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神に仕える黄金天使  作者: こん
第2章

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第387話

 使節団長らが到着したのは、奴隷制廃止に向けた協議を始めた頃であった。


「お呼びと伺い、参上しました」


「うむ。とりあえず座ってくれ」


 クロヴィス公爵が代表してそう挨拶し、陛下に言われて三人が着席した。

 ちなみに、クロヴィス公爵、ヴィンセント公爵、ジェラール侯爵のうち、ジェラール侯爵のみ仕官しており、法律関係の部門の長であったらしいが、余剰人員抽出に際して、自らを余剰とし、ここにいるそうだ。


「既に聞いていると思うが、改めて命ずる。ヴィンセント公爵はクィーズスに、クロヴィス公爵はシュラハトール同盟に、それぞれ使節団を率いて行ってもらう。ジェラール侯はクロヴィス公の副長として行ってもらう事に変わった」


「承知しました」


「そういう事だから、今日は詳細を詰めよう」


 クロヴィス公爵は相変わらず代表して答えた。家格によるものか、単なる取り決めかは知らぬが、他二人は何も話さぬ。さすがに、必要になれば話すだろう。

 その後、使節団長らと共に詳細を詰めた。


 まず、出来れば武力に依らず、併呑を叶えたいが、最悪の場合は武力による併呑の用意があることを伝える事も許可した。

 最悪、使節団が殺害され場合に備え、三月末までの帰還がなかった場合、四月から軍事行動を起こす、と交渉相手に伝える事となった。

 中央軍から精鋭三百騎ずつを護衛隊として、使節団に同行させる。護衛隊長は、クィーズスへの使節団にはイヴァン、シュラハトール同盟への使節団にはギャスパーが選ばれ、いずれも中央軍士官のうち、ゼーエン作戦に参加した者である。


 使節団長に対し、白蓮隊員が二人ずつ補佐として附けられた。クィーズスへの使節団にはホジャーク組長とクライフ、シュラハトール同盟への使節団にはバルテリンク伍長とスカロヴァーである。

 この四人は、この功績を以て要職に就く計画だそうで、失敗するつもりはないようだ。


 使節団長らとの話が終わると、今度は貴族制度の改定について協議が始まった。奴隷制廃止の話は、とりあえず置いておくようだ。

 武家と公家の統合であったり、武家に与える爵位であったり、各家へ下賜する家名であったり、まあ色々ある。だが、俺が口を挟むべきではなさそうだったので、黙って聞いていた。

 その後、具体的に決まった事は、主に三つである。


 まず、武家と公家の統合は一月十日に各家へ通達し、武家に対してはその際に爵位が伝えられる。

 爵位については、上から大公、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵、帝国騎士アンピール・シュヴァリエである。帝国騎士は、更に五段階に分けられ、上から一等、二等、三等、四等、五等となる。これは、俸禄の問題もあって武家貴族の大半を男爵以下に叙するが、それでは中級の武家も下級の武家も同じ扱いになるため、制定される。

 武家の爵位については、現当主と前当主、前々当主の功績によって定められる。ただし、将軍格家は現役と退役で二人の当主がいるため、退役当主を一律で伯爵、現役当主は現在の官職に応じ、一等帝国騎士以上に叙することに決まった。

 それから、今は俺だけの問題であるが、複数の爵位を同一人物が有する事も許可された。つまり、俺は公爵でもあり、一等帝国騎士でもあるということだ。この場合、俸禄は公爵の全額、一等帝国騎士の三割を賜ることとなる。


 次に、家名の下賜についてであるが、これは通達の翌日、一月十一日になされる。

 古代サヌスト王国の慣習に基づくのであれば、家名は皇帝陛下より直接に賜るものであるが、そんな事をしていては、数日を要するので、皇帝陛下直筆の書状を持った使者を、各家に派遣する。これは三十人ほど用意されている。

 家名の扱いであるが、爵位に組み込まれることとなった。つまり、今までは公爵は『公爵』という爵位を持ち代々相続したが、これからは、俺でいえば『ロード公爵』という爵位を保有し、代々相続することになるのだ。また、下賜された家名は、そうでない家名と区別し、爵位とあわせて爵位名と呼ぶこととなった。

