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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第29話

 女官が三人来たようだ。領主に仕える女官であるがまあ、気にしなくて良いか。


「ジル様、どうかなさいましたか?」


「ああ。レリアを風呂に入れてやってくれ。さっきレリアが泊まっていた宿に荷物を取りに行ったんだがその時に夜盗か何かに襲われていてな。撃退はしたんだがレリアが気を失ってしまってな」


「左様でございますか。エジット殿下やアルセーヌ様にお伝えしますか?」


「ああ、頼む。確か『バレーヌの宿』と言ったかな?詳しくはレリアが復活してから聞いてみてくれ」


「承知しました」


「それと女性だけじゃ、レリアを連れて行けないだろ?俺が連れて行く」


 俺はレリアをお姫様抱っこして、女官の案内に従って風呂に行く。


「俺は男だからここまでだ。あとは頼んだ」


「承りました」


 俺は風呂の扉の前でレリアを女官に任せて扉の隣に座る。

 気が気でないが暇なので『アンドレアス王の魔王討伐記』を取り出して読む。

 あまり内容が頭に入ってこないな。


「ジル様、レリア様がお目覚めになりました。お会いになられますか?」


「いや、レリアが風呂から出たらで良い」


「あとは髪を乾かすだけですよ」


「それだけなら俺の部屋でもできるか?」


「ええ。そのように致しますね」


 また中に入って行った。無事そうで良かった。


 レリアが出てきた。


「良かった。レリア、大丈夫か?」


「ジル…心配かけてごめん」


「気にするな。運命の人なんだろ?」


「…うん」


 レリアがフラっとして倒れそうだったので支えてそのままお姫様抱っこする。


「…ありがと」


 レリアの顔が赤くなった。風呂上がりだからか?それともお姫様抱っこしたからか?

 俺はそのまま、部屋に戻る。

 部屋の前にエジット殿下とアシル、アルセーヌがいた。


「ジル卿、なんだかんだ言ってレリアさんの事が好きなんだろ?」


「あんたもそんな事するんだな」


「ジル様、お似合いですぞ」


 なんか、からかわれているような気がする。決めていたかのように順番に話すな。

 俺は彼らの横を通り過ぎて部屋へ入り、レリアを椅子に座らせる。女官達がレリアの髪を乾かす。

 俺は部屋の外へ出て、詳しい事は朝に調べるように言い、三人組を帰らす。

 再び部屋に戻るとレリアの髪は乾いており女官達が帰るところだった。俺は女官達に礼を言って扉を閉める。


「どうしたんだ?」


「色々ありがと」


「今日はもう寝よう」


「うん」


 俺とレリアはベッドに入る。


「ねぇ、ジル。あいつらはどうしたの?」


「一応殴っておいた。気絶くらいはしてるんじゃないか?」


「そう…」


「心配なら結界を張っておこう」


「結界?それっておとぎ話の事だよね?」


「俺はそのおとぎ話を知らないんだが、まあ、似たようなものだろう」


 俺は魔力を込めれるだけ込めて結界を張る。強度は殴ったら骨が折れるくらいだ。そして俺たちに敵意を持つ者が結界に触れると俺が分かるようにする。センサーみたいなものだ。最後に外から内へ、内から外へ行き来できないようにした。これはレリアが寝ぼけて出て行って夜盗どもに襲われないようにするためだ。


