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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第45話

 ヴォクラー様と会ったその日の夜、俺は会議室に側近達を集めた。この部屋は五十人以上が余裕を持って座れるほどの広さだ。その五十人の従者達も入れる広さがある。


 今回、武官はアシル、ドニス、アルフォンス、ラミーヌ、ヴァトー、シャミナード、バロー、文官はカルヴィンと書記官三名を呼んでいる。

 文官はカルヴィンが気を利かせて百名ほど集めていた。それにプラスしてジェローム卿から十名ほど預かっているらしい。カルヴィンが集めたのはちょっと賢い素人だったので文官のノウハウを教えてもらうためにカルヴィンがジェローム卿に頭を下げたらしい。


 こういう場合は身分の低い者から順に集まるのがサヌスト王国の慣例となっているらしい。なので俺はレリアと私室でレンカが入れたお茶を飲んで寛ぐ。


 七杯目のお茶を飲み終えた頃、エヴラールがノックをした。


「エヴラールです。皆様がお集まりになりました」


「分かった。すぐ行こう」


 俺はレリアの方を向いてこう言う。


「ちょっと待っていてくれ。すぐに終わる」


「うん。もう勝手に危ない事はしないでね」


「ああ。約束しよう」


 俺はそのまま部屋を出て会議室に向かう。

 俺の部屋の隣だが部屋が広いので扉同士も遠い。


「長くなかったか?」


「魔族は強い者から集まると聞きました。サヌスト人とは逆ですので人魔混成団として揃えておくべきでしょう」


「そうか。では集まれる者から集まるようにしよう。それとなく伝えておいてくれ」


「はは」


 エヴラールと話していると会議室の前に着いた。

 エヴラールが扉を開け、俺が中に入る。そして俺はゆっくりと皆の間を通り、一番奥の席を目指して歩く。エヴラールが扉を閉めて端の方を通り、俺を抜かして先に俺の席に到着する。そして俺が座る時は椅子を引いてくれる。


「待たせたな。始めよう」


 俺がそう言うと人間は黙って頭を下げた。これもサヌスト王国の慣例らしい。


「今日、ヴォクラー神からのお告げがあった」


 俺はそう言って枕元に置いてあった金色の巻物をエヴラールから受け取る。そしてその巻物に魔力を通すと巻物が開き、文字が浮かび上がる。


『一つ。サヌスト王国第二王子エジットが集めた兵を四月中にラポーニヤ魔砦に集め、互いの実力を知ること。

 一つ。花月の日の朝、ラポーニヤ魔砦を出立すること。

 一つ。人間、魔族を平等に扱うこと。以上』


 最後のお告げは初耳だ。


「質問はあるか?」


「はいニャ」


「シャミナード、なんでも聞け」


「分かったニャ。花月って何ニャ?」


「五月の満月の事だ。今年は七日だ」


「ありがとニャ」


 なぜかカルヴィンがイライラともヒヤヒヤともとれる感情になっていた。俺にタメ語だからか?


「他に質問がないなら次の話題にいかせてもらう。質問はないな?」


「「「ございません」」」


「では次だ。人間の兵が集まるという事はつまり金がかかる。実のところ、もう金が足りない。そうだろ、アシル」


 俺はアシルの方をむく。


「ああ。残り僅かだ。四月分ですら怪しい」


 人魔混成団など俺の配下は月給制だ。一番少ない者でも銀貨十枚だ。この国の平均月収はだいたい銀貨一枚くらいだから多い方だろう。その他にも食糧や武具、飼葉などにも金がかかる。


「え、そうなの?」


「ああ。四月分を払うと残るのは金貨三枚くらいだろう」


「ギリギリだな」


 本当にまずいじゃないか。一ヶ月で金貨千枚くらい必要なのに。


「そういう訳で俺らには金が必要だ。何か案はないか?」


 俺がそう言うとアルフォンスが手を挙げた。


「アルフォンス、なんだ?」


「はい。ヴェンダース王国との国境付近に地下鉱山というものがある、と聞いたことがあります。その鉱山で採れる金属で作った剣は魔王の配下の剣聖王クルツィンガーも愛用したとされています」