 家名が下賜される対象であるが、男爵以上に限られる。帝国騎士は家名を自称する必要がある。なお、血閥に所属する帝国騎士は特例として、家名が下賜される。ちなみに、俺は第四将軍格家現役当主として、一等帝国騎士に叙されるが、これの家名は『エクエス』であると教えてもらった。

 複数の爵位を有する場合、その爵位名を中間名ミドル・ネームとして名乗る事となった。その順番についてであるが、叙された順に関わらず、高位のものを先に名乗ることになる。なお、個人として中間名ミドル・ネームがある場合、貴族制度での扱いでは個人名として扱われるため、その後に爵位名が続く。


 最後に、『フォン』について、である。これは、全ての貴族に対し、名乗る事が義務づけられる、中間名ミドル・ネームである。

 これは古代サヌストの言葉で、所属を示す意味がある。例えば、『レリア・フォン・ロード』といえば、ロード家のレリアということになる。まあ『レリア・ロード』であっても、ロード家のレリアであると分かるのだが、貴族であるとは分からぬ。

 古代サヌストでは、貴族と平民を、名前を見ただけで区別できるよう、貴族にフォンを名乗らせることを義務づけたようだ。確かに、単に名前を聞いただけで貴族か否かが分かれば、不要な悶着を避けることができるので、便利な制度ではある。


 以上の事を踏まえると、俺は『ヴィルジール・デシャン・トラヴィス・エクエス・フォン・モレンク=ロード』と名乗るわけだ。長いな。

 ちなみに、夫婦が共に叙爵されている場合は、より高位の爵位名を家名として名乗り、その子どもは成人までは絶対にその家名を名乗る。子どもが成人後に、別の爵位を相続したり、新たに叙されたりした場合、そちらを名乗る権利が生じるが、これは絶対ではない。

 貴族制度について、表面的な部分は決まったが、血閥制度などはまだ決まっておらぬから、似たような会議は続くのだろう。


 とりあえず今日の会議を終えると、夕食が運ばれ、談笑しつつ共に摂った。まあ真面目な者ばかり集まっているので、談笑とはいっても、政治の話ばかりである。

 俺としては会議が続いている気分であったが、時折笑いが起こったので、本人達にしてみれば談笑であろう。俺には笑い所が全く分からぬが。


 夕食後、今日は解散となった。文官は全サヌスト臣民家名推奨令やら国号改称やら、色々と手続きがあるそうで、忙しそうに帰っていったが、武官はそうでもなさそうである。

 陛下は、俺とリンのみを残し、人払いをした。アキは白蓮隊幹部と一緒に帰宅し、エヴラールのみが別室で待機することになった。


「わざわざ残ってもらってすまないね。ジル卿、見てもらいたいものが二つあって、時間的に片方は帰ってから見てもらいたいんだが…どっちを今見る?」


 陛下はそう言い、冊子を二つ取り出した。まだ帰らねばならぬ頃合でもないが…陛下は新婚でらっしゃるから、陛下の夜は長くあるべきであろう。


「陛下が選んでください」


「じゃあ、こっちだ。血閥について、ヴァーノン達と纏めたんだが、現状唯一の血閥総帥としてはどうかな?」


「拝見します」


「うん。ああ、血閥だけじゃなくて、帝室の在り方とかを纏めたのもあるから、そっちも見て欲しい」


「血閥よりそちらを優先すべきでは?」


「ほら、血閥は新しい制度だから。ま、草案だから気負わず見てくれたらいい」


「承知しました」


 俺は陛下から冊子を受け取り、とりあえず開いてみた。

 字は読み易いうちでは最小であり、つまりその分だけ内容があるということであろう。それに、そもそも冊子が厚いから、新婚云々というよりも、本当に時間の問題であった。


 リンに手伝われながら、冊子を読んだが、俺としては完璧な制度に思える。


 まず、血閥は『五名以上の叙爵者を輩出し、且つ、その最上位者が大公または公爵である血族』と定義されている。ただし、注釈で『叙爵者とは上級貴族に叙された者を指す』とある。さらなる注釈で『上級貴族とは男爵以上を指す』とあった。新しい語がありすぎて、注釈が多い。


