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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第49話

「ジル様、どうかなされましたか?」


 立ち上がらぬ俺を心配してエヴラールが入って来た。


「立ち上がれぬ。力が入らない」


「な!?すぐに侍医を呼んで参ります」


「いや良い。それよりアシルを呼んでくれ」


「はは。どうかご無事で」


 俺が頷くとエヴラールが一礼して退室した。


「ジル、大丈夫?」


「ああ。死にはしないだろう」


「ほんとに大丈夫なの?」


「ああ。疲れただけだ」


「「ジル!」」


 あれ?レリアが二人?いや三人に…いや四人か?


 目を開けると天井が目に入った。しかも俺の部屋のベッドの上の天井だ。ということはベッドで寝たのか?

 俺は起き上がり辺りを見回す。

 朝日か。太陽の光が窓から差し込んでいる。朝になっているのか。

 俺の右側に椅子に座ったままベッドに倒れ込んだレリアがいた。反対側にはアシルがいた。こちらは腕を組んで俯いている。

 そんなことよりレリアが心配だ。


「レリア、大丈夫か?」


「…ん…うん」


 俺が肩を揺するとレリアが眠そうに顔を上げた。眠っていただけか。良かった。


「あ!ジル!目が覚めたの?」


「ああ。眠る前の記憶が曖昧だ」


「後で説明するね。みんなを呼んでくるからアシルさんを起こしておいて」


「アシルなら眠らせておけ。昨日丸一日不眠不休で走り続けたんだ」


「も〜!ジルもでしょ?それに昨日じゃなくて一昨日だよ」


「あれ?そうだっけ?」


「ジルがずっと寝てたの。だから起こしてあげて」


 レリアはそう言うと部屋の外へ出て行った。

 仕方ない。レリアの頼みならアシルを起こしてやろう。

 普通に起こしてもつまらぬから何か特殊なことをしてやろう。

 タケルの記憶にあるシンバルという楽器を創造魔法で創り思いっきり鳴らした。


「起きろ!」


 アシルが椅子ごと後ろに倒れた。


「はははは」


「良かった。ジル殿、あんたはずっと寝ていたんだぞ」


「レリアにも言われた。ずっととはどれくらいだ?」


「帰ってきてからすぐ倒れて昨日は目を覚まさず、今に至る」


「あ、そんなに…」


 アシルは立ち上がりながら説明した。シンバルは消しておいた。


「ジル様!ご無事で?」


「団長がお目覚めに?」


「ジル様!これをお飲みください!」


 皆が入って来た。主要メンバーは揃っているんじゃないかな。最後に入って来た侍医に訳の分からぬ液体が注がれた器を渡された。ちなみに侍医はテクジュペリというエルフの男がやっている。


「なんだ、これは?」


「エルフに伝わる栄養食です。ジル様には栄養を摂って頂かなければなりません」


「美味しいのか?」


「美味しくはありません」


 俺は水魔法で膜を舌にまとわせ味覚をシャットアウトして飲んだ。


「これで良いか?」


「はい。これで三日間安静にしていてください」


「分かった」


 俺は侍医に器を返し、部屋から出ていってもらった。


「ジル様、ご復活おめでとうございます」


「「「おめでとうございます」」」


 フーレスティエがそう言うとアシルとレリア以外の皆が声を揃えてそう言った。


「ああ。そういえば外の騎兵隊は何をしている?」


「このヴァトーがお答えしましょう。奴らはこれから負けます」


「分かった」


 全くわからぬ。


「ドニスからも聞いておこう。奴らはなんだ?」


「はい。彼らは国王親衛隊です。数は約一万。国王親衛隊の約半数が来ました。彼らは団長が出立なされたその日に来て『ギュスターヴ陛下はこのような城を建てても良いと仰っておらぬ。直ちに開け渡すように』と言いました」


