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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第2話

 

  目が覚めると大きな寝台(ベッド)で寝ていた。

  辺りを見渡しても初めての場所だと思う。ヴォクラー様が気を利かせてここへ連れてきてくれたのか?


  耳に違和感を覚えたので耳を触ろうとして、手枷が着けられているのに気がついた。起き上がって確かめよう。起き上がる時はいつも足を上げて勢い良く振り下げてその勢いで起き上がっているので足を上げようとしたのだが足も上がらぬ。

  アシル達に助けてもらおう。


「アシル!オディロ…!」


  アシル達を呼ぶ為に叫んだのだが口を抑えられた。腕を辿って顔を確認しようと振り向いたが顔が見えぬ。フードを深く被り口元を布で隠していたからだ。


「ジル殿、静かに。敵に気付かれてしまう」


  そう言うと男はフードを脱ぎ、布を外して顔を出した。アシルだった。


「敵?」


「ああ。ヴォクラー様のお告げを無視する国王・王太子派と、支持する王子派に割れている。教会勢力は静観するそうだ。ここはその支持する王子派の王子エジット殿下のお部屋だ。あんたの準備が出来次第ここを脱出するから早く準備しろ」


  ?使徒って事は信徒達には歓迎されるものじゃないのか?


「分かった。準備って何をすれば良い?」


「目が覚めればそれで良い。ちなみに鎧は念じると来る。行くぞ。詳しくは逃げながら話す!」


「お、おう…」


  展開が早すぎてよく分からぬが逃げるらしい。


「殿下!準備が整いました!」


  アシルが呼び掛けると扉が開いて人が入ってきた。


「使徒様。お初にお目にかかります。私はサヌスト王国の第二王子エジットと申します」


「ああ、俺はジルだ。よろしく、ジルって呼んでくれ」


「はい、ではジル卿。早速で悪いのですが、行きましょう。僅かながら私に忠誠を誓ってくれた部下もいます。その者達が馬を確保しておりますので」


  馬?俺乗馬なんてしたことないんだが大丈夫なのか?まぁ、乗れなかったらオディロンに乗って行けば良いか。


「そう言えばこの枷はいつ外してくれるのだ?」


「あぁ、すまん。少し事情があってな。それも後で説明する」


  そう言いながらアシルは枷を外してくれた。


「では、参りましょうか」


  そう言って王子は歩き出した。その後ろを俺とアシルも歩いて行く。王子の部屋ってことは王宮みたいな所にいると思うのだが道が狭くて暗い。多分脱出路みたいな所だと思う。





 

  しばらく歩くと出口が見えてきた。


「これは…」


  出口を出た所で騎士達が睨み合っていた。正に一触即発といった状況だ。


「殿下!申し訳ございません」


「いたぞ!使徒を騙る悪魔め!さぁ、エジット殿下、こちらへ!そのような者の戯言は聞いてはなりませぬぞ!」


  俺達が出て来た事がきっかけとなったのか斬り合いが始まった。


「どうしたら良いのだ?」


「ジル殿、鎧を纏え!」


「おう」


  鎧を纏えと言われてもどうすれば…念じればいいのか。


  鎧…来い…鎧…来い…。


  今まで気付かなかったがなぜかネックレスが着けていてそれが光り出したかと思うとマントを纏っていた。マントで体が包まれると少し体が重くなった。瞬きをして目を開けると槍が浮かんでいた。これはヴォクラー様に貰った槍と同じだ。

