第34話
宴会が終わった後、俺らは魔王の別荘、今は俺の館に泊まった。
翌朝、俺はアシルとレリアと人狼と人虎、エルフ、犬人、猫人の代表達と朝ご飯を食べた。
そこでは今日中に準備を整えて明日には出発することに決まった。
全部族合わせると一万を超えるらしい。人狼と人虎が千ずつ。エルフが千五百。犬人と猫人が五千ずつ。合わせて一万三千五百。
このうち俺の部隊に所属するのは人狼、人虎、エルフの戦士たちが千人、犬人、猫人の工兵が三千。
つまり俺が率いるのは人間と魔族の戦闘員を千人ずつの部隊というわけだ。
今日は俺の部隊に所属する者達を一箇所に集め、各部隊の部隊長の任命をしたりする。
「ジル様、兵士が集まりました。どうぞ、こちらへ」
俺は昨日のエルフ、ファルジアの案内に従って兵士達の前へ出る。俺の後ろには魔の山ラポーニヤ山攻略隊が並んでいる。
俺は鎧を纏ってこう言う。
「人狼、人虎、エルフ、犬人、猫人の代表は前へ!」
「「「は!」」」
五人が前に来た。三人は昨日戦ったブームソンとヴィルトールとヴァトーだ。犬人と猫人は知らぬ者が来た。
「それぞれ名乗れ!」
「俺は人狼代表、ブームソンです」
「俺は人虎代表、ヴィルトールです」
「俺はエルフ代表、ヴァトーです」
「僕は犬人代表、バローだワン」
「僕は猫人代表、シャミナードだニャ」
犬人と猫人は小さいな。声も可愛らしい。俺はヨドークをこんな喋り方にしたかったのだ。
「うむ。では、ヴァトー、前に出ろ」
「は」
ヴァトーが前に出て跪いた。それと同時に後ろの四人も跪いた。
「ヴァトー、お主を人魔混成団副団長に任命する。魔族の兵をお主に任せる」
「は!謹んでお受け致します」
「ブームソンとヴィルトールはヴァトーの下で人狼と人虎を率いてくれ」
「はは!」
「バローとシャミナードは協力して人魔混成団工兵隊の指揮を執ってくれ」
「了解したワン(ニャ)」
俺の部隊は人魔混成団と名付けた。そしてそれをいくつかの隊に分けた。
「では、ここは解散とする!各自準備をしておけ!明日には出発する!」
俺が剣を高く掲げると歓声が上がった。
俺は歓声が終わるまでに帰った。
俺は館に帰って各部族の長老を呼び、細かいことを聞いた。
人狼と人虎は似たようなものである。変身後の姿が違うだけで根本的なところは同じであった。
戦闘時には変身して上裸状態になって戦うらしく鎧を纏わないという。
だがそれでは見た目としてダメなので変身すると消える鎧を作ってもらうことにした。魔法が得意なエルフと魔法陣が得意なアシルが協力して作るらしい。
材料は五百年前に魔王から何かしらの褒美として与えられた鎧や魔導具の材料が邪魔なくらい余っていたのでそれを使っている。マントも俺の部隊だと一目でわかるように黒色にする。マントと軍旗の色は揃えるものらしい。
次にエルフ。エルフは大きく分けて二つに分けれるらしい。弓が得意な者と魔法が得意な者で分ける。それぞれを弓エルフ、魔法エルフと呼ぶ。戦士団は半分ずつらしい。彼らは戦闘時に上裸になる必要は無いらしく、軽くて動きやすい鎧、通称エルフ鎧を纏うらしい。
弓エルフの戦士には飛距離や有効距離が伸びたり矢に特殊な効果を授けたりできる『魔弓』を配る。魔弓は魔導具の一種である。これもアシル達に頼んだ。
魔法エルフの戦士には物理攻撃や魔法攻撃によるダメージを軽減するマントを配る。中にはエルフ鎧を着込むので防御面では、今ある部隊の中でも最高だろう。
犬人や猫人は生活用品から城までなんでも作れる有能な種族であった。
驚いたことに人狼や人虎と祖先は同じである。戦いが苦手な人狼や人虎が変身したまま裏方になっている内に人間の姿に戻れなくなりどんどん小さくなっていったのだ。小さくなるにつれて器用になったらしい。
なので魔族の中では珍しく戦闘が苦手な種族だ。装備や人数が同じなら人間の子供にも負ける程である。