「それで返事は?」


「『今は城主が遠征中だ。戻ってからにして欲しい』と言いました」


「奴らの反応は?」


「『五日以内に返事を寄越せ。寄越さなければ国家反逆罪で全員死刑だ。我らが無敗の国王親衛隊ということを忘れるな』と。ちなみに今日が五日目です」


「仕方ない。三日は安静に、だったな。返事を書くから紙と筆を」


 エヴラールが俺が言った二つを差し出した。


「手紙を書くから石を包んで投げてやれ」


 俺は手紙を書いた。『無敗は昨日までだ。ラポーニヤ魔砦城主ジル』と書いた。


「奴らを叩きのめせ」


「御意」


 手紙を読んだヴァトーが笑いながらそう言った。手紙を読んだ順に笑い、礼をした。


 その後、俺は皆と話し合いこの日を終えた。



 そして翌日。俺はキアラの部下を従魔にした。その中でも近衛将軍クラウディウスは豪快な人で仲良くなれそうだった。


 ちなみに近衛の中でも上下関係があるらしい。


 戦闘系は近衛将軍クラウディウスの下にセリム、ヨルクがいる。セリムとヨルクは同格だそうだ。


 戦闘系以外は近衛神官ジュスティーヌの下にレンカ、キトリー(近衛調理師)がいる。レンカとキトリーは同格だ。


 そして近衛の頂点は近衛執事セバス(本名グレン)がいる。執事とは主人、つまりキアラに仕える者を束ねるのが役目らしい。つまり特に秀でているものは無いが剣技や魔術、料理などが一流の上、例えるなら超一流にできるらしい。本職には敵わないが。器用貧乏の上位互換みたいな感じだ。


 そしてキアラの部下を従魔にした翌日、俺はタケルの記憶の整理をして紙にまとめた。それがこれだ。


『タケルの世界では一日を二十四個に分ける。そのわけたものの単位は時間。一時間、二時間と増えてゆく。そしてそれを六十個に分ける。それの単位は分だ。一分、二分と増えてゆく。そして更に六十個に分ける。その単位は秒だ。一秒、二秒と増えてゆく。つまり六十秒で一分、六十分で一時間になる。

 タケルの世界では二十四個に分けた時間を使って約束をしている。つまりタイミング毎に時間とかが決まっているのだ。決め方はその地域の中心を太陽が通る瞬間を十二時、つまり一日の真ん中が十二時になるようにする。そうすると一日の始まりは朝ではなく夜中になる。おかしな話だがタケルの世界ではこれで上手くいっているらしい。十二時の十二時間前にその日が始まる。始まると零時零分一秒、零時零分二秒とカウントされていく。

 タケルの世界では七日間を一纏めにして一週間と呼ぶ。またそれぞれの日に名前も着いている。それぞれ月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、金曜日、土曜日、日曜日だ。一週間の始まりは月曜日とされている。』


 ややこしい世界だな。ちなみにセリムと計算したら一秒はすごく短い。

 この纏めた紙を悪魔達に見せると便利そうだと言っていた。


 そしてその翌日。三日間安静にした俺がついに直々に指揮を執ることが許された。

 俺は全ての防具を纏った。久しぶりに兜を被ったな。

 俺は城壁上に側近を連れて立った。

 そして国王親衛隊とやらに呼びかける。


「手紙を読んだか?」


 俺がそう言うと両軍の攻撃が止まった。セリムを介して両軍の兵士全員の頭に響かせているからだ。


「俺は使徒でありこの砦の城主のジルだ。この三日間は寝込んでいたから参加出来なかったが俺はもう復活した。安心しろ。すぐに終わらせる」


 敵軍から一人の騎士が前に出てきた。そしてこう叫んだ。


「あなたの愚かな部下にかわってその城を開け渡すのか?」


「何を勘違いしている?貴様らが壊滅し敗走するだけだ」


「そんなことにはならん!我らは無敗の国王親衛隊であるぞ!」


「以前までは、な。それとさっきの発言を取り消す」


「わかったならそれで良い」


「貴様らは敗走など出来ぬ。全滅するからな」


 俺はそう言って城壁からおりる。

 そして集めさせた魔戦士隊の前に出る。騎士隊や工兵隊の者も少しだがいる。


「ドニス!前に出ろ!」


 ドニスが走ってくる。


「この三日間、よく耐えてくれた。こちらの被害は?」


「は。三日間篭城しておりましたので死者はおりません。騎士隊の者が数百名、傷を負いましたが命に別状はございません」


「わかった。下がって良いぞ」


「はは」


 ドニスが戻って行く。


「これより作戦を発表する」


 皆が真剣に聞いている。こういうのいいな。


「俺が人狼隊と人虎隊を率いて北門から出て奴らに気付かれぬように奴らの南側に回る。合図をするからエルフ弓箭隊とエルフ魔法隊はそれぞれ奴らの左右を攻撃しろ。騎士隊は北側つまり前方への攻撃の手を緩めるな。一人も逃がすなよ」


 俺がそう言うと皆が雄叫びを上げた。


「では人狼隊、人虎隊。それぞれ全力を尽くせ。獣の姿になっても構わぬ。一人も逃がさぬからな。出陣!」


 俺はヌーヴェルを喚び出して飛び乗り、北門から出る。後ろには五百の獣がいる。頼もしい限りだ。


「ジル様!私もついて行きます!」


 エヴラールが馬に乗って駆けてきた。


「お前の馬は一角獣(ユニコーン)では無い。ついて来れぬ」


「それでも行きます」


「仕方ない」


 俺は魔法陣をエヴラールの進行方向へ出現させる。ヌーヴェルに乗っていては魔眼は使えないからな。魔法陣を対象がくぐれば効果はある。

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