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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第35話

 俺はラポーニヤ笛をもらい思いっきり吹いてみた。

 予想通りの音が鳴った。耳が痛くなるほどの音量だった。同じ部屋にいた魔族は耳を塞いでいるが人間達は不思議そうな顔をしている。

 俺はこの山の人狼と人虎の血を飲んでいたのでこの山の魔族と同じなのだろう。


「すまんすまん。どんなものかと気になってしまってな」


 その後も色々細かい事などを決めたり聞いたりして一日が終わった。

 今夜()レリアと寝た。


 翌朝、俺は朝ご飯を食べた後、ラポーニヤ山の魔族全員が集まる広場に出て話すことになった。

 俺はヌーヴェルに乗って皆の前で話す。


「俺は人狼、人虎の族長であり、エルフの戦士長のジルだ!今日からお主ら人狼、人虎、エルフ、犬人、猫人は俺の配下となり、この山を下りてもらう!では、出発するぞ!」


 俺はそう言って剣を抜いて高く掲げてヌーヴェルの前足を上げさせる。

 その次はヌーヴェルで駆け出す。

 左右に分かれた魔族たちの真ん中を駆け抜ける。この先の先頭の部隊に追いつき、俺が先頭を行く。


 しばらく進んだ。そろそろ麓に着く頃であろう。


 麓に着いてから少し休憩することにした。


「ジル様、少しよろしいですか?」


「お主は確か…」


「ムグラリスです。まずは先程の演説、お見事でした」


「演説って言うのか?」


「はい!ですが少し訂正を。先程、人狼と人虎の族長と仰っていましたがジル様は猫人と犬人の族長でもあるのですよ」


「え、そうなのか?」


「はい。余程のことがない限り猫人の族長は人虎の族長が、犬人の族長は人狼が務めるのです」


「そうか。次からは気をつける」


 俺がその後もムグラリスと話していると出発の時になった。俺が合図をしなけらばならない。


「人魔混成団及びラポーニヤ山の魔族、出発だ!」


 また歓声が上がった。

 魔族はいちいち歓声をあげるのか?


