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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第28話

 帰る道すがら、レリアから話を聞いた。


 内容を纏めるとこうだ。

 レリアはとある村の出身で二十歳、つまり成人を迎えると同時にその村を追われたらしい。

 理由はレリアがオッドアイだからだそうだ。

 千五百年以上前、まだ魔王が現れたばかりの頃まで遡るのだが魔王に最初に忠誠を誓った種族のヴェネリース族の特徴がオッドアイという。ヴェネリース族は魔王が討伐されてからは姿を消したようだが、その事からオッドアイの者は忌み嫌われるようになったらしい。

 それが理由で村を追い出されたのだ。

 そしてレリアはオッドアイの者を探す旅に出たというのだ。運命の人と出逢える事を願って。

 それで俺を見掛けてオッドアイでも友人(カミーユやフィデールのことらしい)と一緒に買い物ができる俺こそが運命の人だと思ったんだと。


 俺はレリアが別の運命の人と出逢えるまで一緒にいようと思った。

 レリアは身長一メルタ(一メルタが百五十センチ)程で小柄だ。俺の方が頭一つ分くらい大きい。

 髪型はなんて言うんだっけ、こういうの。人の名前みたいな…。ボブだ。ふんわりしている。俺は女性の髪型なんて詳しくないがどこかで聞いたことがある気がする。

 目は右目が黒で左目が水色だ。髪色もそれに対応するように右側が黒で左側が水色だ。

 俺はレリアは可愛いと思う。


 館に戻り、アシルやカルヴィン達に説明する。領主との夜ご飯が終わるまで俺の部屋で待っていて貰うことにした。


 夜ご飯を食べた後、フィデールとブレソールに本を渡し、部屋に戻る。


「待たせてしまって悪いな」


「ううん、大丈夫。ジルの従者さんに良くてしもらったから」


「そうか」


 気まずいな。俺はそう思いながら机を挟んでレリアの正面の椅子に座る。


「レリア、文字は読めるか?」


「読めるよ」


「じゃあ、本でも読むか?」


「ほんとに本なんて買ったの?」


「買ったぞ。こう見えても俺はそれなりの身分なんだ」


「貴族の隠し子みたいな事?」


「いや、違う。ここだけの話って訳でもないが俺は使徒なんだ」


 俺がそう言うとレリアは笑いだした。レリアの笑いのツボが分からないな。


「本当は?」


 笑い終わるとそう聞いてきた。本当ってなんだ?


「ヴォクラー神がサヌスト王国に遣わした使徒だ」


「身分を明かしたくないの?言いたくないなら言いたくなった時に言ってくれたらいいよ」


 どういうことだ?使徒では、ダメなのか?使徒って身分じゃないのか?じゃあ、俺は何なんだ?


「その話は置いといて本でも読むか?」


「一緒に読もうよ」


「わかった」


 一緒に読むのならば、『サヌスト王国の歩き方』が良いか。

 俺は異空間から『サヌスト王国の歩き方』を出す。


「え!今のなに!?」


「今のって?」


「何も無い所から本が出てきた…」


「魔法だよ」


「またそう言ってはぐらかす〜」


 本当の事なんだが…


「二人で読むなら並んで読んだ方が読みやすいな」


「でもこの椅子、重いよ?」


「じゃあ、寝台(ベッド)に行けば良いだろう。街の宿と違って大きいし」


 俺が前、夜の間に来た時に見たのだが集めた兵が泊まっていた宿のベッドは一人で寝転んだらもう誰も入れないくらい小さいのだ。横は両手を広げたら手がはみ出すくらいで、縦は身長ギリギリだ。長身の人が使ったら足が出るんじゃないかというくらいだった。

 俺がドリュケール城や他の所で使うベッドは大きいのだと初めて気がついた。俺のベッドの大きさは横は俺とアシルが両手を広げて寝転んでも余裕があり、縦も二メルタくらいある。恵まれているな、と気づいた瞬間でもあった。

