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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇

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第33話

「魔王は五百年前に倒された」


「魔王陛下は必ず復活なされる。その日まで我らは魔の山ラポーニヤ山を守るのみ」


「魔族の掟は貴様らにも通用するのか?」


「無論。だが、魔王陛下を超える者などおらぬ。我らの忠誠は魔王陛下のみに捧げられる」


「俺が魔王を超える。そして貴様らを配下に迎えよう」


「では、我らエルフの戦士長と戦ってもらおう」


 俺らはそのエルフの男について行った。


「族長様、魔王陛下を超えると言う不届き者を連れて参りました」


 エルフの男が森に呼び掛ける。すると案内してくれたエルフよりゴツいエルフと若いエルフが出てきた。


「ファルジア、人狼と人虎にも知らせよ」


「はは!」


 案内してくれたエルフが立ち去った。


「では、ヴァトー殿。ご苦労だがこの者らを決闘場へ案内してやってくれ」


「かしこまりました。族長様はどちらへ?」


「集落中のエルフに臨戦態勢に入っておくよう伝えておく」


「承知しました」


 若い方のエルフが立ち去った。


「おい、行くぞ」


 ゴツい方のエルフが俺らを睨んでから歩き出す。

 俺らは後ろをついて行く。


「ここで俺を斬っても良いが貴様らは生きて帰れんぞ」


 ゴツいエルフ、名は確かヴァトーと言ったか。そのヴァトーが背中越しに俺たちにそう言った。俺は無視した。


「ここだ」


 しばらく歩いた所でヴァトーがそう言った。


「ここの中心で待っていろ。同じ人数で我々も行く」


「いや、エルフと人狼、人虎でそれぞれ一番強い戦士を呼んでくれ。俺が一人で叩きのめす」


「舐めた真似を。後悔するなよ」


 俺以外が別室へ連れて行かれた。俺は中心で待つように言われたがその前の部屋で女性のエルフから説明を受けた。

 ここラポーニヤ山では、決闘を行う際、戦士は上裸になり、素手で戦うというのが伝統だそうだ。だから俺は服を脱ぎ、中心へ向かった。


 しばらく待つと俺が出てきた方の反対側から三人の男が出てきた。さっきのヴァトーを真ん中にして横並びで来た。皆、上裸だ。武器も持っていないし鎧もつけていない。


「火を放て!」


 誰かの合図で決闘場と観客席の間に火が放たれた。


 大事な事を忘れていた。戦う前には戦場をよく知っておくのが大切なのに忘れるとは。

 観察しよう。

 決闘場は直径五十メルタ程の円形だ。地面は土で固められており多少の衝撃では、壊れないだろう。それだけだ。


 観客席を見渡してレリア達を探し手を振っておく。


「これより挑戦者が各族長に勝負を挑む!双方名乗れ!」


 さっきの声がまた喋った。

 向こうが誰も話さないので俺ってことか?黙っておこう。


「挑戦者よ、名乗らんか!」


「俺はジルだ!貴様らエルフ、人狼、人虎は我が軍門に降り、我が配下となれ」


「黙れぇ!俺はヴァトー!エルフの戦士長だ!」


「俺はブームソン!人狼の族長だ!軟弱な人虎に変わって貴様は俺が殺す!」


「俺はヴィルトール!人虎の族長だ!脆弱な人狼に変わって俺が貴様を殺す!」


 俺が名乗ると皆が名乗った。


「どちらかの降参か死亡または戦闘不能になると負けだ。では、存分に戦え!」


 ブームソンとヴィルトールが叫ぶと二足歩行の狼と虎になった。


 そのままこちらに飛びかかってきた。


 俺はヴァトーの行動に気を配りながらこの二人の相手をする。

 剣がないので仕方なくそれぞれの腹を殴る。


 二人が何歩分か後ずさりした隙にヴァトーに向けて雷魔法を撃ち込む。


 それに目を奪われていたブームソンの頭を掴み、地面に叩きつける。地面にヒビが入った。


 次はヴィルトールの顎に蹴りを入れる。胸ががら空きになったので思いっきり殴る。ヴィルトールは吹っ飛び胸を押さえる。


 この二人を無効化したらあとは簡単だ。ヴァトーに向けて火魔法で包んだ雷魔法を撃つ。

 ヴァトーはそれを水魔法で壁を作って防いだがその壁を触っていたのが敗因だろう。火魔法は消えたが雷魔法が水の壁に触れた瞬間ヴァトーが倒れた。


「これ、戦闘不能なんじゃないか?」