  俺は槍を掴んで穂先を前に向けて構え、それっぽく叫ぶ。


「どけぇ!我はヴォクラー神の使徒であるぞ!貴様らヴォクラー神に反旗を翻したのか!」


  そういえばオディロンはどこに行ったのだろうか。呼んでみるか。


「オディロン!我が下僕(しもべ)よ!姿を現せ!」


「おい、ジル殿。油断するな」


  振り向くと俺を斬ろうとしたと思われる男をアシルが斬り殺していた。


  その時、敵だと思われる男が悲鳴を上げて逃げ出した。


「ひいぃぃ!と、虎だ!」


「オディロン!」


  オディロンがやって来た。


「ジル卿!こちらへ!」


  王子が呼んでいる。残った騎士達も死者や重傷者はおらず皆が王子の方へ行くように促している。


「おう、今行く」


「さぁ、皆もこい!」






  戦闘があった所からしばらく走ったところに馬が繋いであった。


「ジル殿、あんたはこの馬に乗れ」


「俺、馬なんて乗ったことないんだが」


「大丈夫だ。乗れる、そう信じろ」


  そんな事言われても…。俺はこの黒馬が初めての馬だ。オディロンの時を思い出しながら乗る。

  おぉ、案外簡単だな。


「さぁ、行くぞ」


  アシルの掛け声で俺達は出発した。


「ジル卿!この先に仲間が待っております!そこまではこのままの速度ですがそこからはゆっくり進みますのでそこまでご辛抱ください!」


「おう!」


  それからはしばらく話すことも無くただただ無言で進んだ。






  太陽を夕日と呼ぶ時間になった頃、二つの旗が見えてきた。その下には人や荷車がたくさんあった。


「皆の者!こちらは此度の使徒、ジル卿だ。そしてこちらは使徒補佐のアシル殿だ。そしてこの虎はえー」


  オディロンか。従魔?いや、魔ではないか。ペット?うん、ペットだな。


「ペットのオディロンだ」


  結論が出たところで王子の言葉を引き継いで説明してやったら騎士達がざわついた。


「神獣がペットだと?」


「さすが使徒様だな」


  おいおいおい!なんか変な感じになってるぞ。


「あ、いや、そういうのじゃないから。あと俺の事はジルって呼んでくれ」


「「「御意!」」」


  皆が一斉に跪いた。助けを求める視線をアシルの方へやるとアシルは溜息をつきながら対応してくれた。

  ふと王子の方へ視線をやると手招きをしていた。


「どうした?」


「今夜はあちらに見える森へ入りそこで休みます。ですのでもう少し移動がございますがよろしいですか?」


「あぁ。ところで王子の部下はどれ程いるのだ?」


「私の部下はここにいるだけですと二百程ですね。後、私の事もエジットと呼んでください」


「それはいいが条件がある。その堅苦しい話し方をやめてくれ。アシルみたいに話してくれると助かる」


「ああ、分かった」


  さすがは王子様、対応が早い。しばらく話しているとアシルが来た。


「殿下、聞きましたよ。あの森に行くんですよね?」


「あぁ、そうだが何か問題か?」


「ええ、問題です。あの森、夜になったら魔物が出るそうじゃないですか?」


  魔物?異世界っぽいな。ここまで大急ぎで来たからあまり実感がなかったがやっぱり異世界なんだな。


「気に病むことはない。それは邪心を抱いた者に下される神罰だ。こちらにはヴォクラー神が遣わした使徒様がいるから魔物に襲われる事は万に一つもない。それに夜間は交代で見張りを立てるので安全だ」


「そうか、それなら良かった」


  二人の間で話が纏まってよかった。

  王子が騎士達の方へ行った。


「おい、アシル」


「なんだ?」


「王子の事をなんて呼べばいい?」


「俺は殿下と呼んでいる。王子らしいから」


「俺、あの人に名前で呼べって言われたんだけどどうしよう」


「エジット殿下と呼べばいいだろう」


「それもそうだな」


  俺の中の問題が一つ解決した。


「ジル卿、アシル殿!出発だ!」


「おう!」


  今回は牛車や徒歩の人がいるのでゆっくり進むらしい。






  森に入る頃にはすっかり日が暮れていた。

  開けた場所でとまると騎士じゃない人達が何か準備し始めた。


  しばらくすると幕舎が二つ出来た。火も数か所焚かれた。

  馬から降りてその光景をアシルとしばらく眺めているとエジット殿下が来た。


「ジル卿とアシル殿はこの幕舎を使ってくれ。二人でひとつで悪いが」


「済まないな、殿下。他の者はどうするのだ?」


  アシルがもっともなことを聞いた。というかアシルの口調が砕けていた。エジット殿下には敬語だったのに、


「その事は気にしなくても大丈夫だ」


「そうか」


  気にするなと言われたら余計気になるというものだ。夜中にこっそり抜け出してみるか。


「エジット殿下!」


「どうした?」


「夕食の準備が整いました」


「うむ。ではそちらに行こうか、ジル卿、アシル殿」


  夜ご飯か。そういえばこちらに来てから何も食べていない。腹ぺこだ。


「「ああ」」


  俺とアシルは頷いて人が集まっている方へ向かおうとした。


「あ、あの、ジル様」


「なんだ?」


  夕食の準備が出来たと報告してきた騎士が話しかけてきた。


「オディロン様は何を召し上がるのですか?」


  そういえば、そうだな。というかオディロンはどこに行ったんだ?


 ───我の飯はいらぬ。今、狩りをしているから飯はいらぬとその者に伝えてくれ───


  !ああ、分かった。


  突然、頭の中に声が響いた。ヴォクラー様と初めて話した時のようだ。


「オディロンの飯はいらない。あと、オディロンには()などつけず気軽に呼んでやれ」


「は!」


  どうも堅苦しいな。まぁそのうち慣れるかな?


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