 まあ、そんな事は置いておこう。ここのベッドもいつものベッドよりは小さいがそれでも普通の宿のベッドと比べたら大きい。


「いいの?」


「何が?」


「ううん、なんでもない」


 なんかレリアの様子がおかしいな。ま、なんでもないなら良いが。

 俺とレリアはベッドに入り、枕に凭れて足を伸ばして座る。


「そんなに離れていては読めないであろう」


「え?」


 俺はレリアに近づく。肩が当たるくらいが丁度、読みやすい。

 何故か、レリアの顔が赤い。


「レリア、体調が悪いなら言ってくれよ」


「大丈夫!」


 大丈夫なようなので俺とレリアは本を読む。レリアがこれまで旅をしてきた所を聞いたりして楽しい時を過ごす。

 本を半分ほど読み終わったところでレリアが欠伸をした。


「もう寝るか?」


「その前に体を洗ってくるね」


「わざわざ行かなくても良い。少し待ってろ」


 俺は部屋の隅の何も無い場所に二メルタ四方の個室を創造魔法で創る。そして水魔法で出した水を火魔法で温めて大きい桶に溜めておく。


「いつも何で体を洗っているんだ?」


「…」


 あれ?レリアが喋らない。もう一度話しかけてみよう。


「いつも何で体を洗っているんだ?」


「え?ああ、ごめん。いつもは宿に置いてある石鹸で洗ってるよ」


「わかった」


 俺は石鹸の作り方など知らないのでベルを鳴らして従者を呼び、石鹸を持ってくるように頼む。

 そしてそれをレリアに渡す。


「これで体を洗えるだろう?」


「え?でも…」


「あ!すまん。すっかり忘れてた。着替えがいるよな」


「え、いや、そういう事じゃなくて…」


「今まで泊まっていた宿に荷物が置いてあるのか?」


「うん、そうだけど…」


「夜遅くに悪いが取りに行こう」


「うん、そうする」


 レリアが変な感じだ。こういうのなんて言うんだっけ。上の空か。

 俺は女性の心を覗くなどしてはならぬと思うが原因を知るには覗いてみるしかないようだ。念話と俺の天眼を組み合わせると人の心の中まで覗けるのだ。


 ───なにこれ?意味わかんない。なんで何も無い所に部屋が現れてお湯まで貯められているのよ。レリア、一旦落ち着け。宿に置いてある荷物を取りに行くんだ。その間に頭を冷やそう───


 自分で自分の事をレリアと呼ぶのか?


「ぼーっとしてないで行くぞ。明日も朝が来るから早く寝ないと起きられないぞ」


 俺はレリアの手を引いて館の外まで出る。


「で、宿はどこだ?」


「こっち!」


 レリアがいきなり復活した。そのまま俺の手を引いて走っていく。

 レリアが宿の前で止まった。


「ここか?」


「うん。じゃあ、荷物取ってくるね」


「俺も行く」


 俺はレリアについて行き、宿に入る。


「おばさん、荷物取りに来た。もう別の所に泊まるから明日からの予約キャンセルね」


 入ってすぐの机でロウソクを前にウトウトしていたおばさんにレリアが話し掛ける。


「わかった。キャンセル料は貰うよ」


「いくら?」


「銀貨三枚さ。払えるかい?」


「荷物と一緒に置いてあるから分からない。先に荷物取ってきていい?」


「早く行っておいで」


 レリアが奥の階段を登っていく。俺はそのまま残る。


「銀貨三枚か?」


「そうだよ。ところであんたは誰だい?」


「レリアの連れだ」


「ふーん。彼氏なら払ってあげたら?どうせあんたと一緒に泊まるんでしょ?」


 彼氏?俺が?運命の人とは聞いていたが彼氏とは聞いていないな。まあ、このおばさんとこれから関わることもないだろうから訂正はしないが。


「ほら、これで良いだろ?」


 俺は魔法の事を知られないようにポケットに手を入れて魔法を発動させて銀貨を取り出した。


「気前がいいねぇ。あんたモテるだろ?」


「さあな」


 俺はおばさんとの会話を無理やり終わらせてレリアを待つ。


 遅い。外から見た感じだとそんなに広くは見えなかったが。

 俺は心配になり、レリアの気配を探り、その部屋の前に転移する。


「おーい、レリア〜」


 俺はノックをしながらレリアを呼ぶ。

 返事がないのでドアを開け、中に入る。

 そこには気を失ったレリアと三人の男がいた。


「なんだ、てめぇ?」


 俺は手に雷の魔力を纏って一人目の顔面を殴る。それに驚いた二人目には回し蹴りをお見舞する。三人目はレリアの首に短剣を突き立てている。


「へ、変な動きをするんじゃねぇ!」


 俺は奴の後ろに回り込み、短剣を取り上げてから蹴り飛ばす。

 部屋にあったレリアの荷物っぽいものを全て異空間にしまってレリアをお姫様抱っこする。そして窓から飛び降りる。精々三階だろ。


 俺は着地した後、おばさんの所に行って銀貨を三十枚くらい渡す。


「レリアが襲われていた。色々壊しちまったからこれは弁償代と迷惑料だ。遠慮せず受け取れ」


 そう言って人気の無い所に行って部屋まで転移する。

 レリアをベッドに寝かし、レリアの荷物を出す。

 そしてベルを鳴らして従者を呼ぶ。


「女官を何人か呼んでくれ」


「承知しました」


 ロジェだったが俺のただならぬ雰囲気を読み取り、すぐに立ち去った。

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