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神に仕える黄金天使  作者: こん
第2章

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第465話

 あれから、アガフォノワと会わぬように気を使いつつ色々と手配を済ませ、昼には魔将王軍に備えた訓練を開始した。

 現在、我が第一軍には銀隊が五十個あるので、全ての銀隊本陣に二名ずつ親衛隊員を派遣した。この親衛隊員の運用に関しては、銀隊長に一任してあるので、どの程度鍛えるかは銀隊長次第ということになる。


 第一軍の本陣には、アキの他には、アガフォノワ、トモエ、武士二人、忠犬飼育係の合計十名を残した。それぞれ、アキは俺の護衛と副官任務のため、アガフォノワは教官として派遣する親衛隊全体の指揮統括のため、トモエと武士二人は言語の壁のため、忠犬飼育係は忠犬の世話のため、である。

 その他の四十名は、ポッカー将軍やジェラルラン副将軍の本陣や金隊本陣など、銀隊より上級部隊の本陣に派遣した。これは訓練のためではなく、作戦や運用に関する指導を名目とした、高級将校の護衛である。さすがにポッカー将軍やジェラルラン副将軍が戦死したら、我が軍の動きも鈍るし、俺も精神的に参る。


 日が傾く頃、ジャッド隊が戻ってきた。とりあえず、銀隊長に親衛隊員を紹介するようアガフォノワに言い、将兵を休ませるよう命じた。

 ジェラルラン副将軍の報告に加え、アキ達からの情報も纏めて共有し、その後の作戦を立てるため、高級士官を集めて作戦会議を開くことにした。ちなみに、俺は事前にアキから色々と聞いている。


「さて、では始めよう。ジェラルラン副将軍、まずジャッド隊からの報告を聞こう」


「はい。先にお詫びします。報告を急いだために報告書はまだ出来ておりません。我が隊が集めた情報ですが…」


 ジェラルラン副将軍はそう言い、地図上の駒を動かし始めた。いや、魔将王軍を表す駒を全て除けた。


「魔将王軍は周囲にはいませんでした。おそらく第三軍を追ってゲーラ県に侵入したのでしょう」


「ああ、ジェラルラン副将軍。その件に関して、我が親衛隊長から報告がある」


 俺がそう言ってアキの目を見ると、アキが右手と右足を同時に出して前に出た。アキにしては珍しく緊張しているようだ。まあアガフォノワに色々聞いて練習もしていたし、仮に変な事を言っても俺が適当に誤魔化してやるから、緊張する必要などないのだ。


「ワタシは帝国騎士団長親衛隊長…兼、大将軍隊首席隊士です。今回は叛乱鎮圧軍援軍を率いる野戦軍陸戦司令官アルヴェーン上級将軍閣下の命を受け、大将軍閣下への伝令として、親衛隊のみを率いて参りました。本題に入りますが、魔将王軍は我々が壊滅せしめ…勝ちました。もう敵ではありません」


 アキは俺の目を何度か見ながら、そう言い切った。

 戦が終わって落ち着いたら、騎士団内に言語力不足を理由とする不敬は概ね不問とする通達をしておこう。アキのような、サヌスト語以外は優秀な将兵を充分に活用するには、遠慮なく話せるよう環境を整えておかねばならぬ。まあテイルスト人は大抵サヌスト語を習得しているし、異国人がサヌスト軍に入隊する事は稀であるから、アキのための通達になるだろう。


「聞いての通りだ。我が親衛隊が確認した全ての巨人ギガントを倒しているそうであるから、魔将王軍から少なくとも巨人ギガントという脅威は取り除かれた」


「ですが閣下、我々が蜥蜴兵と呼ぶ敵の脅威はあるのでは?」


「ジェラルラン副将軍、安心せよ。それはポッカー将軍が策を考えているそうだ。それに、副将軍自身も周囲に魔将王軍の気配がないと報告したではないか」


「いえ、正確には確認できなかった、と報告すべきでした。蜥蜴らしく土中に潜んでいれば、我々も見落とします」


「蜥蜴は土中に巣を作るのか?」


「戦勝記念の酒宴までにお調べしておきます」


 ジェラルラン副将軍に対する俺の疑問には、ハウスラー金士がそう答えた。言外に関係ない事を言わぬよう窘められた気がする。確かに、今は蜥蜴兵ならともかく、蜥蜴の生態などを話している場合ではない。


「話を戻しましょう、閣下。ジェラルラン副将軍、少なくとも我々が調査し得る場所には敵はいない、と、そういうことでいいな?」


「はい。ですから、ラーカー城へ救援に向かうなら、最短距離を進めます」


「ああ、そうか。ジェラルラン副将軍には言っておらぬのか。一時は叛乱軍の手に落ちたラーカー城であるが、援軍が奪還した。魔将王軍についても、その前後で壊滅せしめている。その辺りは…アガフォノワ、説明を」