 その血閥は、皇帝より血閥名を下賜される。俺で言えば、『モレンク』の部分がこれにあたる。ちなみに、併呑予定の王家に対しては、旧国名を血閥名として下賜する予定だそうだ。つまり、モレンク血閥の他に、『クィーズス血閥』『テイルスト血閥』『ノヴァーク血閥』が誕生するということであろう。

 血閥名は、家名である爵位名の直前に名乗る。俺でいえば、『モレンク=ロード』となる。ただし『=』を用いるのは当主のみであり、レリアが名乗る場合には『レリア・フォン・モレンクロード』となる。ちなみに、レリアは男爵に叙される予定であるので、本来は『レリア・男爵名・フォン・モレンクロード』となるはずである。


 次に、血閥の拡大や縮小について。

 血閥の拡大や縮小は、当主の婚姻によってのみ行われる。ちなみに、当主と呼ぶ場合は各爵位保持者を指し、血閥全体を束ねる者を指す場合は総帥と呼称する。

 まず、血閥を構成する当主が、血閥無所属の貴族と婚姻を結ぶ場合、爵位の高低に関わらず、血閥に加わる。

 次に、血閥を構成する当主が、別の血閥を構成する当主と婚姻を結ぶ場合、より高位の爵位を有する方に加わる。例えば『クィーズス男爵』と『テイルスト伯爵』が婚姻を結ぶ場合、クィーズス男爵はクィーズス血閥を離れ、テイルスト血閥に加わる事になる。

 次に、血閥を構成する当主が、皇族に婿入りまたは嫁入りする場合、爵位の有無や高低に関わらず、血閥を離脱する。

 次に、血閥を構成する当主と皇族が婚姻を結び、皇族が臣籍に降下する場合、皇族が有する爵位は皇帝に返上される。

 なお、これらによって血閥が縮小し、血閥の要件を満たさぬ状態になった場合、血閥は解散する。


「どうかな?」


「帝室の在り方については確認できておりませぬが、血閥については問題ないかと思います」


「なら良かった。じゃあ…」


「あのっ!」


 無礼にも陛下の言葉を遮り、リンは控えめに手を挙げてそう言った。この場に気の短い者がいれば、すぐに斬り殺されている。まあ誰も帯剣しておらぬのだが。


「何かな?」


「はい。お許しを得て発言します。婚姻による血閥の拡大や縮小について…同格の叙爵者どうしの結婚があった場合には、どうなるのでしょうか?」


「…確かに。見落としていた。トゥイード君、助かった。礼を言わせてもらおう。礼ついでに、君はどうするべきだと思う?」


「…いざこざを避けるため、名案が出るまで一律で禁止するのはどうでしょうか?」


「面白いっ! そうしよう。ただまあ、こう言ったら折角の提案に悪いんだが、同格の貴族、それも当主どうしが結婚するなんて、少なくともサヌストの歴史上はないんだ。そもそも女の人が当主になる事自体、ほとんど無くて、今まで一人か二人だったんじゃないかな。だから、あんなに細かく規定したけど、ほとんど意味は無いんだ」


「そうでしたか。何分、農村の出ですので、そういった宮中の文化に疎く…失礼を申し上げました」


「いやいや、遠慮せず言ってくれて嬉しいよ。あ、そろそろ夜も深まってきたし、悪いが続きは帰ってから読んで欲しい。ああ、それは副書だから、読んだら処分してもらって構わない。というより、外部に漏れないようにしてくれ」


「承知しました、陛下。それでは失礼いたします」


「うん。また明日」


「は」


 俺は陛下から受け取った冊子を小脇に抱え、退室した。

 そして、エヴラールと合流し、帰宅すると、既にアキが眠っていたので、二人にも休むよう言って解散した。

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