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神に仕える黄金天使  作者: こん
第2章

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第384話

 寝室に向かって歩いていると、前から男が歩いてきた。白蓮隊員であったはずだが、名や役職は覚えておらぬ。


「総隊長」


 無視してすれ違おうとしたが、話しかけられては対応せざるを得ぬ。全く面倒な事になってしまったな。


「まずは名と役職を。用があるなら簡潔に」


「米屋有吾…いや、有吾・米屋と名乗っておきましょう。五番隊組長です。無口な妹ちゃんがいますね?」


「ああ。それが何か?」


「出自の秘密を知りたくありません?」


「…話してもらおう」


「はい。なら戻ってください」


 ユーゴ・マイヤーはそう言い、談話室に向けて歩き始めた。用があるなら、先に言ってほしかった。

 ルカの出自について、俺はよく分かっておらぬ。ルチアを支配していた、シュラルーツァの使徒ヘザーの魔法によって生み出され、術者たるヘザーを殺した、という点しか分からぬ。本人が俺の妹を名乗り、俺もなぜか納得しているので、詳しく調べる気にならなかったのだ。


 談話室に着くと、マイヤーは暖炉の傍に椅子を置き、暖炉に手を翳して振り向いた。俺はなるべく急かすため、その後ろに立った。


「シャールカちゃんはね、本当は白蓮隊の副長に任命するために、ヴォクラー神が用意した人なんですよ。総隊長の魂の核になった人間の妹の魂に、それなりに優秀な生き物の魂を吸収させて、最後におしゃべりな人の魂を吸収させるはずだったんですけどね…」


「…それで?」


「これからは怒らないで聞いてほしいんですけど…」


 マイヤーはそう言い、暖炉に向き直り、俺に背を向けて話し始めた。


 ヴォクラー神がルカの魂の仕上げ、つまり『お喋りな魂』を吸収させる直前、上位神に呼び出され、リャゴスティヤンが引き継いだ。

 リャゴスティヤンは、白蓮隊の編成と並行してルカの魂生成をしていたそうで、『お喋りな魂』を誤ってユーゴ・マイヤーの魂と()()させた。ちなみに、魂の合成において、吸収とは核となった魂が九割程度の意思を持つが、融合の場合は五割ずつとなり、ほぼ別人になる。

 リャゴスティヤンは、ユーゴ・マイヤーから『お喋りな魂』を分離するため、ルカの魂から目を離した。すると、ルカの魂は人間界(ヒルデルスカーン)へ落下、魄のみが入ったルカの肉体に受肉し、俺と出会った。

 ルカが受肉するはずであった、イリナと同年代の女の肉体は、白蓮隊五番隊の誰かが使っているそうだが、俺やルカが特別な感情を抱かぬよう、リャゴスティヤン以外は知らぬそうだ。

 ちなみに、ルカの名であるが、天界においてこの名は男性名だそうで、シャールカに改めることとなった。サヌストでは、ルカは男女問わず付けられる名だ。


 リャゴスティヤンは、贖罪のつもりか、白蓮隊に本来は存在しなかった五番隊を編成し、その組長にマイヤーを任じた。そのため、五番隊の隊員は、他の白蓮隊員と異なり、イェンスウェータ以外の世界から集められた者で構成される。


「なるほど。では解散だ」


「ちょっと待ってくださいよ。ウルヒラム君の話は?」


「…聞こう」


 ルカの話が終わったので、立ち上がって立ち去ろうとすると、今度はウルの話をすると言って引き止められた。『お喋りな魂』の影響であろうか。


「ウルヒラム君はね、炎の才能者ですよ」


「知っている。話がそれだけであれば、俺はもう行く」


「待ってください。改名の理由、知りたくありません?」


「…話してもらおう」


「ウルという名前はね、水系魔法術者が名乗るべき名前で、つまり水魔法を強くする名前なんですよ。でも、彼は炎の才能者ですから、その火力を高め、制御を易くするには、邪魔な名前だったんですね」


「悪かったな」


「でも安心してください。炎の才能者として相応しい名前に変えましたから。水魔法も上手に使えますし、火魔法はもっと上手に使えます」


「そうか。承知した。では解散だ」


 話が終わったようなので、帰ることにした。俺もしばらく眠っておらぬから、そろそろ眠っておきたいのに、もうすぐ日が昇り始めそうな頃なのだ。マイヤーが友であるならともかく、そうでないからには、雑談で無駄に時を浪費してやる義理はないのだ。


