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神に仕える黄金天使  作者: こん
第2章

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第400話

 翌朝。まだ陽も昇らぬうちに、エヴラールが近づいてきた。ちなみに、今回の演習には白蓮隊は参加しておらず、従卒の二人も連れてきておらぬ。

 服を着ぬまま眠るアキを起こさぬように連れて、アキの幕舎に転移し、毛布に包んでから俺だけ戻った。


 エヴラールの呼び掛けに応じ、幕舎から出ると、軽めの食事を持ってきていた。


「おはようございます、ジル様。朝食をお持ちしました」


「礼を言う」


「は。コティヤール総帥閣下より伝言がございます。お伝えしてもよろしいですか?」


「ああ」


 俺は朝食を受け取り、移動しながらジュスト殿からの伝言を聞いた。

 ジュスト殿は使節団の見送りに行き、その後はプティジラール城の城守に会いに行くため、早朝に出発したそうだ。それゆえ、直接の引き継ぎもできなかったそうだ。別に起こしてくれても構わぬと伝えていたのだが、多少は気遣われているようだな。


 朝食を食べ終える頃には、魔法の発動地点に着いた。よほど離れていなければ、俺は中心部に行かずとも魔法の効果を及ぼせるが、今回は候補生の見本とならねばならぬので、模倣が易いよう中心部で魔法を発動する。

 牛馬が驚いて暴走せぬよう、既に担当の将兵が準備を整えているので、牛馬の心配は必要なく魔法を使っても良い。

 既に候補生は集まっており、教官と入り乱れて待機していた。


「集まっているな。では始めよう」


 俺はそう言い、上空に半径二十メルタル程の魔法陣を描いた。内側半分に地盤強化の魔法術式を刻み、残りに広範囲地震の魔法術式を刻んだものである。これを、俺とラヴィニアとで半分ずつ制御し、地盤強化と広範囲地震を同時に行う。

 魔法陣を描く理由であるが、天変地異ではなく人為的な事象であると他国軍に認識させるためである。さすがに、長時間の地震と上空の異常が重なれば、天変地異とは思わぬだろう。


 魔眼を介して魔法陣に魔力を流し込み、地盤強化を始めた。すると、地下の魔法陣が俺の魔力に反応して起動した。

 天眼を用いて魔法陣を視ると、俺の魔法を排除しようとしていた。どうやら、厚さ五メルタの地面の密度は、この魔法陣によって調整されていたようで、抵抗されているようである。

 俺は地下の魔法陣を描き換えるため、大量の魔力を地下に流し込んだ。幾分かは地中の水に溶け込むが、魔力が豊富な水というものは、生物を健康体にし、土に栄養を与えて豊作にする作用があるだけなので、大した問題は無い。


 地下の魔法陣を都合の良いように描き換え、上空の魔法陣を本格的に発動させた。ちなみに、ラヴィニアは俺が地下の魔法陣を描き換えている間も、ずっと地面を揺らしていた。少しは手伝ってくれても良かったのではなかろうか。

 土の層の最下層部である水と触れる面は、植物の根のような岩石で、崩れぬように補強され、所によっては面ごと石化している箇所もあった。


 その後、昼食が運ばれてくる直前まで地盤強化を続けた。余裕を見て予定を決めたつもりであったが、地下の魔法陣の抵抗など予想していなかったので、危ういところであった。

 俺の作業は終わったが、地震も俺がやっている事になっているので、念話でラヴィニアに伝えて交代し、ラヴィニアには魔法を使っている演技をさせた。


「ジル様、昼食をお持ちしました」


「ああ。では終わろう」


 俺はそう言い、上空の魔法陣を消した。ただ消すだけでなく、他国軍に対する威圧のため、演出じみた消し方をした。


「途中も教官らによる説明があったと思うが、簡単に纏めよう。まず、地震に関しては一切の問題は無かった。事前の説明通りだ。地盤強化に関してだが、こちらは地下の魔法陣の抵抗があったゆえ、これを描き換えた。それ以外に問題は無い。以上だ。これより昼食を摂るゆえ、質問があれば問うて良いぞ」


 俺はそう言い、食事を始めた。もちろん、俺だけでなく教官と候補生の分も用意されているので、俺だけが食事をするだけではない。


 昼食後、本陣に戻って千騎長以上の士官を集めた。

 ジュスト殿やシヴァコフ帝国騎士に同行している者もいるので、五千騎長が一名、千騎長十名しかおらぬ。まあそれぞれが副官などを連れているので、それなりの人数にはなっているが。