 俺は近くにいるシャミナードと話しながら進む。


「お前達は本当に魔獣を飼っているのか?」


「そうだニャ。十人で三体のアクリスを使役してるニャ」


 アクリスとはなんだろうか。初めて聞いた。


「アクリスってなんだ?」


「そこからは僕が説明するワン」


 バローがとことこ走ってきた。


「シャミナードばっかりジル様と話してずるいワン」


「ジル様が僕を選んだニャ」


「まあまあ、喧嘩するな。シャミナードの事が羨ましいんだろ?説明はバローに頼む」


「了解だワン」


「ニャー」


 シャミナードがバローを睨んでいる。バローはドヤ顔をしている。


「で、アクリスってなんだ?」


「ヘラジカみたいな魔獣だワン」


「…それだけ?」


「後肢に関節がないから一度横たわると起き上がれないワン」


「休めないではないか」


「何かにもたれかかって寝てるワン」


「そうか。だが、後肢に関節がなかったら足が遅いのでは無いのか?」


「僕も分からないけど足は速いワン」


「そうか。他に情報は?」


「アクリスは草食獣だわん。だから餌を持ち歩く必要がないワン」


「わかった。シャミナード、補足は?」


「悔しいけど完璧ニャ」


「十人で三頭ってことは全部で…九百頭か?」


「予備も含めて千頭だニャ」


「なぜ予備がいるのだ?」


「途中でアクリスが死んじゃったら荷車を運べないワン」


「そんなに荷車って重いのか?」


「僕達の力が弱いだけニャ」


「あんなに思い荷車を動かせる方がおかしいワン」


 二人の愚痴が始まった。愚痴かどうかは分からないが。


「あ、そうだ。アシルを呼んでくれ」


「バローが行ってくるニャ」


「シャミナードが行くべきだワン」


「あー、二人で行ってきてくれ」


「了解だワン(ニャ)」


 二人が敬礼をして後ろに走って行った。走らなくても進んでいるのだからそのうち来るだろうに。


 しばらくするとアシルが駆けて来た。


「ジル殿、なにか用か?」


「ああ。一足先にドリュケール城に行き、どこに向かえば良いか聞いてくれ」


「俺が?」


「ああ。俺はここを離れられないからな。俺の次に権限があるお前に頼む」


「そうだな。カミーユとかだったらジェローム卿にすぐ会えないか」


「ああ。何かあったらロドリグからオディロンに念話を送ってくれ」


「承知した。俺一人では心許ないからカミーユとマテューとジルベールを連れて行く。その分の食糧をくれ」


「ああ。四人分を三日分渡しておく」


 俺はアシルが描いた魔法陣に食糧を移す。


「では、ドリュケール城で待っているぞ」


「ああ。また会おう」


 アシルが侍従武官のカミーユと新兵マテューとジルベールを連れて走り去っていった。


 すると後ろからシャミナードがトコトコ走ってきた。


「ニャ?アシル様はどこニャ?」


「もう用事を頼んだ」


「用事って何ニャ?」


「ん?お前らの住処の準備を頼んだんだ」


「ありがとニャ」


「それはいいがバローは?」


「走って疲れて荷車に乗ってるニャ」


「そうか。荷車って何台あるんだ?」


「十人で三台を管理してるニャ」


「アクリス一匹で一台なのか?」


「そうニャ」


 その後もシャミナードと話しながら進み、夜になった。


 夜ご飯はレリアと食べた。


 そして夜ご飯の後、幕舎でレリアと寛いでいるとオディロンに呼ばれた。


 ───ジル様、ロドリグから連絡が入った───


 もう着いたって?


 ───少し無理をしたらしい。だが無事全員生還したそうだ。細かい事を聞かれたらしい。各部族の代表に聞いて欲しいことがあるそうだ───


 分かった。それぞれの代表を呼ばせるから少し待て。


 俺は幕舎の外に出て火を眺めていたバローに話し掛ける。


「バロー。エルフの族長って誰だ?」


「ジル様!エルフの族長はフーレスティエ様だワン」


「じゃあそのフーレスティエとフーリエとムグラリスとシャミナードを連れて来てくれ」


「え、僕はいらないワン?」


「お前も来い。聞きたいことがある」


「ワ〜ン!ワ〜ン!」


 バローは吠えながら走って行った。後で聞いたんだがあれは喜びの声だそうだ。人間で言う『やったー』みたいなものらしい。


 俺は幕舎からレリアを呼び、二人で火に当たる。


「なんであたしみたいな平凡な女にジルみたいないい男が落とせたんだろう?」


「レリアがいい女だからじゃないか。俺を落とせるのはレリアだけだ」


「ふふっ嬉しい!」


 レリアが抱きついてきたので俺もぎゅっとする。


「お楽しみのところ悪いのですがジル様がお呼びと聞き、参上致しました」


 俺が振り向くと五人が跪いていた。


「あ、ああ」


 俺は顔を赤くしてそう言った。いや、そう言うのが限界だった。


「エルフの族長フーレスティエ、参上致しました。ジル様がラポーニヤ魔族の長となられたのに挨拶に伺えず申し訳ありません」


「気にするな。忙しかったのであろう?」


「はは」


「で、ラポーニヤ魔族ってなんだ?」


「は。ジル様がラポーニヤ山の魔族を一つに纏め上げられましたのでエルフ、人狼、人虎、犬人、猫人と名乗るのではなくラポーニヤ魔族と名乗ることとなりました」


「フーレスティエは族長を退かぬのか?」


「申し訳ございません。エルフの長は代々ハイエルフが務めることになっております。私としてはジル様にハイエルフの血を引き継いでもらいたいのですが」


「そんなに簡単に引き継げるのか?」


「ええ。ジル様の魔法の腕は存じ上げております。ジル様程の魔法の腕があれば血をコップ一杯飲むことでその種族に成り得ます」


「また血か」


「現在、ハイエルフは私と娘しかおりませんので血を飲むしかございません。それとも婿入りなさいますか?」


「いや、俺はその娘に会った事がないし、相手も定まっているから断らせてもらう」


「そうでしたな。では、私の血を捧げます」


 フーレスティエはそう言って掌を短剣で切り裂き、懐から取り出したコップに注いだ。


「どうぞ」


「今?」


「ハイエルフの血はすぐに飲まないと腐りますぞ」


 俺は一気に飲む。まずい。生温かくてまずい。吐きそうだ。俺はギリギリで耐える。


「さすがです」


 ───ジル様、まだか?───


 おっと忘れていた。今行くからちょっと待て


 俺は皆に俺の幕舎に入るように促す。

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