「ちょっと…あっ! 奥さんの話をしましょう。第一夫人の美人の方です」


「レリアの事か?」


「そうですそうです。ほんとはもっと早く美人の話をしたかったんですけど、ほら、僕ってシャイでしょ?」


「いや、知らぬが」


 レリアの話をするのであれば、いつまでも付き合ってやる。最近は俺を気遣ってか、誰もレリアの話題を出さぬので、俺もレリアの自慢ができぬのだ。しかも、相手が初対面ならば、それだけレリアの話をしても良いことになる。何から話してやろうか。いや、まずは質問を受け付けてやろう。

 俺は椅子を持って来て、マイヤーの隣に座った。近くで話した方が、レリアの魅力が伝わりやすかろう。


「質問を聞こう」


「え?」


「レリアの話であろう?」


「そうです、そうなんです。えー…と、お綺麗ですよね」


「ああ。よく分かっているな。おぬしは見所がある。レリアは、まず見て分かる通り、かなりの美人だ。おそらく、この世に存在する全ての世界、いや、滅んだ世界も含め、レリア程の美人はおらぬと思えるほど、美人だ。まず後ろ姿からして綺麗だ。あの髪を見たか。右半分は見事な烏の濡れ羽色で、左半分は澄んだ水の色だ。綺麗な髪だぞ。おぬしに触らせるつもりはないが、何とも言い難き良き触り心地だ。本人が嫌がるであろうからせぬが、切ったり抜けたりした髪を集めたくなる程だ。言っておくが、ちゃんと欲望を抑えているぞ。後ろ姿を堪能したら、顔を見る前に体を見よ。いや、変な意味ではないが、絹のような肌と如何な服でも似合う体型を見てみよ。いや、やはり、おぬしには体を凝視して欲しくないゆえ、今の話は忘れよ。顔についてであるが、やはり、褒めるべき点が多い。顔を見てまず目に入る、あの美しい瞳を見よ。黒い右目と水色の左目の金銀妖瞳(オッドアイ)を。同じ色であっても賞賛すべき、美しき瞳であるが、金銀妖瞳(オッドアイ)であるから、二色が楽しめる。いや、この言い方は良くないかもしれぬが、如何な宝石でも遠く及ばぬ美しさだ。それから、凝視せねば分からぬから、言葉だけで察して欲しいのだが、睫毛の色も瞳と同じ色だ。それに何とも言えぬ美しさがある。今度は頬であるが…」


「あの、ちょっと待ってください」


「何だ?」


「ちょっと…雉撃ちに」


「そうか」


「じゃ、すみません…」


 マイヤーはそう言い、退室した。そういえば、俺は王都の屋敷の全容を覚えておらぬな。自分が使う部屋の場所はある程度覚えているが、他は知らぬ。気長に待つとしよう。


 窓から朝日が差し込む頃になっても、マイヤーは戻って来なかった。体調を崩したのではなかろうか。今日も、非公式ではあるものの、御前会議があるのだ。体調不良で参内してもらっても困るのだが…


「ジル様、ここにいらっしゃいましたか」


 扉が開くと、エヴラールがいた。マイヤーかと思ったのだが…

 エヴラールが来たということは、そろそろ出発であろう。いや、アキを起こして欲しいのかもしれぬな。


「おはようございます。準備を致しますので、朝食を食べてお待ちください」


「ああ。全く別の話だが、ユーゴ・マイヤーを知らぬか?」


「分かりませんが…お呼びしましょうか?」


「いや、雉撃ちにと言って、姿を消した。環境の変化で体調を崩したのかもしれぬ。気遣ってやってくれ」


「承知しました」


「では」


 談話室を出て、エヴラールと別れ、俺は食堂に向かった。

 食堂に向かう途中、アガフォノワとアウストリアとすれ違ったので、一緒に食堂に来るよう言った。早くアキに言っておかねば、忙しくて忘れてしまう。まあ食堂にアキがいると聞いた訳ではないから、アキがおらぬ可能性もあるが、アキと会うまで連れ歩けば良いのだ。

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