「地盤強化は先ほど完了した。それゆえ、水路を作り始めても構わぬ。先に決めた通り、ドゥメルク隊、バーネイ隊、オブライエン隊はシュランク川側から、ロビック隊、ツォンガ隊、ヴァスール隊は本陣側から、それぞれ掘り始めよ。カドリ隊とフルーロ隊はそれぞれの補助、メスキダ隊とアロー隊は引き続き陣地の管理を」


 俺は地図を確認しながら、そう指示した。千騎長も無能ではないから、水路の敷設程度、少しの確認で完遂できる。


「閣下、事前の取り決め通り、私がシュランク川側の三隊の指揮を?」


「いや、カドリ隊も加えた四隊を、グラシエット隊とする。工期は定めぬゆえ、無理のない敷設を心掛けよ」


「承知しました。お任せを」


 グラシエット五千騎長は、辺境軍の歩兵を指揮する五千騎長である。普段は、ドゥメルク千騎長、バーネイ千騎長、オブライエン千騎長、カドリ千騎長、フルーロ千騎長の隊を指揮下に置いている。

 ちなみに、去年ジェローム卿が推し進めた軍制改革により、全ての兵科の指揮官を騎長と称する事となった。歩兵の指揮官も、指揮のために騎馬しているから、という建前だそうだ。まあ実際には、各軍で違った呼称を統一して管理を容易くするためであろう。


「水路の敷設はそれで良いとして、昼までの地震による被害はあったか?」


「私が代表してお答えします。トゥイード特別文書管理官殿から、本棚が全て倒れたとの被害報告がありました。他に被害らしい被害は報告されていません。ああ、これは被害ではなく苦情ですが、不寝番の将兵から、ようやく眠りについたのに起きてしまった、と。以上です」


「承知した。不寝番の将兵には詫びに休暇を与えよう。アロー隊から代わりを選出せよ。それから、メスキダ隊から幾人かを、特別文書管理官の手伝いに向かわせよ。粗雑な者を寄越すでないぞ」


 アロー千騎長は冗談めかして言ったが、不寝番の将兵の事を完全に忘れていたな。確かに、少し考えてみれば、見張りに起きていた者が交代した直後に長時間の地震があれば、迷惑に思われても仕方ないし、それが士気の低下に繋がる可能性もあった。苦情程度で済んで良かった。


「ではそういう事であるから、各自、隊に戻って任務を開始せよ」


「「「御意」」」


 グラシエット五千騎長や千騎長達はそう言い、それぞれ副官などを伴って幕舎から出ていった。なぜか分からぬが、昨日以前よりも威勢が良いな。まあ良いことである。


 地図を片付け、幕舎を出ると、アキが待っていた。アキも副客将軍として五千騎長と同格であるゆえ、途中からでも参加すれば良かったろうに。


「客将様、図書館がやられてリンが困ってたぞ」


「ああ。報告は聞いた。手伝いを寄越すよう命じたゆえ、案ずる必要はない。それより、俺は明日以降の実習訓練の用意に行くが、おぬしも来るか?」


「行く。だが、どうせ二人きりじゃないんだろ?」


「ああ。エヴラールとダレラックを連れて行く」


「四人か。ならいい。ワタシも行く」


「そうか」


 俺はアキを連れ、エヴラール達と合流した。

 候補生達は、それぞれの幕舎に自らの教材となる書物を持ち込んでいたようで、それを用いて学んでいた。許可をしたのは俺だが、まさか全員が持ち込んでいるとは思わなかった。


 アキとエヴラール、ダレラックを伴って、先程の魔法の発動地点に来た。

 ダレラックの助言を受け、一辺が百メルタ程の正方形の範囲の地面に硬化魔法を付与し、さらにその上に創造魔法で創った石畳を敷いた。

 それから、的になる岩を十個ほど創り、これにも硬化魔法を付与した。

 石畳を敷いた訓練場の北側に休憩所を設け、その近くに水魔法の魔法陣で井戸を作った。これは、魔力を込めれば込めた分だけ水が生成されるので、魔力操作の良い訓練になるだろう。


「客将様、こんな時期に冷水しか出ないじゃないか。風邪ひくぞ」


「それもそうか」


 石畳の具合を確かめていると、アキが井戸の魔法陣を発動させてそう言った。確かに、この時期に冷水だけでは、風邪をひかぬとしても士気に関わるな。

 水魔法の魔法陣の隣に、火魔法の魔法陣を刻んでおいた。これで、冷水が嫌な者ほど真剣に魔力操作を学ぶだろう。

 いくら教官と言えど、全く魔法を使えぬ者が言う理論では説得力が足らぬから、最低限の魔力操作と魔法を覚えてもらわねばならぬ。

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