 俺はさっきの声に話し掛ける。


「あ、ああ。勝者、挑戦者ジル!」


 歓声が上がるかと思ったがあまり上がらなかった。皆、驚きで固まっているようだ。


「俺は…まだ…戦え…る!」


 ブームソンが立ち上がってそう言った。


「人狼…に…出来ることは…我ら人虎…も…できる!」


 ヴィルトールも立ち上がった。


「ブームソン、ヴィルトールが戦闘可能!勝負続行!」


 俺はため息をついて二人を土魔法と創造魔法で直径三メルタ程の岩を五個創って脅す。


「降参したら落とさないでやろう」


「「降参などしない!」」


 二人が走ってきた。俺は二人の目の前に岩を二つ落とす。勢いをつけて落としたからか地面にめり込んだ。

 それを飛び越えて二人が俺に殴り掛かる。いや、その爪で引っ掻こうとしているのか。

 俺はそれを難なく躱し、二人の背中に手を当てて体内に雷魔法を撃ち込む。もちろん死なないように加減をして。


 気絶したであろうが土魔法を使って三人を顔より下を地面に埋めた。


「これでどうだ?」


「勝者、挑戦者ジル」


 俺は右の拳を握って高く掲げる。


 その後上衣を返されたので着る。


 俺は決闘場から出て魔王の別荘の建物に入る。この建物は俺にくれた。五百年前、姿を消した魔王より今ここにいる俺を主とするらしい。もし魔王が復活しても俺に協力してくれるそうだ。


「人狼と人虎の長老を呼びますので少々お待ちを」


 聞いた話なんだが人狼と人虎は族長とは別に長老がいるらしい。長老五人がそれぞれにいるらしい。人間で例えると長老が村長みたいな役割だそうだ。族長は象徴的なものらしい。エルフは族長が村長みたいなものだ。


 そんなわけで俺が交渉するのは長老達だ。


「連れて参りました」


「人狼の長老フーリエです」


「人虎の長老ムグラリスです」


 二人が俺に挨拶する。


「ああ。よろしく」


 俺達は握手をする。そういえばアシル達と合流していない。まあ無事だから良い。


「まずジル様の要求を聞かせてください」


 フーリエがそう聞いてきた。


「この山から下りて俺に協力して欲しい。それと出来ればこの山の結界を解除して欲しい」


「「!?」」


 二人が驚いている。


「この山の嵐が結界とお気づきになられましたか」


「さすがです」


 二人が俺を褒めてくる。


「まあな。俺の要求を聞くって事はそっちにもあるんだろう?」


「ええ。ジル様には我ら人狼と人虎の族長になっていただきたい事がまず一つ」


 フーリエがそう説明する。


「俺は人狼でも人虎でもないが良いのか?」


 二人は目を合わせた。そして俺の問に答えた。


「ジル様程の魔法使いであれば人狼になる事など容易いことですぞ」


「フーリエ殿の言う通り。我らの血をコップ一杯ずつ飲んで頂ければ人狼にも人虎にもなれます」


 血を飲むのか。嫌だが仕方あるまい。


「それはわかった。で、二つ目は?」


「二つ目はここにはおりませんがエルフの戦士長になっていただきたい。こちらは血を飲むような事はございません」


 今度はムグラリスがそう言った。もう一つあるならフーリエだろうな。


「最後に一つ。ジル様の要求にも関係するのですが我らがこの山を下りたとして我々の事を保護してください。我々は人狼、人虎、エルフ、犬人、猫人の五種族です」


「犬人と猫人とはなんだ?」


「三分の二メルタ(一メートル)程の身長の魔族です。戦闘力はございませんがこの建物や決闘場などは彼らが作ったものです」


「わかった」


 その後、俺達は詳しく話した結果、お互いの要求を全て飲むことにした。


 まとめるとこうだ。


 一つ。俺が人狼、人虎の族長となること。

 一つ。俺がエルフの戦士長になること。

 一つ。この山の人狼、人虎、エルフ、犬人、猫人を全てを保護すること。

 一つ。その見返りに人狼、人虎、エルフの戦士と犬人、猫人の工兵は俺の部隊に所属すること。

 一つ。俺が人狼と人虎の血を飲むこと。

 一つ。ラポーニヤ山の結界を解除すること。


 以上だ。多いな。簡単にまとめると俺がこの山の魔族の面倒を見る代わりに戦士を俺の部隊の兵士として使って良いということだ。


 今夜はアシル達と合流し、宴会をしてその中で人狼の血と人虎の血を飲んだ。めちゃマズだったが人狼になれたし人虎にもなれた。

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