彼らには工兵としてついてきてもらう。戦地で攻城塔や破城槌、投石機などの攻城兵器を作ったり、勝ち取った砦などの修復作業などをしてもらう。また彼らは工具や材料と一緒に食糧なども運んでくれると言っていたし、幕舎を作ってくれるとも言っていた。戦い以外は全て彼らに任せる形になるだろう。
彼らにも一応武具を配っておく。何も持っていないよりは敵への牽制になるだろう。マントも纏ってもらう。彼らのマントは集中力向上や疲労回復の効果を付与しておく。
これが俺の部隊、人魔混成団の魔族隊の装備だ。
ちなみに魔導具というのはなんでもない道具、例えば絨毯を飛ぶようにしたら空飛ぶ絨毯になる。ただ、複雑であったり強力な魔導具であれば魔法陣の難易度が高くなり、失敗も多くなる。
アシルと一人のエルフが来た。
「ジル殿、これが人狼隊と人虎隊に配る武具だ。細かいことはこのダレラックに聞いてくれ。エルフ魔法隊の隊長だ」
「ダレラックです。以後お見知りおきを」
ダレラックというエルフが挨拶してきた。
「ああ、よろしく」
「早速ですが説明します。この武具は見せかけなので強くはありません。戦場で使うとなると覚悟がいるでしょう。ですが人狼隊と人虎隊はその牙や爪で戦うので強度は必要ないでしょう」
「だが彼らは上裸で戦うのであろう?」
「ええ。ですので普段はこの腕輪になります。腕輪としては少々重いのですが人狼や人虎にとっては誤差の範囲でしょう。そしてこの腕輪に触れた状態で念じれば武具の出し入れができます」
「戦闘時にマントだけ出せるようにしておいてくれ」
「普通のマントで人狼や人虎の戦い方をするとすぐに傷みますので魔法効果を付与しておきますね。そして、腕輪だけのバージョンと武具だけのバージョンと腕輪とマントのバージョンの三パターンを登録しておきます」
「ああ、頼んだ」
「そして次はエルフ弓箭隊の魔弓です。普通の弓としても使えます。魔力を込めれば思い通りの矢を放つことができます」
「次は?」
「次はエルフ魔法隊のマントです。外側からの衝撃をほぼ全て無効化できます。内側には魔法効果を付与していませんので表裏を間違えないようにしてください」
「防御力は?」
「物理攻撃に対しては人狼の引っ掻きで多少ほつれるくらいです。自動修復の効果も付与してありますのでご安心を。魔法攻撃に対してはマントの外側に触れた魔法を純粋な魔素に変換する効果を付与してあります。余程強い魔法でない限りは安心です」
「次は?」
「工兵隊の武具です。鎧は動きやすさを第一に考えて作りましたので戦闘はなるべく控えてください。武器は槍を作りました。こちらは軽さを重視して作りましたので威力は高くありません」
「適当ではないか?彼らが襲われたらどうする?」
「犬人や猫人は魔獣を調教して使役しております。もしもの時は魔獣が戦うでしょう」
「魔獣を戦場に連れていくのか?」
「彼らは荷物を魔獣が引く荷車に載せますので連れていくことになりましょう」
「そうか。なら良い」
「最後に一つだけ紹介させてください」
「聞こう」
「このラポーニヤ山で暮らす人狼、人虎、エルフ、犬人、猫人だけが聞き取れる笛がございます。このリング型のピアスをつけていただけると他の種族、例えば人間なども聞き取れます」
「その笛で指揮を執るのか」
「左様です」
「わかった。それぞれ人数分用意しておけ」
「は!」
ダレラックが出て行った。アシルはいつの間にかいなくなっていた。
その後もこんな感じで色んな事に指示を出して一日が終わった。
後で調べたのだが噂の笛はラポーニヤ笛と呼ばれる笛でこの山で生まれ育った魔族にしか聞こえないらしい。それを聞こえるようにするのがあのピアスだ。
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