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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第44話

 砦が完成してから十日程経った頃、ドリュケール城に置いてあった私物が届けられた。ベッドは借り物だったので犬人の職人に作ってもらった。食事用テーブルも借り物だったので猫人に作ってもらった。


 そのベッドで寛いでいるとキアラから報告があった。


「ジル様、序列が決まったわ」


「そうか。部隊編成は?」


「それは今やっているところよ」


「そうか。では完了次第報告してくれ」


「分かったわ。ところでジル様、ヴォクラー様から貰った指輪に魔力は込めたのかしら?」


「まだだ。では今からやるとしよう」


「ジル様が意識を失っている間は妾の指揮の下、護衛をするわ」


「では準備が出来たら教えてくれ」


「準備なんて一瞬よ」


 キアラがフィンガースナップをするとキアラの近衛三人とヨドークが現れた。オディロンは遅れてやって来た。


「さあ魔力を込めてちょうだい」


「ああ」


 俺は魔力を指輪に込める。全身の魔力を指輪に注ぐ。

 意識が遠のいてゆく。ヴォクラー様が姿を変えてくださった時のように、眠りにつく。



『…ル。早く起きんか、ジル!』


 ここはあの時の神殿だ。

 俺が目を覚ますと目の前にはヴォクラー様が立っていた。


「ヴォクラー様!」


「ジルよ、久しいな」


「はい!」


「今回はあまり時間が無い。早速本題に入らせてもらう」


「お願いします」


「前に中位神十柱で管理する三つの世界があると言ったな?」


「はい。元々俺がいたイェンスウェータ。俺が今いるヒルデルスカーンとあと一つですね?」


「うむ。イェンスウェータは魔法と化学の両方にヒルデルスカーンは魔法に興味が湧くようにした。つまりイェンスウェータは魔法と化学が発展し、ヒルデルスカーンは魔法が発展するはずだった」


「でもヒルデルスカーンの人間は魔法の事をほとんど知りませんでした」


「そうだな。だがそれは今は置いておく。もう一つの化学が発展するようにした世界アーチスキュウがある。その世界の人間の魂が私の手元にある」


「なぜですか?」


「生物神の配下二柱が滅んだ影響だ。幸いアーチスキュウ以外の世界には影響がない。そのアーチスキュウの人間の魂が一つある。だが人格を失っている」


「何が残っているのですか?」


「記憶だ。この記憶をジルに授けようと思う」


「なぜ俺に?」


「完全ではない魂は暴走する事が多く、どの神も引き取りたがらない。だがジルならばその魂を完全に自分のものとするであろう」


「なるほど」


「こちらはヒルデルスカーンのジルの上に置いておこう。キアラの配下ならば使い方がわかるだろう」


「ありがとうございます」


「そして二つ目。今度はよく聞け。四月中にエジット軍を全てジルの砦に集め、訓練させよ。そして花月の日、出陣すれば苺月の日までにエジットは玉座を手に入れられるだろう」


