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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第3話

 騎士達と夜ご飯を食べた。


 その中ではエジット殿下の優しさやたくましさを騎士達から聞いた。


 まず、優しさを語ってくれたのは騎士達のリーダーのジュストという騎士だった。この人は武の才能はあったが礼儀がまるでなっていないとの事だ。よく酔っ払って上司に喧嘩を売り、こてんぱんにされたらしい。そのせいか傷も多い。途中までは罰則があっても功績で帳消しにしていたらしいがそれもいつまでも続く訳もなく最後には罰則と任務失敗が重なり、解任となったらしい。

 その時にエジット殿下に雇ってもらったらしい。

 今はエジット親衛隊(非正規)の隊長をしているらしい。


 たくましさを語ってくれたのはルイという人夫の部隊の隊長だ。

 人夫というのは軍隊の世話係みたいなものだ。食糧を運んだり、ご飯を作ったりしたりする。確か何かの本にそう書いてあった。

 この男は元々商隊の隊長で盗賊に襲われていたところをエジット殿下に助けられたらしい。それ以来、エジット殿下に忠誠を誓っているらしい。






 まぁそんなこんなで夜ご飯が終わって幕舎に戻った。


「ジル殿、俺はあんたを鍛えようと思う」


 俺を鍛える?もう俺はある程度筋肉ついてるけどな。精神的な事か?


「鍛えるって何を?」


「あんたを戦えるようにする。あんたは良い武具を持っているがそのままでは宝の持ち腐れだ」


 あー、俺が弱いって事か。確かさっきも助けられたし。


「ああ、頼む」


「じゃあ行くぞ。ついて来い」


 そう言ってアシルは幕舎を出ていった。

 俺はアシルについて行くべく幕舎を出た。


「あれ?」


 すぐに出たはずなのにもうアシルはいない。


「ここだ」


「!」


 すぐ隣にいた。全く気配を感じさせなかった。まぁ俺は元々気配なんて感じられないが。

 というよりもアシルの格好が原因だと思う。

 黒いマントのフードを被っている。まるで暗殺者みたいだ。

 昼は朱色のマントだったのに色が変わっている。


「マントの色変えた?」


「変えていない。リバーシブルだ」


 そう言いながらアシルはマントをとって朱色の方を表にして着け直した。


「じゃあなんでフードなんて被ってるんだ?」


 疑問だ。これは実に気になる。ただカッコいいからとかだったら面白いがアシルはどんな理由だろうか。


「雨が降っても濡れたくないからフードを被る。だが雨の時だけつけて調子が狂ったら嫌だから普段から被っている。わかったなら。行くぞ」


「あ、ちょっと待て。一言伝えて行く」


「殿下はもう寝ていると思う。お前に寝台(ベッド)を貸していたから一睡もしていないからな」


 え?すごく申し訳ない事をしたような気がする。いや、気がするではない。悪い事をしたんだろう。明日、礼を言おう。


「じゃあ他の人に言ってく。見張りもいることだし、その人に言って来る」


 俺は言い終える前に走り出した。一瞬振り返ると溜息をついていた。


「あ、ルイ殿、少し良いか?」


「なんでしょうか、ジル卿?」


「今夜はアシルと鍛錬をしてくるからあの幕舎は怪我してる人に使ってもらってくれ」


「いけませんぞ。上に立つ者がそうでは下の者に示しがつきません。それに鍛錬と言っても一晩中する訳ではありませんよね?途中で寝床が変わるよりも多少、場所が悪くとも一晩中起きずにぐっすりと眠った方が体も休まりすので」


 俺が親切心で言ったのにな。こうも否定されるものか?


「その心配はない。鍛錬は一晩中する。怪我人を寝かしておけ」


 横からアシルが会話に入ってきた。え?一晩中鍛錬!?


「なんと!ではありがたく使わせていただきます。それといつ頃戻られますか?」


「夜明けまでには戻る」


「承知しました」






 ルイ殿に報告してからアシルは朱色になって走り出した。俺も全速力で追いかけるため、鎧に戻れと念じたら戻った。

 体が軽くなったので楽について行ける。


「どこまで行くんだ?」


「オディロンの所まで行く。もっと速く走るぞ!」


 そういうと本当に速く走りやがった。






 もう走れないくらい走った頃、オディロンの姿が見えた。

 俺は達成感のあまり、倒れ込んだ。

 水をかけられた。


「おい!何すんだよ」


「起きろ。たった十メルタルじゃないか。こんな短距離でへこたれてどうする?」


 メルタルというのはこの世界の距離の単位だ。一メルタルは前の世界の単位で表すと一・五キロだ。つまり、十メルタルは十五キロということになる。因みに一・五メートルは一メルタ、一・五センチは一メタ。つまり、ルが一つ増える事に十倍、その次は百倍されるというわけだ。