 ポッカー将軍の言葉に、ジェラルラン副将軍はラーカー城への道を示したので、俺はアガフォノワにそう命じた。ラーカー城の奪還を含め、アキ達が齎した情報の共有をしてからでないと、作戦も立てられぬ。

 アキの負担を減らすためにアガフォノワに説明をさせた。援軍の編成やそれを率いる主要な将校、アキ達が離脱するまでの戦況、その他我が軍の活動に必要な情報を、アガフォノワは端的に説明した。


 アガフォノワの説明が終わると、今度はジェラルラン副将軍が改めて報告を始めた。今度は話が逸れぬよう、作戦に関する私見は話さぬように言い、報告のみをさせた。


 まず、魔将王軍以外の叛乱軍部隊すら発見できず、代わりに発見した痕跡によれば、この周辺の叛乱軍は全て第三軍を追撃し、ラーカー城方面に移動したそうだ。

 落伍兵の話によれば、アレストリュプ侯爵軍はアレストリュプ侯爵自身が率いていたそうだ。だが、周辺の住民の話によれば、つい三日前、近くの村に三百騎弱の部隊が二日ほど滞在した際、その指揮者と思しき男が『国王陛下』と呼ばれ、かつ泊まった村長宅にはアレストリュプ侯爵家の紋章とウェネーヌム州旗が掲げられたそうである。これらの情報から察するに、アレストリュプ侯爵自身は追撃に参加せず、僅かな部下のみを率いて後方に向かっているはずである。


 落伍兵であるが、敵前逃亡等の罪に問わぬという条件で呼びかけを行うと、二千五百弱が集まったそうだ。ただ、その中に士官はおらず、全てが下士官兵であり、かつ大半が装備品を失っているので、戦力としては数えられぬだろう。

 この二千五百名は、エヴラールを部隊長とする仮編成の銀隊、部隊名を付けるまでもないのでバンシロン銀隊と呼ぶが、とりあえずこれに属し、最終的には元の部隊に返す予定である。


「では、ジャッド隊にはアレストリュプ侯爵を追ってもらおう。出立日はジェラルラン副将軍に任せるが、なるべく早い方が良い」


「アレストリュプ侯爵は捕縛ですか、討伐ですか?」


「皇帝陛下は生死を問うておられぬから、別に殺してしまっても構わぬが、なるべくなら生かしたまま捕らえよ」


「御意。閣下の親衛隊員はどういたしましょうか」


「副将軍の好きに使ってくれて良いぞ」


「承知しました」


 ジャッド隊の得た情報であるし、二個銀隊の損耗があるジャッド隊の名誉挽回のためにも、アレストリュプ侯爵はジャッド隊に任せる事にした。損耗があるとはいえ、敵はジャッド隊の一割にも満たぬから、万が一にも負ける事はないだろう。


「我ら本隊は、コンタギオ県都プラーガを奪還する。まあ第二軍が奪還している可能性もあるが、それはそれで良い」


「ブラカーデ城は放棄するのですか?」


「ああ。叛乱軍が利用せぬよう、破壊していく。必要ならば後日再建すれば良い」


「承知しました。我が隊にお任せください」


 ポッカー将軍はそう言い、ブラカーデ城の破壊を名乗り出た。せっかく手に入れたブラカーデ城であるが、これが我が軍の枷になるなどあってはならぬ。敵地の不要な城砦は破壊しておかねば、後で苦しめられかねぬ。


「援軍についてであるが、ゲーラ県とラーカー城の支援に一万騎ほど残し、他は第三軍と協力し、コンタギオ県内で叛乱軍の討伐をさせよ。詳細はアルヴェーン将軍に任せる」


「閣下、お言葉ですが、我らが進んだ後を進んでも、十万の大軍がその戦力を活かせるとは思えません。ここはいっそ、ジロンド州からモリンシ県に侵入し、叛乱軍の後背を突かせた方がよろしいのでは?」


「なるほど。叛乱軍の大部分がコンタギオ県にいるなら、コンタギオ以外の三県を任せても良いかもしれぬな」


「州都も任せますか?」


「我らも進むゆえ、まあ早い者勝ちだな」


「それではそのように手配いたします」


 ハウスラー金士の言う通り、俺達が既に通り過ぎた場所には敵がおらぬのだから、十万の大軍を置いても遊兵化するのみである。ちなみに、ジロンド州とはラーカー城のあるレーヴァック州の東側にある州で、帝室直轄領である。


 その後、深夜までかかって詳細を詰め、ラーカー城への伝令を見送って解散となった。

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