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神に仕える黄金天使  作者: こん
第1章 玉座強奪・諸邦巡遊篇
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第27話

 俺が串に刺さった肉を食べ終わり、串をカミーユに渡すと何か視線を感じた。


「次は何を食べようか?」


「ご主人様、目的を忘れてはおりませんか?」


「ん?本屋だろ?さっきお昼ご飯を食べたばかりじゃないか。まだ半日くらいあるだろう」


「ご主人様が良いのでしたらよろしいですが」


 カミーユが串を捨てに行く。ふとフィデールを見るとフィデールが剣の柄を触っていた。


「フィデール、どうしたんだ?」


「いえ、視線を感じまして。気のせいだとよろしいのですが」


「フィデールも?」


「ご主人様もですか?」


 俺とフィデールは一応、警戒をしながら進む。カミーユも戻ってきたのでそのことを伝える。


 その後、何事もなく、本屋に着いた。


「ここか。小さい所から回っているとは言え、小さいな」


 思ったよりも小さかった。


「本は高価ですから仕方ないのではないでしょうか?」


「そういうもんか」


 俺は本屋に入る。フィデールは着いてきたがカミーユは店の前で待っているらしい。視線の主から俺を守るんだと。


 本屋に入ると店主と思われるお爺さんがこちらを睨んだ。


「うちの店に何か用かい?」


「ん?本を買いに来た。本屋だろ?」


 愛想がない爺さんだな。もっとやる気を出せよ。


「本を買わなければ、入店料を貰うぞ」


「わかったわかった」


 俺は爺さんを適当にあしらって本を見る。


「なあ、フィデール。この本面白そうじゃないか?」


「『サヌスト王国の歩き方』ですか。それなら案内人を雇った方が良いのでは?」


「案内人を雇ったとしても無知だったら恥ずかしいだろ?」


「そうですね」


 その後もしばらく本を見ていたがそれ以外にめぼしいものがなかったのでそれだけを買う。


「おい、爺さん。この本をくれ」


「銀貨五十枚だ」


「ぎ、銀貨五十枚?」


 思っていたより安いな。銀貨五十枚なんてないぞ。


「銀貨がない。金貨でも良いか?」


「金貨?」


「ああ。お釣りはいらないから」


 俺は金貨一枚を爺さんに渡して店を出る。

 外に出て時空間魔法を使い、荷物用の異空間を創り、そこに買った本を入れる。


「カミーユ、お待たせ」


「いえ。店内で何もございませんでしたか?」


「ああ。ところで次はどうする?」


 俺とカミーユとフィデールは相談し、近い方に行く事にした。一番大きい所らしい。

 今度は買い食いをせずにそのまま向かったのですぐに着いた。


「ここか…。ここがステヴナンで一番大きい本屋か」


「では、私はここでお待ちしております」


 今度の店は先程の店の三倍程の大きさだ。


「フィデール、見たいものを見てくると良い」


「!ありがとうございます!」


 フィデールは喜んで本を見に行った。

 俺も何か面白い本はないかと探す。


 これは…『アンドレアス王の魔王討伐記』。サヌスト王国の最初の大将軍グレゴワールが将軍の座を退いた後、書いたものらしい。グレゴワール将軍はアンドレアス王がまだサヌスト領の領主だった頃からアンドレアス王に仕えていたらしい。


 これを買おう。詳しく書かれているのならこれからの参考になるだろう。


 フィデールの気配を探るとある本に興味を示していた。

 息を殺してフィデールの背後から覗き込む。

『アンドレアス王の御代に学ぶ!〜従者編〜』という本だ。本屋に来てまで俺の事を考えるとは嬉しい。


「その本が欲しいのか?」


 フィデールは驚いたのか、体をビクッとさせた。


「あ…いえ、そのよ…」


「買ってやる。普段、俺の我儘を聞いてくれてるんだ。たまには礼をさせてくれ」


 俺はフィデールの言葉を遮ってそう言う。


「ありがとうございます!」


 俺はフィデールが持っていた本を持って奥に行き、店主に渡す。


「二冊で良いのか?」


「ああ」


 本屋の店主は基本的に無愛想なのか?この男もとても無愛想だ。


「金貨三枚だ。払えるだろうな?」


 なんかこの人、俺の事を威圧しようとしている。全く怖くないが、俺ってなんかしたっけ?