「分かりました。今度、宴を開くのでその時に発表します」


「うむ。本当はジルが作った部隊の人魔混成団魔戦士隊のみで国王軍を壊滅させる力を持っているのだがそれではダメなのだろう?」


「はい。エジット殿下に兵を率いてもらわなければなりません」


「建前やらなんやら人間は難しいな」


「俺もそう思いますよ。バローという犬人を見ていると人間は回りくどいことばかりをして自分の好きなように生きれないのでは無いか、と」


「そうかそうか。それではここからそのバローとやらを眺めて待っていよう。次からは狼月の日に会えるだろう」


「本当ですか?」


「うむ。ではまた狼月の日にな」


 ヴォクラー様がそう言うとヴォクラー様がぼやけていった。そしてまたあの睡魔に襲われた。



 目が覚めた。ベッドに寝かされていたようだ。俺の頭上に人の頭ほどの大きさの光の玉が浮かんでいる。枕元には金色の巻物が置いてある。


「終わった。セリム、これの使い方は分かるか?」


 俺はそう言って光の玉を指差す。


「ジル様!」


 俺が目が覚めた事に気がついてなかったのかセリムがそう言うと俺の周りにいた者が振り向いた。


「それを使われるのですか?」


「ああ。セリムなら分かるだろう?」


「はい。ですが危険です。成功率は一割もありません。それに私も初めてなので成功率は限りなく低いでしょう」


「失敗するとどうなる?」


「理性を失いその者が一番大切にしているものを破壊するまで暴れ続ける、と伝承にあります」


「一番大切にしているもの、か。分かった。オディロンはヨドークとレリアの護衛をしろ。そしてキアラとヨルクとレンカは俺が暴走したら直ちに殺してくれ」


 俺は部屋にいる皆に指示をする。


 ───ジル様、どうか成功してくれ───


 もちろんだ。もしもの時はレリアを頼む。


 ───命を賭して守ろう───


 オディロンはそう言うとヨドークを頭に乗せて部屋を出ていった。


「ジル様、どうかキアラ様のお手を煩わせぬようお願い致します」


 レンカだ。この人はこんな感じだが俺が無事であるように応援してくれているのだ。


「ジル様、拙者も主を斬りたくありません。どうか成功なさいますよう」


 ヨルクだ。やはり応援してくれている。


「ジル様、妾からはアドバイスをあげましょう。その記憶に気は遣わなくて良いわ。逆に気を遣わせるくらいがちょうど良いのよ」


「どういうことだ?」


「そうね…馬に例えるとわかりやすいかしら。ジル様が馬に乗せてもらうのではなく馬がジル様に乗ってもらうイメージよ」


「よく分からぬが記憶を乗っ取るつもりでいさせてもらう」


「そうよ。その意気よ」


 キアラのアドバイスの意味は分からぬが記憶を乗っ取るイメージでいよう。


「ジル様、よろしいですか?」


「ああ。頼む」


 俺はセリムに頼む。セリムは俺たちが話している間に黙々と精密な魔法陣を描いていた。その大きさはこの部屋とほぼ同じだ。


「では参ります」


 セリムがそう言って光の玉に右手を翳し、俺に左手を翳した。

 そして何やらよく分からぬ言葉を言い出した。俺は怖くなってきたので目を瞑った。


 始めてからどれくらいの時が経っただろうか。俺は目を開く。

 すると光の玉が小さくなっていた。足の小指の爪程の大きさだ。

 それを俺は睨む。

 俺に受け取ってもらえてよかったな。

 そう思いながらひたすら睨む。恐らく効果はないだろうが。


 やがて光の玉が完全になくなった。


「ジル様、終わりました。体に異変はございませんか?」


 俺は体の調子を黙って動かずに確かめる。

 異常はなかったので少し脅かしてやろうと思う。


「…う…う…ぐ…ぐぁ〜…」


 俺はそう言ってセリムに抱きつく。

 まずい。ヨルクとレンカが剣を抜いた。キアラに至っては魔法陣をいくつも描いている。


「セリム、成功だ〜!」


「…?」


「セリム、感謝する!」


「…成功して良かったです」


 ヨルクとレンカが剣を鞘に収め、キアラが魔法陣を消していた。


「ジル様、驚かせないで欲しいわ」


「すまぬな。そのまま成功と言うより一瞬失敗かと思わせてから成功と言った方が喜びも大きいだろう?」


「…そうね」


 キアラがオディロン達を念話で呼び戻す。


「ジル様、新たな記憶はどうですか?昔の事を思い出すようにすると分かると思うのですがどうでしょう?」


 俺はセリムに言われた通りに思い出す。

 この記憶の持ち主はアーチスキュウの日本という国に生まれた男のようだ。十四歳の時、前代未聞の病にかかり命を落としたようだ。生物神の配下二柱が滅んだ影響か。


「ダイジョウブダ。チャントキオクハテイチャクシテイル」


 記憶にあった日本語で答えたみた。


「それは魔王語では…」


「魔王語を知っているのか?」


「ええ。詳しい事は後ほどお教えしましょう」


「頼んだ」


 ちょうどオディロン達が部屋に入ってきた。レリアも入って来た。


「ジル、危ない事をやってたの?」


「危なくはないぞ。九割以上の確率で暴走するかもしれないだけだ」


「九割以上…やっぱり危ないよ!」


「俺ならば一割未満のチャンスを百回連続で掴み取れる自信がある。危険ではないだろう?」


「…うん」


 レリアの不安を無事解消できたようだ。

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