 まあ、そんなことは置いておいて辺りを見回す。

 小川が近くにある。いわゆる、川原という場所だ。


「我ら天使族は眠ることは無い。食事によって体力を回復させる」


 アシルがそう言いながら積んであった木に火をつけた。


「オディロンが魚を用意してくれた。食うぞ」


「おう」


 あれ?魚ってことはオディロンが水に入ったってことだよな?虎ってでっかい猫じゃねぇのか?水大丈夫なのか?まぁ過ぎた事はもういいか。


「焼けたぞ。骨も頭も尻尾も残さず食え」


「わ、わかった」


 魚に何か恨みでもあるのか?逆か?恩があるのか?まぁ言われなくても食べるつもりだったが。


 二人で何も喋らずひたすら魚を食べた。

 心なしか体が楽になったような気がする。


「剣を貸せ」


「何をするんだ?」


「それは見てからのお楽しみだ」


「ほらよ」


 俺は鎧に来いと念じて剣を鞘ごと渡した。

 槍は来なくても良いのに来てしまうな。まだ掴んでいないのだが早く掴めとばかりに俺の視界に入ってくる。

 俺が槍から逃げているとアシルに話しかけられた。


「何をしている?剣だけ召喚することも鎧だけ召喚することも槍だけ召喚しないこともできるぞ。なぜ全て喚ぶ?」


「あ、そうなの?早く教えてくれたら良かったのに」


 なんか、アシルが冷たい気がする。


 槍…戻れ…槍…戻れ…。


 槍が戻った。なんか可哀想だな。呼ばれたのに使われずに還されるなんて。


「受け取れ!」


「うぉっ!」


 アシルが俺の剣を投げてきた。ギリギリのところで受け取った。

 剣を見ると鞘から抜けなくなっていた。


「それで俺を叩いてみろ」


 そう言いながらアシルは朱色マントを外した。

 全体的に黒を基調とした鎧だ。鎧なのかな?


「さぁ、来い!」


 舐めやがって。


 俺はアシルの頭目掛けて剣を振り下ろした。


「バカめ」


 あれ?


 俺は地面に寝転んでいた。アシルを上に乗せて。


「うりゃ!」


 俺は油断しているであろうアシルの首筋目掛けて剣を振り上げた。

 アシルは飛び退いて避けると後ろにあった木を足場にしてこちらに飛んできた。俺はそのアシル目掛けて剣を突き出した。それをギリギリで躱したアシルは俺の腹に飛び蹴りを喰らわせた。

 その足へ俺は剣を叩きつけた。


「やるな、合格だ」


 腹を押さえて蹲る俺を見下ろしながらアシルはそう言った。

 上から目線だな。俺の補佐なのに。


「剣術の次は弓術、その次は槍術だ。全てが一段落したら、魔術。俺はあんたに教えられるくらいには使える」


「魔術って何だ?」


「簡単なものだと念話とかだ。あの頭の中に声が響くのが念話だ」


「それをやりたい!」


 それってヴォクラー様やオディロンが使ってたヤツだよな?


「わかった。やる気がある方が良いしな。では弓術の次に教えよう」


「え?」


「あんたも弓くらい使えるようになった方が良い。あんたは筋力があるから強弓を使え。念じれば矢と一緒に来るようにヴォクラー様に頼んである」


 弓矢…来い…弓矢…来い…。


 念じると剣を帯びていない方の腰、つまり右腰に矢筒が来た。


「これを引くのか?」


 俺は弓の弦を弾きながらそう尋ねた。


「無論。まずはあんたが思うようにやってみろ」


 俺は矢を取り出して俺が思うように射ってみた。アシルを狙って。


「なぜ俺を狙う?」


 アシルは剣で防いだ。強弓ってことで矢は速かったんだがアシルは真っ二つに切り裂いた。


「合格か?」


「合格だ。細かいことは次教える」


「じゃあ、次は魔術だな?」


「ああ、念話を教える。そうだな…あんたが眠った後のことを念話で教えよう」


「ああ、頼む」


 俺が眠った後という事は使徒として降臨した時のことだな。

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