「金貨三枚で良いのか?」


「何?」


「ほらよ」


 俺は金貨三枚を渡して本を受け取り、店を出る。フィデールが慌ててついてきた。


「ご主人様、良かったのですか?」


「ん?何が?」


「ぼったくりですよ。前の店で見た値段の倍以上していました」


「ぼったくりでも良いのだ」


「え?」


「ぼったくりをしなければ生きていけないくらい追い込まれていたのだろう。それを助けれたのだ。良いではないか」


「そうですか」


 カミーユと合流し、最後の店へと向かう。本はもちろんしまった。


 最後の店は最初の店と同じ大きさだが二階建てであった。

 店の扉の両脇に男が立っていた。


「この店は会員制です」


「何?」


「この店は会員制だと言っている」


 会員制?ということは入会費みたいなのがいるのか?


「どうすれば入れる?」


「入会費金貨二枚を支払えば入れる。もちろん一人二枚だ」


「わかった。金貨六枚だな?」


 俺は金貨六枚を見張りに渡す。


「確かに受け取った」


「俺が会員だと証明するものは無いのか?」


「無い。が、会員以外がこの店に入ればこのゴーレムがあなたを殺すだろう」


「ゴーレム?」


「ああ。この店は魔王の時代からある。その時代のゴーレムだ。ゆえに俺にも使い方は分からない」


「そうか」


 俺は二人と店に入る。


「ありがとうございます」


 フィデールが礼を言ってきたので返事をする。

 するとカミーユが俺にこう尋ねた。


「私はよろしいのですが」


「気にするな。入会しておいて損は無いだろう。ま、カミーユが気にすることではない」


 カミーユを言いくるめて進む。

 俺は適当に一階を見たあと二階に上がった。こういう所は二階に掘り出し物があるとどこかで聞いたことがある。カミーユはついてきているがフィデールは自由に見て良いと言ってある。


「これは…『アンドレアス王の御代に学ぶ!〜アンドレアス流魔法編〜』。アンドレアス王の魔法が学べるのか」


 俺はすごい本を見つけたかもしれぬ。当時恐れられていた魔王を倒したということは魔王以上の力を持つということだろ?ということはとても強いのじゃないか。購入決定だ。


 フィデールの気配を探し、息を殺して近づく。カミーユには『少し待て』と伝えて来た。


「『ラザファム王の生き方』か。興味があるのか?」


 またフィデールがビクッとしていた。


「いえ。以前、ブレソールがラザファム王に興味があると言っていたので見ておりました」


 ブレソールとはアルヌール班の従者だ。そしてラザファム王とは今は亡きクロム王国の最後の国王である。クロム王国とはサヌスト王国に敗れ、併呑された国だ。位置としては王都アンドレアスから見て南東にあったらしい。


「そうか。土産を買っていくのも良いだろう」


 俺はその二冊を持ち、店主の所へ行く。


「これを」


「二冊で良いのか?」


「ああ」


「では、金貨十枚だ」


「じゅ、十枚?」


「なんだ、足りないのか?」


「いや、足りる」


 俺は店主から本を受け取り、店を出る。そして仕舞っておく。


「危ない危ない。あと金貨一枚しかないぞ」


「銀貨や銅貨でしたらございますが?」


「あ、そうだった」


 カミーユの指摘で冷静になる。


「そろそろ帰るか」


 俺達は領主の館に向かう。

 何故か先程の視線の話を思い出す。少し怖くなったので気配を探ってみるが俺に敵意を向けている奴は見つからない。が、一人俺に向かって走って来る気配があった。

 俺が振り向くと一人の女性が走ってきていた。


「誰だ?」


 カミーユが剣を抜こうとするが間に合わないだろう。

 その女性は俺に向かって飛び、抱き着いた。

 その勢いに負けて俺は後ろに転ぶ。


「ご主人様!」


 俺を心配してフィデールが叫びながら女性を斬りつけようとする。俺はそれを防ぐように剣を喚び出し、受け止め、女性を守る。辺りに甲高い金属音が鳴り響く。

 俺が受け止めたのを見てフィデールが慌てて剣を引く。

 すると女性が俺の顔を見てこう言った。


「やっと出逢えたあたしの運命の人!」


「俺が?」


「うん!あたしはレリア!あなたの名前は?」


「俺はジルだ…」


 俺はレリアの勢いに気圧されながら答える。


「ま、まず、俺らが泊まる予定の館に帰ろう」


 俺は何とかそう言って館に向かう。俺達、四人で。

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