 魔王の配下か。ヨドークも魔王に略奪王として仕えていたと聞いた。なんとか王とは何人いるのだろうか。


「なるほど。ヴァトー、何か知らないか?」


「クルツィンガー様の剣と言えばミスリル製と決まっています」


「僕も一度だけミスリルを見たことがあるワン」


 名案を思いついた。


「そうか。ならばそれを剣にして売ろうか」


「どこで売るニャ?売る場所によって剣の種類を変えないとダメニャ」


 確かにどこで売るかは問題だ。国内で売れば敵に買われるかもしれない。そうなれば敵を強くするだけだ。


「それなら私に一つ案があります」


「ドニス、なんでも言ってくれ」


「はい。海を渡り、東へ進むとヤマトワという島国があります。そこに暮らす者の約半数が剣士であると聞いたことがあります」


「海を渡るのか。どこから出るのだ?」


「王都より南東に進むとブロンダンというサヌスト王国最大の港町があります。そこから出てはどうでしょうか?」


「東と南は両方敵だ。大勢では行けないぞ」


 ドニスが考え込むように黙り込んだ。


「まあいいや。そこは何とかする」


 ドニスが考えるのを放棄したような表情(かお)になった。


「よし決めた。犬人と猫人は十五日以内にできるだけ多くのミスリル製の剣を作れ。それと同時にラポーニヤ山に置いてきた物の中でいらない物を全て売って旅費を稼げ。いらない物だけだぞ。あとステヴナンのミミルという男が営む舟屋に挨拶に行くからこの砦で売れそうないらない物を集めろ」


「「「御意」」」


「バロー、シャミナード。早速だが地下鉱山に行き、作業を開始してくれ」


「「了解ニャ(ワン)」」


 バローとシャミナードが部屋を出て行った。


「アシルはラポーニヤ山に転移する魔法陣を描け」


「分かった」


「ヴァトー、ラポーニヤ長老院の者ですぐに動ける者を連れて売っても大丈夫な金目の物を持ってこい」


「はは」


 アシルとヴァトーが肩を並べて部屋を出ていった。この二人は意外と仲良しだ。


「文官組はジェローム卿とエジット殿下にヴォクラー神のお告げの内容を全て伝える手紙を書いて鳩に着けて飛ばせ」


「「「はい」」」


「カルヴィンは金貨百枚を用意してくれ。なるべくこの砦でいらない物を売って稼いで欲しいが最悪の場合は教会に寄付金を募れ」


「三日以内にご用意致します」


 カルヴィンが部屋を出ていった。


「この四人の知り合いの中に商人はいるか?」


「あ、それならフローラン殿の兄は元々商隊の隊長だったはずです」


「ドニス、本当か?」


「はい。ですが盗賊に襲われた際、足に怪我を負い寝たきりになってしまったようです」


「そうか。ではフローランと他の誰か二人に交渉術を身につけてもらおう」


「そのように頼んで参ります」


 ドニスが部屋を出て行った。


「ではヤマトワに行くメンバーはどうしようか?」


「なるべく少人数で行く方がよろしいかと」


 アルフォンスがそう言った。


「では俺と俺の従魔とレリア、エヴラール、交渉人を三人、侍従武官を二人といったところか」


「団長自ら行かれるのですか?」


「半数が剣士なんだろう?何人かスカウトしようと思ってな」


「そうですか。ではなぜ金貨百枚も?」


「そうだな…海を渡るには湖を渡るような舟では海は渡れぬだろう?ミミルには大きい船を買ってもらわなければならぬ」


「そうですな」


 その後、文官達が書いた手紙を確認し、解散した。


 俺は部屋に戻り、ヤマトワに行くことなどをレリアに伝える。


「レリア、四月と五月は忙しくなりそうだから三月の終わりくらいから一ヶ月くらい旅行に行こう」


「どこに行くの?」


「ヤマトワだ」


「?」


「あー、東の方にある島国だ」


「船旅ってこと?」


「ああそうだ」


「お金は大丈夫なの?」


「ああ。旅行のついでに稼ぐからな」


「そうなんだ。港までは何で行くの?」


「馬だ。途中の街々に寄って観光していくのも良いだろう」


「え、また馬?」


「移動中はキアラ達と一緒にいたら良いだろう?」


 俺はキアラを喚び出す。


「な、キアラ?」


「ええ。移動中くらいなら大丈夫よ」


「そうだね。レンカさんのお茶も貰っていい?」


「もちろんよ。ところでジル様、魔界から残りの近衛を呼び寄せても良いかしら?」


「なんだっけ?執事と調理師と神官と…」


「将軍よ。レンカのお茶に合う料理をキトリーに作らせましょう。キトリーの料理は格別に美味しいわよ」


「楽しみにしておくね」


 一応レリアへの説明も終わったので二人が話している間にセリムも喚び出す。

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