。ジル様がヴォクラー様の前で畏まるのと同じだ───


「理解した。完全に理解した」


 つまり俺の気が変わらぬように畏まっているのだ。俺がヴォクラー様といる時は本能的に格の違いを理解して己の身を守る為に畏まっているのか。魔族は生き残る為に強者に仕えていると聞いたが人間にも同じような事が起こるのだな。いや、生物である以上、死や種の滅亡を恐れるのは自然なことか。

 少なくとも俺は仲間は裏切らない。もちろん相手が裏切れば容赦無く斬るが。そうでなければ示しがつかない。


 俺がそんな事を考えている間に皆は既に入城していた。

 俺はそんな彼らに向かってこう宣言しておく。


「俺はおぬしらを裏切る事は決してない。もしおぬしらの命が危険にさらされたら必ず俺が命を賭して助け出そう。だから皆も俺の為に戦ってくれ」


 即興にしては上手く言えたのではないか?


「この人魔混成団副団長ドニスがジル団長に仕える者を代表してお答えします!我らは永遠にジル団長の剣となり盾となるでしょう!」


 ドニスがそう言うと後ろにいた皆が武器を掲げて雄叫びを上げた。少し遅めの勝鬨だろうか。

 俺も皆に応えるように剣を抜き、高々と掲げた。

 この後はどうすれば良いのだろうか。俺は剣を鞘に収め、手を叩いた。


「よし!では皆に話がある」


 俺がそう言うと静寂が訪れた。


「既に伝えたと思うが四月中に我らの総帥エジット殿下が率いる二十五万の大軍がこの地に集結する。つまりこのままだと二十五万の兵がこの砦に入り切らない。そこで砦を拡張することにした。だからこの辺りの獣を三日以内に全て狩り尽くしてくれ。以上だ」


 俺はそう言って城壁から降り、自分の部屋に戻る。


 ちなみにエジット殿下が率いる大軍の内訳はエジット殿下が集めた十五万。二人の将軍の麾下の五万ずつだ。二人の将軍は国境の守りに騎兵を五千と歩兵を四万五千を残して参戦する。


 大将軍アクレシスは麾下の兵十万を率いて国王軍の後方にて待機する。機を見て国王の身柄を拘束するのだ。敵対予定の東と南の将軍はそれぞれ西の将軍アンセルム卿と北の将軍ジェローム卿が一騎討ちの末、討ち取る。将軍としてのプライドがあるらしく一騎討ちを呼びかければ必ず出てくるらしい。

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