「何かあったら俺が守る。だから安心してゆっくり休め」


「ありがと。でもジルが丸腰じゃない」


「丸腰でも強いのだがな」


 俺は剣を喚び出す。


「剣も持っている」


「すごい!ジルってもしかしてほんとに魔法が使えるの?」


「ああ。百人くらいなら勝てるぞ」


「百人!?もしかしてアンドレアス王の再来?」


「そんなわけないだろう。まあ、伝説の魔法使いくらいに思っておいたら良い」


「うん。さすがあたしの運命の人だね」


「ああ、そうだな。もう寝るぞ」


 俺はそう言って灯りを消す。





「ジル殿、こっちだ!」


 俺はアシルに呼ばれた方に駆け出す。そこにはヌーヴェルが繋いであり、俺はヌーヴェルに乗る。


「待たせたな」


「おう。オディロンは?」


「ん?ちょっと呼んでみる」


 俺は魔法陣を描き、オディロンを喚び出す。

 あれ?来ないな。

 俺はオディロンの異空間のものが全て出てくるよう魔法陣を描き直す。


「オディロン?」


 オディロンが死んでいた。ベッドや他の荷物の下敷きになっていた。


「嘘だろ?」


「もしかするとジル殿が荷物を詰め込みすぎたから…?」


「俺の…せい…?」


 俺はヌーヴェルから降りてオディロンに駆け寄る。そして時空間魔法を使い、オディロンが死ぬ瞬間を頭の中に映像として流す。


「…俺の…せい…だ…」


 ───幼馴染の仇は我が討つ!たとえ主の主であろうとも!───


 ロドリグが俺の首元にその牙を突き立てる。


「頼む。俺を殺してくれ…」


 俺はロドリグにそう頼む。

 そしてロドリグは一片の迷いもなく俺の命を刈り取る。





「!」


 夢か…。なんと恐ろしい。これが子供を悩ませる悪夢と言うやつか。なかなか恐ろしい。もっと現実味があればショックで死んでいたかもしれぬな。

 一応オディロンの安否確認をしておこう。これがもし正夢とやらなら俺はどうしたら良いのだろうか。

 俺はオディロンを喚び出す魔法陣を描く。


 ───お呼びか、ジル様───


 いや、少し心配になってな。


 オディロンがちゃんと出て来てくれてひと安心だ。ついでにレリアが起きたら紹介しておこう。


 また後で呼ぶから身だしなみを整えておけ。


 ───承知した。我はもうひと眠りさせてもらう───


 オディロンはそう言うと帰っていった。ちなみに魔法陣はオディロンも描けるので自分で描いて帰った。


 俺はレリアが起きるまで待とう。


 レリアはスースーと寝息を立てて気持ち良さそうに眠っている。

 ちなみにレリアは俺の右側で寝ている。その理由を後で尋ねると『騎士は右手で剣を、左手で盾を持つと昔から決まってるんだよ!だからジルに守ってもらうのに左側にいたら邪魔になるでしょ?』って言っていた。俺は盾なんて持っていないと思うが言わないでおこう。


 いつまでも見ていられると思ったがさすがに起きた瞬間に目が合うと気まずいかと思い、本を読むことにした。『アンドレアス王の魔王討伐記』だ。昨日読もうと思ったが頭に入らなかったので今から読もうと思う。


 本を読み始めてすぐ、カルヴィンが入ってきた。

 俺は結界の形を変えて俺の手元にホースのように伸ばす。


「おーい、カルヴィ〜ン!」


 カルヴィンは体をビクッとさせてこちらを振り向く。


「………、…」


 カルヴィンは何かを言うと頭を下げた。


「すまんがその穴に向かって話してくれ」


「こうですか?」


「おう、そうだそうだ。で、さっきはなんて言ったのだ?」


「『おはようございます、ご主人様』と申しました。聞こえていないのでしたらもう一度。おはようございます、ご主人様」


「おはよう。ところで何の用だ?」


「朝食の準備が整いました。如何なされますか?」


「ちょっと待ってくれ」


 俺は結界ホース(結界を変形させ、外に声を届けるためのホースのようなもの)から手を離し、レリアを起こす。


「レリア、朝だって」


「ん…もう?」


「ああ。朝ご飯の準備ができたそうだ。起きれるなら起きてくれ」


「うん。わかった」


 レリアはボーッとしながらも起き上がった。俺はベッドから出て結界を解除する。


「大丈夫か?」


 レリアが転びそうになったので支え、椅子まで連れて行く。


「お水ちょうだい」


 俺は創造魔法でコップを作り、その中に水魔法で水を注ぐ。もちろんきれいな水だ。


「どうぞ」


「ありがと」


 レリアはそれを一気に飲み干す。


「一気に飲んで大丈夫か?」


「うん。目が覚めた」


「で、朝ご飯はどうする?」


「食べれるの?」


「ああ。食べるか?」


「うん、食べる」


 俺はカルヴィンの方を向いてこう言う。


「だそうだ」


「承知しました。では、朝食を二人分、お持ち致します」


 カルヴィンが出て行ったので俺はベッドの上に置いてきた本を回収する。

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